まさかまさか よろず相談屋繁盛記 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.59
  • (5)
  • (10)
  • (10)
  • (0)
  • (2)
本棚登録 : 112
感想 : 9
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087458282

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 〈よろず相談屋繁盛記〉シリーズ第二作。
    若干二十歳にして将棋会所兼相談屋を営む信吾に、タイトル通り『まさかまさか』な相談事が。

    将棋会所には珍しいお武家の客が来たと思えば信吾の顔を見てギョッとする。どうやら信吾はある御仁に瓜二つらしい。そのことである御仁の身代わりとなって欲しいという依頼が来たのだが…。
    『命あっての』という章題に相応しく、とんでもないことに巻き込まれる。信吾に鎖双棍という武器と武術の心得があって良かった。逆に言えば信吾に武術の心得があるから油断をしたと言えるかも知れない。依頼がとんでもなければ相談の報酬も破格。

    もう一つの『まさかまさか』は、突然犬になってしまった幇間を家族に引き合わせるという話。
    何故犬になったのかは分からないまま、幇間は野犬たちの親分になってそれなりに暮らしていたらしいのもビックリ。
    この話では信吾の動物と話せる能力が活かされる。その顛末は。結局ファンタジー?

    第二話は会所に来た客たちの、間男を巡る議論が延々続く。狙いがよく分からないまま終わった。

    最終話では会所に女の子の客がやって来る。ハツというその子の将棋の腕は信吾も感心するほど。ハツに釣られて同世代の少年たちが来たり、若い客も増えて来て会所の雰囲気が変わっていく。
    何よりこれまでやる気がなかった小僧の常吉がハツに刺激を受けて将棋に興味を示す。これまで信吾があの手この手で常吉を変えようとしても変わらなかったのに、まるで別人のように将棋にも仕事にも前向きになる。嬉しいような、信吾の力ではないだけに悔しいような。

    シリーズ第二作とあって、シリーズ名ほど相談屋は繁盛していない。相談は商売ではなく人助けのつもりの信吾だからのんびりしても良さそうだが、彼自身は焦っているようだ。今後どのようにシリーズ名に相応しく繁盛していくのだろうか。

    ※シリーズ第一作「なんてやつだ」レビュー
    https://booklog.jp/users/fuku2828/archives/1/4087457753#comment

  • 「なんてやつだ」に続く「よろず相談屋繁盛記」第2弾。4つの話はどれも工夫されていて面白い。よくいろいろ考えるものだ。野口卓は上手い。
    「命あっての」は、瓜二つの若殿様を巡っての騒動。主人公の得意な鎖双棍を使う場面もある。
    「話して楽し」間男について将棋会所で話が盛り上がる。
    「鬼の目にも」まさしく、まさかまさかの展開。将棋会所が発展していくきっかけとなる。
    「夢のままには」10歳の女の子がやってきて、会所も若返っていく。慎吾に仕えている小僧の常吉が目覚めていくのがいい。それと同時に慎吾も成長していく。

  • シリーズ2冊目。【命あっての】たまたま将棋会所を訪れた侍から受けた相談屋への依頼。ある人物に成りすまし、百物語の会に出席するが…そして驚愕の相談料が!【話して楽し】客が間男の話題で盛り上がる。まだまだ若い信吾は…ちょっと異色な展開の話。【鬼の目にも】信吾の前に現れた白い犬。「自分は幇間。ある日突然、犬の姿になってしまった」と言う。動物と話せる信吾の本領発揮か?【夢のままには】将棋会所を訪れた、かなりの腕前の10歳の少女。その影響で少年の客も増え、そしてあの、常吉に変化が…
    まだ若い20歳の信吾。相談屋はまだまだ軌道に乗らないが、相手の思いを受け止め、思慮深く解決へ導く姿勢がより頼もしくなっていくように感じた。次作が楽しみ!

  • よろず相談屋繁盛記シリーズ第二弾。
    初めの一巻は、登場人物の紹介と言ったとおろだったか。
    この2巻目になると話が俄然面白く変わる。

    題名の通り「まさか、まさか」の事件ばかりが相談される。
    話は読んでのお楽しみ!

    楽しめること請け合い!!

  • 202110/よろず相談屋繁盛記シリーズ・めおと相談屋奮闘記シリーズ既刊全10作まとめて。毎回平積で新刊を見かけ気になっていたので読み始めることに。最初は、設定てんこ盛り(幼少時に大病、生き物の声が聞こえ会話できる、老舗料理店の長男、鎖双棍の使い手、相談屋と将棋会所を経営)だな~と思ったけど、主人公は勿論、登場人物達が生き生きと描写されているのでこの世界に入り込んで楽しめた。最初は使い物にならずぼんやりしてた小僧の成長ぶりやちゃっかりぶりも微笑ましい。相談事の内容や解決手法等、物語としてパッとしないものや偶然の産物だったりも多いし、自分の好みではない話(将棋会所で皆が艶話や与太話をただただ話すだけとか)もあるし、時代物とはいえ書いている今の時代にそぐわない描写や設定も感じるけど、総じて面白かった。「主人公と話してたら何故か解決してしまう」のと同様、とらえどころのないなんかわからない面白さもあった。

    よろず相談屋繁盛記シリーズ(なんてやつだ/まさかまさか/そりゃないよ/やってみなきゃ/あっけらかん)
    めおと相談屋奮闘記シリーズ(なんて嫁だ/次から次へと/友の友は友だ/寝乱れ姿/梟の来る庭)

  • 18

全9件中 1 - 9件を表示

著者プロフィール

1944年、徳島市生まれ。さまざまな職業を経験し、ラジオ・ドラマ脚本・戯曲を執筆。1993年、一人芝居「風の民」で第3回菊池寛ドラマ賞を受賞。日本脚本家連盟会員、日本放送作家協会員。2011年、『軍鶏侍』で時代小説デビュー。同作で歴史時代作家クラブ新人賞を受賞、同シリーズにより多くの時代小説ファンを獲得。ほかシリーズに「ご隠居さん」「手蹟指南所『薫風堂』」「新・軍鶏侍」「よろず相談屋繁盛記」「めおと相談屋繁盛記」など、単著に『からくり写楽 蔦屋重三郎、最後の賭け』など著書多数。演劇にも造詣が深く、小説、戯曲、芸能、映画、音楽、絵画の多ジャンルでのシェイクスピア派生作品を紹介した著作『シェイクスピアの魔力』がある。

「2022年 『逆転 シェイクスピア四大悲劇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

野口卓の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×