テンプル騎士団 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 42
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087210408

作品紹介・あらすじ

「テンプル騎士団」はエルサレム巡礼に向かう人々の保護のために設立されたが、軍事力、政治力、経済力すべてを持ち合わせた超国家組織に変貌を遂げる。西洋歴史小説の第一人者がその興亡を描く。

感想・レビュー・書評

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  • テンプル騎士団を中心に12世紀〜14世紀の欧州・オリエントの歴史を再確認できる。教皇の最盛期から、教皇のバビロン捕囚まで、これから絶対王政を迎える歴史の転換期。十字軍ぐらいのイメージしかなかったが、教皇直属で様々な特権を持ちグローバルネットワークを活かして金融や経済も刷新させた革新的な超国家集団だったとは、印象が大きくかわった。封建制度が根強い時代に組織的な軍事力も備わっており、その後の欧州の歴史に大きな影響を与えた。十字軍自体はイスラム世界から古代ギリシア由来の発達した科学を西方に伝え、中国の航海術が大航海時代のきっかけにも繋がった象徴的な出来事だった。イスラム勢力はセルジューク・トルコ、ファーティマ朝エジプト、アッバース朝シリアから始まってサラディンのアイユーブ朝、ホラズム朝、イベリアでは後ウマイヤ朝、バイバルスのマムルーク朝…世界史で習った懐かしい名前が多く出てくる。テンプル騎士団はフィリップ4世の策略で壊滅させられるが、唯一ポルトガルでキリスト騎士団として存続し、エンリケ航海王子も、ヴァスコ・ダ・ガマも輩出していたとは驚きだ、艦隊の赤十字にも由来があるという。チュートン騎士団はその後マリエンブルクに移ってプロイセンの元になり、チュートンがドイツの訛だとか。聖ヨハネ騎士団はロードス島に落ち着く。諸侯や封土などが国家へとまとまっていく時代の流れはタイミングこそ違えど各国で広まっていった。フリーメイソン云々というのは都市伝説に過ぎないか

  • 神殿騎士のたぐいはファンタジーの中でも時々見かける職種(?)だが、十字軍で活躍したことをかろうじて知っているくらいでその起こりや消滅に関しては何も知らなかった。帯の「軍事、経済、政治。すべてを掌握した最強の組織。」の言葉に惹かれて購入した。
    読み始める前は帯の文言は過大だろうと思っていたが、特に経済的な影響力に関しては目を見張る物があった。
    気候すらも大きく異なる異教徒、異文明の地に拠点を維持し戦い続けるために発展した、後方(ヨーロッパの領土)での支援・輸送体制は中世の枠を超えており、近代的である。この輸送販売網の構築には、これも中世を超えた人材登用が効いているのかもしれない。封建制度とは異なる各支部間の強いつながりも面白い。
    ヨーロッパの広い地域でネットワークを張り、旧来の領地とは異なる思想で運営された組織は魅力的だし、それが本当にあっけなく崩壊するところやその財産が大航海時代へと続いていくのも興味深かった。

  • 子供に、100万円クイズとしてテンプル騎士団とはなんだと、出した。外れたけど、後日しっかり覚えてた。質問するには、インパクトが大事。

  • ヨーロッパの警察であり、銀行でもあったテンプル騎士団。漠然と十字軍の一部という印象を持っていたが、悲しい最後も含めロマンを感じさせる200年の物語。ジェダイに例えた箇所がたくさん出てきてその度さらに切ない気持ちになる。

  • 点と点がつながる一冊。とても歴史的に詳細に記載されている。特にテンプル騎士団の発生、すべての十字軍の経過、戦歴、そして東方での活躍をバックアップするための西方でのシステム、とても勉強になりました。中世の物理的+金融ネットワークであったことも強力な集団として理解ができました。各物語で知っていた中世のヨーロッパ史がとても良く理解できました。

  • フィリップ4世のテンプル騎士団の弾圧からスタートし、歴史を遡って騎士団の結成から活躍、その富と権力の源泉まで具体の数字を挙げながら解説
    入門編としてとても良い

  • 様々な伝説が時にオカルティックにすら語られるテンプル騎士団の実態を、細かな事実を積み重ねながら紐解いていく、まさにテンプル騎士団の総合ガイドブックのような本。澁澤龍彦の「秘密結社の手帳」でテンプル騎士団のことを知った身としては、なるほどあの事実の裏にはこういう事情があったのかと、話の辻褄が合う感覚を得られたのはよかった。

  • テンプル騎士団とフリーメーソンは直接関係ないのだということを理解。道中警護から銀行的な要素まで、中世のインフラとしての役割を果たしていたことがわかった。なんとなく、目的を失った組織は潰れて(この場合潰されて)しまうのだなと感じる。フランス王から狙われなければ確実に世界銀行の元になったはず。

  • 12世紀初頭に現れた『テンプル騎士団』。エルサレムへ向かう人々の保護を目的に、修道士による武装集団として誕生したが、その後の活躍・実力により、政治的、軍事的、政治的に超国家的な存在となったがために、各国に疎まれ、そしてフランスに壊滅させられた。小説家による新書で、どっち付かずな構成だったが、まぁ、面白かった。
    『ジェダイ騎士団を彷彿とさせる。』と、書評にあったがために読んでみた。スターウォーズロスです、、、

  • [評価]
    ★★★★☆ 星4つ

    [感想]
    とあるゲームで存在を知っていたテンプル騎士団だが、この本を読むと成立から終焉までを一通り知ることができる。
    その誕生の経緯はかなり立派な目的があったようだが組織が徐々に巨大化する過程で当初の目的からハズレていく様子がよくわかった。
    しかし、フランス王がテンプル騎士団を捕縛した理由は少しは理解できる。領内に王に従わない軍事力、経済力を保持した国際的な勢力が存在するのは気になるのはわからなんでもない。
    テンプル騎士団とジェダイ騎士団の関連性は面白いと思った。

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著者プロフィール

佐藤賢一
1968年山形県鶴岡市生まれ。93年「ジャガーになった男」で第6回小説すばる新人賞を受賞。98年東北大学大学院文学研究科を満期単位取得し、作家業に専念。99年『王妃の離婚』(集英社)で第121回直木賞を、14年『小説フランス革命』(集英社/全12巻)で第68回毎日出版文化賞特別賞を、2020年『ナポレオン』(集英社/全3巻)で第24回司馬遼太郎賞を受賞。他の著書に『カエサルを撃て』『剣闘士スパルタクス』『ハンニバル戦争』のローマ三部作、モハメド・アリの生涯を描いた『ファイト』(以上、中央公論新社)、『傭兵ピエール』『カルチェ・ラタン』(集英社)、『二人のガスコン』『ジャンヌ・ダルクまたはロメ』『黒王妃』(講談社)、『黒い悪魔』『褐色の文豪』『象牙色の賢者』『ラ・ミッション』(文藝春秋)、『カポネ』『ペリー』(角川書店)、『女信長』(新潮社)、『かの名はポンパドール』(世界文化社)などがある。

「2023年 『チャンバラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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