- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087458244
感想・レビュー・書評
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池永陽『下町やぶさか診療所』集英社文庫。
東京の浅草にある診療所を舞台にした下町人情物語。『珈琲屋の人々』にも似た温かくも、深刻な作品である。この終わり方からすると続編があるのだろう。
近所から大先生と慕われる浅草の診療所の医師・真野麟太郎の元にリストカットした女子高生の麻世が治療にやって来た。麻世の抱える事情を知った麟太郎は麻世を診療所に引き取るが……診療所に訪れる患者、麟太郎が通う『田園』の客が抱える大人の事情……
難しいテーマをよくぞここまで昇華させたと思うストーリーで、なかなか読ませてくれる。 -
大先生をおお先生と読むんだね、2の後に読み直す。恋煩いで診療所に来るとか、こんな先生いたら良いだろうなーとしみじみ思う。風鈴屋のお喋りで挑発する江戸っ子、水道屋が本当の癌で驚くとか、看取る大先生の生き様。麻世を住まわせる、住まわせる迄のやり取りが実直で好きだ。
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医療現場ではあるあるの老老介護などのテーマだけでなく、毒親問題も出てくるこの小説。麻世にはもう毒親と縁を切り麟太郎先生の元で自分の過去を癒しながら新しく看護師としてやり直してもらいたい。性的虐待は最も踏み込みにくい問題だけに、そこに手を差し伸べられる麟太郎先生の素晴らしい生き方に共感する。麟太郎医師は病気を治すだけでなく人の人生も立て直すすごい医師で、こういう人が里親とかになって、虐待で苦しんでる子どもの味方になってほしい。
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浅草の診療所の医師、麟太郎はいつもちょっとしたお節介をしながら、町の人たちと触れ合っている。
大きな傷を負って居場所のない女子高生、認知症の妻を支える老老介護、植物状態の夫を見守る先の見えない入院、そして癌。
一つ一つのテーマはかなり重いのだが、麟太郎と下町の人々の関わりが温かく描かれていて、読みやすかった。 -
久しぶりに池永陽さんの作品を読みました。「下町やぶさか診療所」、2018.12発行。テンポがよくて一息に読了、楽しい時間を過ごしました。真野浅草診療所院長の真野麟太郎64歳、お節介焼きのナイスガイです。母の愛人に侵され自暴自棄になった高校2年生沢木麻世16歳、やぶさか診療所受診をきっかけに、診療所2Fで麟太郎と暮らすことに。曖昧なことや嘘が嫌いな元ヤンキーの可愛らしさ、そして意外と素直な面が。病院の隣りには昼は喫茶、夜はスナック、美人の夏希ママが経営する「田園」が。下町の気風のいい住民たちの物語。
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いろんな事情をかかえた患者やご近所さんがおりなす人情ドラマ。全部で7章。悲しい終わりの話もあるが、4番目の「幸せの手」がさわやかで良い。キーとなる人物麻世が高校2年生にしてはキャラが大人すぎるというかぶっ飛んでて無理がある。最後の終わり方があっけないというかその後まで書いて欲しかった。たぶん続きがあるのだろう。
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続きが気になって一気読みなんだけど読み終わったら凹んでるw リアルなんだよねぇ....身につまされて。
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下町人情あふれる診療所の医師・真野麟太郎と一緒に暮らすことになった女子高生・麻世。
この二人がなんかいいコンビなんですよね。
ラストはちょっとドキドキしました。
牧野さんのカバーの絵も雰囲気が出ています。
あとがきにも書かれているように、新たな物語のスタートです。続きが楽しみです。 -
この物語のすごいところは、
目に触れたくないものを、
きっちりと描くところ。
生と死を見つめる感動の物語。
厳かで尊く、迷いながらも清廉に生きる医師。
そんな風にも描くことができると思うが、
このやぶさか先生は大酒をくらうし、
食堂のママに首ったけの人間臭い医師だ。
そして性の問題にも触れる。
生きることは死ぬことであると同じように、
生きる上で性は避けて通れない。
愚かでみっともなく、無様で業深い性が描かれる。
生と死と性がある物語はなかなか無い。
感想の書き方の手本のようです。
今後書く時の参考にさせて頂きます。
感想の書き方の手本のようです。
今後書く時の参考にさせて頂きます。