差別は思いやりでは解決しない ジェンダーやLGBTQから考える (集英社新書)
- 集英社 (2022年8月17日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087212266
感想・レビュー・書評
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人権研修の感想などで、差別について「思いやりが大事」という心の問題として捉えられることが多いということについて問題だと提起し、女性差別に係るジェンダー課題と性的少数者差別に係るLGBTQ課題を取り上げ、差別の構造を解き明かすとともに必要な制度的対応について考察。
差別には構造的な課題があり、その解消に向けては制度的対応が必要という主張はそのとおりだとは思うし、ジェンダー課題やLGBTQ課題についての本書の整理は非常に参考になるものだった。
ただ、「思いやり」という言葉が適切かは別として、著者は差別の解消に当たっての「個々人の意識」の重要性を軽視しすぎているように感じた。
著者は制度を変えるために個人も動くべきという主張を持っているように思うが、一個人が動いて制度を変えるということには限界もあるし、そもそも制度を変えるために上司への提案などのアクションをするというのはかなりハードルが高いことで、それをできないからといって個人を責めるのは酷であると思う。
そもそも差別(特に、本書でも取り上げられていた意図せざる差別)を解消するためには、制度的対応も重要ではあるが、差別があるということを認識し、差別の対象となっている属性(LGBTQ)について理解を深め、日常生活の中でもそういう理解をベースに想像力をもって人と接するというような「個々人の意識」が果たす役割が最も重要だと考える。そういう点で、著者の議論には十分に納得できなかった。 -
LGBTQだけに限らず、カミングアウトしないことによる大変さというのは、あらゆる類いのマイノリティの人が抱えている問題だと思う。
カミングアウトするのも相当な勇気が要るし、かといってカミングアウトしないのもかなりのストレスがかかり続ける。
すべての人が気軽に自分のことをもっとオープンにできる世の中になったらいいなと思う。
そのためには思いやりだけでは不十分で、様々な法律や制度が必要になるのだと思う。 -
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重版
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ずっと昔に読んだアメリカ先住民の本で、その首長が「自分たちのために涙を流さなくていいから、汗をかいてほしい」と言っていたことがずっと心に残っている。
自分たちの物語を消費財として感動の涙を流す姿にはもう飽きた、自分たちの権利のために行動を起こしてほしいということ。
この本でも同じことが書かれている。
差別の問題は社会制度の問題なんだから、社会制度を作っている側のマジョリティが問題を認識して変化させるための行動を起こす必要がある。
https://trans101.jp/
(第3回)トランスジェンダーと「性暴力論」を切り離す(立石結夏)
https://www.web-nippyo.jp/23197/
2021年度 性別違和・性別不合があっても安心して暮らせる社会をつくる ―人権保障のため私たち一人ひとりが何をすべきか―
http://www.kanto-ba.org/symposium/detail/r3.html
LGBTQ報道ガイドライン 多様な性のあり方の視点から 第2版
https://lgbtetc.jp/wp/wp-content/uploads/2022/04/lgbtq-media-gudeline-2nd-edit-1.pdf