櫛挽道守 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
4.40
  • (44)
  • (27)
  • (8)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 248
感想 : 40
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087455137

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 時代は幕末、女性の櫛挽職人である登瀬の物語。
    時代物で櫛を題材にしている地味な内容かなと思って読み始めたけど、いい意味で期待を裏切られました!心に響く傑作。読み応えがあり、展開も面白く引き込まれ、色んな意味で深い物語でした。
    江戸時代の木曽山中、中山道沿いの宿場町藪原に伝わる梳櫛「お六櫛」。父吾助は神業を持つ職人。その父を尊敬し、技を継承したいと願う登瀬。でも女は嫁いで子をなすことが当たり前とされていた時代に、女が職人になりたいと思ったところで道は険しい。登瀬の櫛作りにかけた一途な半生。そして家族の物語でもある。弟が急逝したことでバランスが崩れた一家の母や妹の思い。それでも登瀬には常に櫛に対する情熱が芯にあり、それが彼女を支え続けた気がする。無口で卓越した技を持つ父、弟の残した絵草紙、幼馴染の源次、弟子入りしてきた実幸、それぞれの思いが交錯して、最後にこう繋がるのかと胸が震えました。希望の持てる終わり方で読後感が非常に良いです。
    幕末の激動の時代、登瀬は藪原から一歩も出ることもなく櫛と向き合い続けるけど、時代の流れは登瀬の人生にも影響を与えていきます。私としては日本史の勉強をしたからわかる部分も多くあった。歴史ものも面白いな。
    そして登瀬は根っからの職人なんだなぁと思った。ここまでひとつのことに情熱を傾け、信念を曲げずに精進していける登瀬の生きざまに心揺さぶられました。道は険しくてもこんな風にのめりこめることに出会えた登瀬をうらやましく思ったりもしました。読んで良かったと思える物語でした。

  • 同時期に執筆されたという「光炎の人」が物語・人物造形共に素晴らしかったので、時代も舞台も異なるけどある意味で仕事小説という共通の枠組みを持った本作に高い期待を持って読んだ。
    予定調和でなく読者を引き回してくれるストーリーテリングの巧みさは相変わらず素晴らしい。作者の真骨頂は、時に憎たらしく、イライラさせられ、きらいになってしまいそうになる人物造形だろう。
    時代の動きと主人公の生き方や仕事の変化みたいなものが「光炎の人」ほど強く感じられなかったところが少し残念だったが、傑作には変わりないだろう。4.0

  • 櫛挽きの技を繋いでいくことで、家族が繋がっていく。

  • 20170125〜0127 時間潰しに入った図書館で見つけた。日経書評で紹介あり。木曽の宿場町を舞台に、お六櫛という梳き櫛の職人を志す女性を描いている。櫛挽の作業は職人技なのだな、ということが良く分かる。主人公の登勢一家を覆う哀しみも櫛挽の音と重なり合う。
    読後感は悪くない。ほかの作品も読んでみたいと思った。

  • 読むのに時間がかかってしまった。
    幕末頃の中山道にある村の話。
    この頃の女性は生きにくかったのだろうなと思う。
    すべては家のため。子育てに家事に家のために尽くすのが当たり前だった時代に櫛挽に魅せられ他者と違う道を選ぶ登勢は立派というか歯がゆいというか。
    最後はなんとなく家族の形も出来て良かった。

全40件中 31 - 40件を表示

著者プロフィール

1967年生まれ。出版社勤務を経て、2004年『新選組 幕末の青嵐』で小説家デビュー。08年『茗荷谷の猫』が話題となり、09年回早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞、11年『漂砂のうたう』で直木賞、14年『櫛挽道守』で中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞を受賞。他の小説作品に『浮世女房洒落日記』『笑い三年、泣き三月。』『ある男』『よこまち余話』、エッセイに『みちくさ道中』などがある。

「2019年 『光炎の人 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

木内昇の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×