東京裏返し 社会学的街歩きガイド (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087211337

作品紹介・あらすじ

これからの注目は「都心北部」だ!

【本書の特徴】
●7日間かけて東京(主に都心北部)を旅する
●詳細地図つき
●歴史的、社会学的に東京を眺める
●過去の痕跡を手がかりに、豊かな時間を取り戻すための提案をする
●モモ(ミヒャエル・エンデ)と一緒に東京を街歩きする

「街を見失わないために、ゆっくり移動することの価値を復権させましょう。エンデが『モモ』のなかで示した時間論を、私たちは東京の街歩きにも活かしましょう。モモの冒険が「灰色の男たち」から人々の時間を取り戻す挑戦であったのと同じように、私たちの街歩きもまた、高度成長期以降の開発主義の東京から、再び人間的時間を取り戻す戦略を含むことになります」――吉見俊哉

【主な内容】
●都心に路面電車を復活させる
●どこに行っても「渋沢栄一」がついてくる
●23区で唯一「消滅可能性都市」とされた豊島区はポテンシャルが高い
●エロス(性愛)とタナトス(死)の境界線を歩く
●川筋から未来の東京を考える

【目次】
第1日 都電荒川線に乗って東京を旅する
第2日 秋葉原―上野ー浅草間に路面電車を復活させる
第3日 動物園を開放し、公園を夜のミュージアムパークに
第4日 都市にメリハリをつけながら、古い街並みを守る
第5日 都心北部で大学街としての東京を再生させる
第6日 武蔵野台地東端で世界の多様な宗教が連帯する
第7日 未来都市東京を江戸にする

【著者プロフィール】
吉見俊哉(よしみしゅんや)1957年、東京都生まれ。東京大学大学院情報学環教授。同大学副学長、大学総合教育研究センター長などを歴任。
社会学、都市論、メディア論、文化研究を主な専門としつつ、日本におけるカルチュラル・スタディーズの発展で中心的な役割を果たす。
著書に『都市のドラマトゥルギー』『五輪と戦後:上演としての東京オリンピック』など。

感想・レビュー・書評

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  • この本を片手に歩いてみたいと思ったのですが、イマイチ読んでてワクワク感が生まれないのは何故でしょうか⁈

  • 2020/10/24読了。
    著者の提言は面白い。路面電車の復活とか東大池之端門を活かせとか、肯ける話もある。だが本書で取りあげられているエリアを好んで選んで静かに暮らしてきた者として本音を言うと……
    帯に「これからの注目は都心北部!」とあるが、注目しないでいただきたい。おかしな注目のされ方をした結果、僕が好きだった街は思い立ってふらりとラーメンを食べに行けるような街ではなくなってしまった。僕が好きだった店には入れなくなってしまった。僕が好きだった建物は変なリノベーションが施されてしまった。僕が好きだった桜の木には花見の時分には近づけなくなってしまった。
    若い起業家にしろ観光客にしろ、注目を促されてそれに乗じるような輩は、都心北部に注目しないでいただきたい。せいぜいおしゃれなカフェやプチホテルやギャラリーを開くことしか思いつかないなら、ここのことは忘れてほしい。東京は裏返さなくていい。裏は裏のままにしておいていただきたい。

  • 東2法経図・6F開架:361.78A/Y91t//K

  • 有り S361/ヨ/20 棚:13

  • ふむ

  • ●引用、→感想

    ●渡辺さんの「まちあるき=コンテンツツーリズム」論のポイントは、街歩きが単なる物語の追体験以上のものだという認識です。たとえば彼は、コンテンツツーリズムの原型として「文学散歩」に言及しますが、そこで実践されてきたのは、単なる作品の読者による追体験ではなく、「作品を現実の都市と結びつけ、重ね合わせる」生産的な場の生成でした。そこではまず、「作品との関わりの中で都市の記憶が形作られ、また変容を蒙りつつ、われわれの中に刻み込まれ」ます。しかし、そうした作品を通じた集合的記憶は、その都市を巡る集合的イメージが形作られる基盤ともなり、そうしてメディアのなかの物語は「都市の側にも投げ返され、そのイメージを作り変えてゆくというダイナミックな関係」が生み出されます。「街語り」と「街歩き」と「街作り」のトライアッドな関係が存在するのです。
    ●つまり、「おばあちゃんの原宿」は、一方では「病治癒」の信仰に支えられ、他方では安価な食料品や衣料品のバラエティーに支えられてきました。それはちょうど、若者たちの間で原宿の人気がいっぽうではテレビ局やメディアとのつながりによって、他方では無数の小さなショップに支えられてきたのと似ていなくもありません。
    ●浅草から東武伊勢崎線に乗ると一駅で「とうきょうスカイツリー」駅です。実際、東京スカイツリーは浅草から驚くほど近く、もしも東京クルーズの浅草船着場辺りから対岸に遊歩橋が架けられ、スカイツリーまでの掘割になっている北十間川沿いの遊歩道が整備されれば、浅草からスカイツリーまでを一体的な遊歩空間として演出できます。→初出が何時かは分からないが、2020年6月には東武線隅田川鉄橋の付帯して人道橋(すみだリバーウォーク)が架橋、また北十間川沿いの遊歩道も整備された(「東京ミズマチ」ウエストゾーン)
    ●当時、寛永寺に立てこもっていたのは、幕府の正規軍ではなく、薩長連合軍に反感を持つ志願兵の寄せ集めでした。数だけは数千いたようですが、所詮は寄せ集めの部隊、組織的に戦ってきた薩長連合軍にかなうはずもありません。最初から勝負はついていたのです。ですからこれは、圧倒的に優勢な相手に対するヒロイックな抵抗という点で、その約100年後に起きた東大安田講堂での全共闘の学生と機動隊の攻防戦にすら比せられます。

  • 本書の舞台は上野や神保町などがある台東区・文京区。また早稲田から三ノ輪橋までの都電荒川線。

    社会学者の吉見さんが街を歩きながら土地の歴史の層を掘り返していく。スローダウン、怨霊の時間など提示された概念にいちいち納得しながら読み進めた。

    荒川線の延伸(少なくても上野から浅草まで)は実現したらおもしろそう。横浜でロープウェイができたし、これから日本橋の首都高地下化、銀座のKK線のハイライン化とかあるので、もしかしたらと思ってしまう。

    しかし「より速く、高く、強く」信仰は依然強くて、都電の雑司が谷周辺にも大きな道路ができる工事が進んでいるし、社会はまだ次の豊かさを志向できてないんだなと感じることも多い。

    スローダウンや文化資源の再発見といった価値観を多くの人が持つ未来がきたらきっと東京はもっとおもしろい街になるはず。

  • 大変面白かった。渋沢栄一と川の関係性に唸る。コロナ禍が落ち着いたら、この本を片手に歩いてみたい。地形を知ることで歴史を学び、自分の足で感じることで、街の見え方が変わってきそう。

  • 路面電車を復活させるとか、高速道路を取り払うとか、もっと川筋や水上交通などをとか、面白い提言もたくさんあり、大学や渋沢栄一のことなども面白かったけれど、吉原の遊女たちの悲惨さ壮絶さや平将門のあたりはずっしりと重たくなった。どんな都市も多くの死の上に成り立っているのだから、避けても通れないわけだけれど。ピカピカのビルやタワマンの下に、死や怨が重なっていくつもの歴史の層を成している。

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著者プロフィール

吉見 俊哉(よしみ・しゅんや):1957年生まれ。東京大学大学院情報学環教授。同大学副学長、大学総合教育研究センター長などを歴任。社会学、都市論、メディア論などを主な専門としつつ、日本におけるカルチュラル・スタディーズの発展で中心的な役割を果たす。著書に『都市のドラマトゥルギー』(河出文庫)、『大学とは何か』(岩波新書)、『知的創造の条件』(筑摩選書)、『五輪と戦後』(河出書房新社)、『東京裏返し』(集英社新書)、『東京復興ならず』(中公新書)ほか多数。

「2023年 『敗者としての東京』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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