- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087212679
作品紹介・あらすじ
ハリウッド映画が危機に瀕している。
配信プラットフォームの普及、新型コロナウイルスの余波、北米文化の世界的な影響力の低下などが重なって、製作本数も観客動員数も減少が止まらない。
メジャースタジオは、人気シリーズ作品への依存度をますます高めていて、オリジナル脚本や監督主導の作品は足場を失いつつある。
ハリウッド映画は、このまま歴史的役割を終えることになるのか?
ポップカルチャーの最前線を追い続けている著者が、2020年代に入ってから公開された16本の作品を通して、今、映画界で何が起こっているかを詳らかにしていく。
【佐久間宣行 氏 絶賛!】
「何もかもが変わってしまう時代に、それでも希望を見出すためには、ここまで現実を直視し続けることが必要なのだろう。新しい戦いを始めるための知識を詰め込んだ、武器のような本だ」
【目次】
第一章 #MeToo とキャンセルカルチャーの余波
『プロミシング・ヤング・ウーマン』─復讐の天使が教えてくれること
『ラスト・ナイト・イン・ソーホー』─男性監督が向き合う困難
『パワー・オブ・ザ・ドッグ』─作品の豊かさと批評の貧しさ
『カモン カモン』─次世代に託された対話の可能性
第二章 スーパーヒーロー映画がもたらした荒廃
『ブラック・ウィドウ』─マーベル映画の「過去」の清算
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』─寡占化の果てにあるもの
『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』─扇動されたファンダム
『ピースメイカー』─疎外された白人中年男性に寄り添うこと
第三章 「最後の映画」を撮る監督たち
『フェイブルマンズ』─映画という「危険物」取扱者としての自画像
『Mank/マンク』─デヴィッド・フィンチャーのハリウッドへの決別宣言
『リコリス・ピザ』─ノスタルジーに隠された最後の抵抗
『トップガン マーヴェリック』─最後の映画スターによる最後のスター映画
第四章 映画の向こう側へ
『TENET テネット』─クリストファー・ノーランが仕掛けた映画の救済劇
『DUNE/デューン 砂の惑星』─砂漠からの映画のリスタート
『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』─2010年代なんて存在しなかった?
『TAR/ター』─観客を挑発し続けること
【著者略歴】
宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。1970年、東京生まれ。「キネマ旬報」「装苑」「リアルサウンド」「MOVIE WALKER PRESS」などで連載中。著書に『1998年の宇多田ヒカル』(新潮新書)、『くるりのこと』(くるりとの共著、新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)、『日本代表とMr.Children』(レジーとの共著、ソル・メディア)、『2010s』(田中宗一郎との共著、新潮社)。ゴールデングローブ賞インターナショナル・ボーター(国際投票者)。
感想・レビュー・書評
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映画はアートだけど、エンターテインメントだしビジネスでもある。特にビジネスの目処が立たないと成立しない。そんなことはわかっていたつもりでいた。
でも、本書を読むとその理解がまだまだ浅いということがわかる。特に、マーヴェルを中心としたヒーローものの映画がこの5年くらいで大きく変化していることは感じていても、それが米中関係やMeToo運動にここまで大きな影響を受けているとは思っていなかった。たしかにマーヴェルはディズニーだもの。ディズニー映画のポリコレの流れとも関連した動きとして腑に落ちた。
私のようにサブスクで観るよりも映画館で観たい人間であっても、これだけオリジナル映画やドラマが増えるとネットで映画を観ざるを得ない。
自社サブスクでしか観られないドラマを含めた壮大な物語として提供するのはとても危険性をはらんでいる。シリーズものやヒット作の続編に頼りすぎると若手が育たなくなるという筆者の指摘はとても恐ろしいものだ。某プロ野球チームが実績のあるベテランばかり集めてメンバーを組むことで若手の出場が限られ育たないという問題と被ってしまう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
9月27日にこの夏ずっと続いた全米脚本家協会のストライキが終了しました。配信とAIという映画が今、直面している問題について脚本家たちは納得のいく譲歩を勝ち取ったと思われます。ただ全米俳優組合のストは年末まで続くと言われているようです。ただ脚本家と俳優の同時のストが行われたのは63年振りらしく、いまいかにハリウッド映画が大きな変局点を迎えているか、ということだと思います。今年久しぶりに読んだ「マスターズ・オブ・ライト」でインタビューされている撮影監督の巨匠たちが1970年代以降、台頭してきたのはユニオンのストライキで属していない若手にチャンスが巡ってきたから、という理由があると思われます。彼らがアメリカンニューシネマという脱ハリウッドな表現をメジャーにし、またハリウッドはその才能をまた取り込む事によって生き返ることができました。きっと今回のストライキも映画のビジネス的側面も芸術的側面も変えていくような気がします。でも、そんな時流の話から本書を手に取った訳ではなく「ファーストスラムダンク」「ブルージャイアント」の日本アニメ映画、「シン仮面ライダー」の日本生まれのヒーロー映画観て、もう今年は映画館行かなくてもいいや、と思っていたのが人に勧められるまま「ミッションインポシブル デッドレコニング」観て衝撃を受け、「Barbie」観て感動して、今更ながらにハリウッド映画すげぇモードに入ったからでした。これが今回のストのテーマみたいなビジネスやテクノロジーの観点だけではなく、#MeTooとキャンセルカルチャーのもたらす意味、MCUなどのスーパーヒーローものの乱造がつくる状況、そして巨匠たちの人生の総決算的映画のシンクロニシティ…みたいな時代と社会とビジネスと人生が,コンテンツをどう変えていくか、という深い話でした。本書を読んで、ずっと録画したままにしておいたNHKバタフライエフェクト「ハリウッド 夢と狂気の映画の都」を視聴、この新書に至る前のハリウッド史のプロローグとしてこれまた面白く、かつ今に至る問題が相当根深く埋め込まれている事も知りました。ハリウッドがどうなるか?ということはアメリカがどうなるか?さらには人間の欲望はどこに向かうのか?と同義ではないか!と思っちゃったりしました。
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筆者の映画への細かい分析から、深い愛情が見て取れます。確かにハリウッド映画はヒーローものばかりで面白くないですね、最近。
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話題の1冊。
いまも隆盛の中にあるように見えるハリウッド映画が、じつは危機に瀕していることを浮き彫りにしていく書だ。
製作本数や観客動員数は過去20年で約半減し、質の面でも終焉に向かいつつあるという。
ハリウッド映画の危機の要因として、多くの人が思い浮かべるのはコロナ禍の影響だろうが、それはほんの一因に過ぎないという。危機は複合的かつ構造的なのだ。
他の要因としては、ポリティカルコレクトネスへの過剰な配慮や、映画館からストリーミング配信へのシフトなどがある。
著者は、ハリウッドに危機をもたらした複合的要因を、2020年代の映画16本を通じて読み解いていく。
本書がすごいのは、それらの映画の作品論・作家(監督)論としても読み応えがあること。
独立した価値を持つ16本の映画評論を読み終えると、その背後に「ハリウッド映画の終焉」が鮮やかに浮かび上がるのだ。 -
●この20年間で劇場公開の本数は140本から73本、観客動員数も北米だけで約15億人から8億人へ、ほぼ半減している。作品は、シリーズ物ばかり、年に数本のメガヒット作品が映画産業全体を支えると言う傾向。
●性的なシーンの撮影を指導して、役者の尊厳を守るインティマシー・コーディネーターの導入。 -
まさかハリウッド映画に終焉の危機が来るなんて。
確かにトムの後を継ぐハリウッド・スターが思いつかない。『トップガン マーヴェリック』、『MIDRP1』を経た今、特に…。 -
移りゆくハリウッド映画。
終わりの始まり。
ブロックバスター作品の魅力が低下しつつある中、ハウス系の英語は益々とがって細分化していくのかなと思案。 -
【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/565736 -
映画評論家による、まあ、タイトル通りの内容。
コロナによる外出自粛もあって、映画館のダイスクリーンで見るのでなく、ネット配信が台頭している。
視聴者ではなく、投資家と配給会社が最大のステークホルダーになってしまった状況では、シリーズものとかしか制作もできなくて、かつてのような映画監督が生まれてくる土壌が失われている。
更に、ポリコレによる、過剰な表現の制限。
視聴者の、コンテンツ消費傾向。
まあそうかなと思うな。
それを、最近のいろんな映画を取り上げて説明しているのだが、なんせ、殆ど見たことがないので、むしろよく分からなかった。
ただ、DUNE。砂の惑星。
こないだAmazon Primeで見たばかりで、なんつか、設定の説明とか全くなくて原作ファン以外は何やってんのかもわかんねーだろうな、という感想だったのだが、これが、大スクリーンでどれだけの映像になるかという話で、そうか、映画ってそう言う見方があったっけ、と改めて思った次第。
この歳になるとトイレが心配でなかなか映画館に足を運べないのである。 -
まあ、よくまとめました。