いねむり先生 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087450996

感想・レビュー・書評

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  • 伊集院静の自伝的小説。伊集院静の自伝というよりは、むしろ色川武大の知られざる人間的な魅力を描いた小説というべきかも知れない。

    サブローこと伊集院静は女優の妻・夏目雅子を亡くし、肉体的にも精神的にも落ち込んでいた。そんな時、Kこと黒鉄ヒロシの紹介でサブローは、先生こと色川武大と交流を深めることになる。先生との交流でサブローは少しづつ快復して行く過程が良い。

    何ともデカダンスで、奇妙な病気に悩まされながらも遊びも仕事も徹底する先生、多くの人に慕われる先生が魅力的だ。何かを教える訳でもなく、遊ぶ姿を見せることで、サブローに生きることの意味をも教えてしまう先生。本当に魅力的だ。

    この作品の評判は以前から耳にしていたのだが、なかなか手を出せずにいた。読んでみると自分が住んでいる街と所縁の深い色川武大のことを描いており、非常に驚いた。読もうと思ったのは最近、能條純一の漫画化された作品を読み、非常に興味を持ったからである。

  • 女優だった妻の死後、アルコール依存、ギャンブルに溺れ、壊れてしまったボクは「いねむり先生」こと色川武大に出会う。伊集院静先生の自伝小説の真骨頂がここにあります。

    この本はサブローこと伊集院静先生が女優である奥様を亡くされて酒やギャンブルにおぼれにおぼれていた時期から、作家にしてギャンブルの神様である「雀聖」阿佐田哲也こと色川武大との出会いによって、その喪失から立ち直っていくというものです。非常に分厚い本ですが、それを感じさせることがなく、一気に読み終えてしまいました。

    作中でサブローこと伊集院先生と色川武大先生は意気投合して「旅うち」というギャンブル旅行にしゃれ込むのですが、先生はナルコレプシー(眠り病)のせいで、酒場でも競輪場のスタンドでも、どこでも突然、眠ってしまう。その病に苦しむ先生の、おおきな懐に抱かれるようにしてサブローがだんだんと悲しみから立ち直っていく姿が印象的でした。いつも、「それがどうした」とあるエッセイで不敵に嘯く伊集院先生の中にはこんな話があったのかという驚きと、KさんIさんという(誰かはここでは書きません。どうしても知りたければググってください)人たちもまた色川先生とサブローのことを暖かいまなざしで見ていて、そこもまた隠れた見所になっています。

    最後の
    「先生、こんなところにいたのですか」
    すべてを読み終えてこの言葉にたどり着いたときには正直わたくし、目が潤んでしまいました。人を傷つけるのも人であるならば、人を救うのも、また人なんだなぁ。色川先生の懐に僕も抱かれるためにもう一度彼の作品を読み返してみようかしらなんて、そんなことを考えています。

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著者プロフィール

1950年山口県生まれ。’81年短編小説「皐月」でデビュー。’91年『乳房』で吉川英治文学新人賞、’92年『受け月』で直木賞、’94年『機関車先生』で柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で吉川英治文学賞、’14年『ノボさん 小説 正岡子規と夏目漱石』で司馬遼太郎賞をそれぞれ受賞する。’16年紫綬褒章を受章。著書に『三年坂』『白秋』『海峡』『春雷』『岬へ』『駅までの道をおしえて』『ぼくのボールが君に届けば』『いねむり先生』、『琥珀の夢 小説 鳥井信治郎』『いとまの雪 新説忠臣蔵・ひとりの家老の生涯』、エッセイ集『大人のカタチを語ろう』「大人の流儀」シリーズなどがある。

「2023年 『ミチクサ先生(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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