- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087453898
感想・レビュー・書評
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ちょっと、通常では考えられない世界が伊坂幸太郎の小説の中には存在する。フィクションなのだから当たり前と言われればそうなのだが、なぜその構想に至るのだと感服してしまう。やはり私的会ってみたい作家No.1である。
今作はとにかく伏線回収に忙しい。これは伏線に使われるだろうなと構えられるものもあるが、え、そこも?あれも?と、気を抜いたら取り残されてしまう。そして読み直す度に新たな伏線に気付く。タイトルにもあるが「もう俺の人生、残り全部、バケーションみたいなものだし。」というセリフ。これは第一章と最終章で岡田と溝口がお互いのいない場で発するのだけれど、そこがいい。岡田らしくて、でも溝口らしさも含まれていて、私の中にスッと落ちた。お気に入りのセリフだ。どちらが影響されたのかは知らないが、どっちもどっちなような気もしなくもない。
解説を読んで首がもげるほど頷いたが、伊坂さんはこちらに絶大な信頼を寄越している、と常々感じるラストを用意しがちである。
チルドレンが好きな人は今作を絶対好きになれるし、今作が好きな人はチルドレンが絶対に好き。ザ・伊坂幸太郎を読んだ気分。
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伊坂幸太郎さんの小説を読むのは本当に久しぶりで、「オーデュボンの祈り 」「グラスホッパー」を十数年前に読んで以来です(ブクログを利用するずっと前ですね)。
さて、本書は、いわゆる“裏稼業”で生計を立てている、岡田と溝口の二人をメインに、5つの章で構成される群像劇です。
台詞のテンポが良く(まあ、皆よくしゃべる)、あちこちに張られている伏線の繋がりを発見するのも楽しく、サクサク読めます。
第1章のラスト以降、岡田青年の生死が気になる状態のまま引っ張ってくるのですが、ジリジリさせてのラストの一文が何とも秀逸で、上手いですよね~。
回収し忘れた伏線がないか、もう一回読んでみようかな。と思わせる一冊です。 -
久しぶりの伊坂幸太郎作品読了。
なんというか血の通ってないような冷めた人物が出てくるのが昔から好みな作家さんです。静かにワクワクする感じ。
最後の最後にそうきたか、と溝口の行動にやられる。そしてこう終わるか!読み手の想像に委ねるのは嫌いじゃないけど、、
「とんでもはっぷん、歩けば10分」かぁ。 -
「今日、仕事辞めたばかりなんだ」
「明日から、もう人生、残り、バケーションみたいなもんだし」
五つの短編からなる本作。テンポよく進み、読みやすい。そして伊坂幸太郎さんの短編集は魅力的な作品が多くて困る。
「過去のことばっかり見てると、意味ないですよ。車だってずっとバックミラー見てたら、危ないじゃないですか。事故ります。進行方向をしっかり見て、運転しないと。来た道なんて、時々確認するくらいがちょうどいいですよ。」
何気ない会話の中にポジティブになれるセリフが多く、
とても前向きな気持ちにさせてもらえます。
「自分探しの旅にでも行くのかよ。」
「自分探し?探さないですよ。俺、ここにいますから。」
過去の後悔もたくさんあるけどそれも含めて自分だし、せっかく生きていくなら、生きてるように生きたい。
伊坂幸太郎さんらしさが詰まった本作。初めての人にも読みやすい一冊だと思います。せっかくの夏休みですし、手に取ってみてはいかがでしょうか。 -
久しぶりの大好きな伊坂幸太郎さん。
登場人物の軽快な感じがサラサラ読める。
裏稼業の溝口は、全然タイプの違う相棒?と仕事を組めるしそれぞれが思いやっている感じをみると、なかなかの人徳者なのかもしれない。まぁ当たり屋やってる段階でそんなことは言ってはいけないか。
ラストのメール。みんなの幸せに繋がるといいな。
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伏線回収が見事。時系列がバラバラな5つの短編が、細かい点でリンクし合っているため、後から読み返したくなる作品です。
本作に一貫しているのは、続きの展開が気になるということ。表題作の「残り全部バケーション」や最後の「飛べても8分」は特にそうで、ストーリーの終着点が描かれていません。とはいえ、読後感が悪いということは全くありません。
登場人物はみなユーモアに溢れ、落ち着く暇なく非日常な物語は進んでいきます。そういう意味で、本作は私にとって全部バケーションな作品でした。 -
おもしろいです。会話は深く透明です。岡田さん魅力ありますね。表題作品が特に好きです。
もう一度、読みたいと思います。 -
お久しぶり伊坂幸太郎を読書。事情が色々とある人々のつながりで場面が変わっていく、いつもの伊坂幸太郎さんの語りです。ストーリー自体は予想できる範囲に収まってたんですが、最後にはここで終わらすのかっ!!って思ってしまった。伏線ありのラストだけに色々と想像できますが、私は「残り全部バケーション!!」って結末で読み切りました。
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伊坂幸太郎作品はほとんど読んでいるが、
まだこれを読んでいなかったことを後悔するくらいに最高の一冊だった。
相変わらず登場人物がみんないいし、心にすっと刺さるセリフも多い。
読者の想像を掻き立てるラストがまた良い。
読み終えた後に「もしや」と最初の方のページに戻り、ある名前を見返して思わずにやり。
最高のバケーションを過ごせている岡田が想像できて幸せな気持ちになった。
どうか溝口も、今頃素敵なバケーションを過ごせていますように。