ガンより怖い薬剤耐性菌 (集英社新書)

  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087210361

作品紹介・あらすじ

医療現場での抗菌薬乱用によって、世界中で薬剤耐性菌が蔓延。これによる感染死者数は将来、ガン死者を上回る可能性がある。耐性菌蔓延で人類はどうなるのか、そして感染した際の対処法を解説。

感想・レビュー・書評

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  • 薬剤耐性菌ができるまで
    抗菌薬の功罪
    細菌による感染症について 歴史的な解説
    薄い

  • 東2法経図・6F開架:491.7A/Mi52g//K

  • コロナの後は耐性菌が来る?

    COVID-19騒ぎでかすんでしまっていますが、これまで感染症の最大のリスクと言われ続けていたのは薬剤耐性菌です。人類がペニシリン、ストレプトマイシンに始まる抗菌薬のおかげで感染症死から免れるようになって70年ですが、最近になって「抗菌薬」が効かない「薬剤耐性菌」が蔓延し死亡者数が増加しているのです。

    「薬剤耐性菌の2050年問題」を知ってますか? 2014年にイギリスのキャメロン首相(当時)が立ち上げた研究グループによればこのまま対策がとられなければ2050年には耐性菌感染症による世界の年間死亡者は1000万人に達するとのことです。2015年にはオバマ大統領(当時)による耐性菌に対する行動計画、さらに2016年伊勢志摩サミットでも耐性菌対策が議題になるなどCOVID-19以前には耐性菌問題こそが最大の健康上の問題だったわけで、もちろん解決しているわけではないのです。

    耐性菌が蔓延してきた最大の理由は人類が浴びるほど抗生物質を使用してきたからです。最初に紹介する「がんより怖い薬剤耐性菌」では細菌の薬剤耐性のしくみ、そしてその耐性を獲得するメカニズムなど薬剤耐性菌をめぐるさまざまなことをまとめてくれています。

    例えば、カビや放線菌は自分の増殖を有利にするため周辺の細菌を死滅させる物質を作り出します。これが抗生物質になるわけです。そして同時にカビや放線菌はその抗生物質成分から自分自身を守るために抗生物質成分に対する耐性遺伝子も持っているのです。その耐性遺伝子がウイルス(ファージ)によって病原細菌の中に持ち込まれると細菌が薬剤耐性を獲得します。また細菌にもオスとメスがありオス・メス融合による耐性遺伝子の水平遺伝というメカニズムも細菌ならでは。細菌世界にもいろいろあるんです。
    ではどうすれば耐性菌問題を解決できるのか。その方法は特定の抗生物質の使用を長期間、全面的に中断すること。そうすれば、その抗生物質はやがて効果を取り戻してきます。本書中ではクロラムフェニコールと赤痢菌の例が挙げられています。薬剤耐性菌は耐性を維持するため酵素を作るなど代謝上の負荷がかかっているので、抗生物質がない状態では耐性菌ではないほうが繁殖に有利なのです。そのため一定期間特定の抗生物質を使わないでいると耐性菌は非耐性菌によって淘汰されるというわけです。

    耐性菌を増やさず、感受性菌に有利は環境を提供するためにも、無用な多種類の抗生物質の乱用はルールをきめてしっかり規制していかなければならない・・・そういうコンセンサスが国際的にできつつあるというのが現状のようです。

  • 近い将来、薬剤耐性菌による死亡ががんによる死亡を上回ってしまうと予想されています。これはヒトや動物を抗菌薬まみれにした結果です。本書は微生物に対する抗菌薬使用の正しい知識を紹介している感染症対策本です。

  • 文字通り、昨今話題の感染症で増えつつある薬剤耐性菌について。

    抗菌薬の存在によって、これまで以上に耐性菌が増えて感染症が蔓延しつつあるいうのは、まさに現在や未来の警鐘だと改めて感じた。

  • ありとあらゆる抗生物質を多用していると薬剤耐性菌が多発して薬が効かなくなる。そうなってしまえばいざという時に治療が困難を極める。
    下痢等腸内細菌が弱っているディフィシレ菌患者に健康な人の糞便、腸内細菌を注入する事により、改善する事が判明。
    腸内と脳は密接な関係がある。腸内環境が悪いと自閉症をきたす。
    薬剤耐性があると感受性を失った共生微生物は免疫機構を刺激する力が弱くなり、生育の方にエネルギーを使い、肥満となる。

  • 非常に読みやすくわかりやすい。
    今まで薬剤耐性菌について少しでも知っている人はもう少しいろいろ知ることができるし何も知らなかった人には基本的なところから知ることができる。
    また耐性菌だけではなく細菌が原因あるいは発生の重要なファクターと考えられてきている病気やがん等についても想定されている仕組みから説明されている。
    1つ希望だったのは薬剤耐性菌は満員してもその後薬剤の使用中止すればしばらく後には再びその効果を回復することができると言う事。

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著者プロフィール

国立医薬品食品衛生研究所名誉所員

「2019年 『ワクチンと予防接種のすべて 第3版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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