怪談のテープ起こし (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.76
  • (32)
  • (81)
  • (59)
  • (5)
  • (2)
本棚登録 : 660
感想 : 68
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087458305

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 著者の三津田氏が聞いた話という体裁で書かれた怪奇短編。加えて序章・幕間・終章にて担当編集者の異変を描き、現実に障りがあるような恐怖を描く、念の入れよう。実話なのかどうかはさして重要ではないけど、怪異が解明する、あるいは解消されることはほとんどないのが実話っぽさを増していると思った。『新耳袋』に載っていそうな話といえばいいのか。

    【収録作品】
    「死人のテープ起こし」
    ライターの吉柳が集めたという自殺者が最後に残した肉声テープを文書に起こしてもらう三津田氏。三つのサンプルに単なる死の実況ではなく不可解なものを感じる……
    文書の内容もかなり不気味なんだけど、それより三津田氏に吉柳を紹介した作家島村奈津さんの名に驚いた。『フィレンツエ連続殺人』は読んだことがある。実在の作家出してくるのはズルいよなぁ(笑)
    「留守番の夜」
    大学のOGらしき女性に紹介された留守番のアルバイトで恐ろしい体験をする女子大生の話。
    最後まで読むと一応の真相はわかるようになってるけど、ただ理由や夫妻の謎、伯母の存在など解明されてないことばかりで厭な読後感である(褒め言葉)。
    「集まった四人」
    共通の知人岳に呼ばれてハイキングをすることになった初対面の四人が遭遇する怪異。
    と言っても怪異を感じているのは語り手の勝也のみで、ほかの三人は普通に山登りをしてきただけになっている。これも一本足の足跡も各々に残された卵石のことも何も解明されない。
    「屍と寝るな」
    中学の同級生Kから聞いた話。Kの入院している母の隣のベッドの老人が呟く話を整理すると少年時代の出来事だった。
    これはかなり不気味で好みの話だった。少し似た話を澤村伊智も書いてた気がする(澤村さんが三津田氏を好きらしいから影響を与えたのかも)。彼の頭の中で永遠に繰り返されているのだとしたらこれほど恐ろしい話はないだろうな。
    「黄雨女」
    女性占い師の語る元カレの不気味な体験。全身黄色い雨具に身を包んだ女性「黄雨女」につきまとわれたサトルはついに……
    これも気持ち悪い。黄雨女の由来も実在すらもはっきりしたとはわからないまま。都市伝説に近いものがあるかも。
    「すれちがうもの」
    毎朝通勤途中ですれ違う顔馴染みの人々。その中に黒い影を見つけた夕菜はそれが日に日にこちらへ近づいて来ていることに気づき……
    これも不気味。なかなか対抗手段を取らなかったことを本人も悔いているけど、現実にはどうしたらいいかわからないよね。そして黒い影はいったい何だったんだろう。

    全ての話がすっきりしない終わりかたではあるので、そういうのが苦手な人には楽しめないかもしれない。

  • フィクション?ノンフィクション?読者を戸惑わせるホラー短篇集。

    話は全て著者自身の体験や著者の周りの人の体験、という設定で進んでいく。
    しかし残念ながらそれが私には合わなかった…
    これはあの仕事のなんちゃら出版社のどこどこの誰々の〜と長い説明がいちいち短篇の最初の方にあって逆にそれで冷めてしまいました。
    リアリティを出したいのは分かるけど、くどいのよ、説明が!!!
    でもそれにリアリティを感じて尚更ゾッとする人がいるのは事実だと思うので、これは私が合わなかっただけですね(@ ̄ρ ̄@)
    これを読むまで気づかなかったですが単刀直入に本題に入って怖がらせてほしいタイプみたいです←

    話の内容だけでいうと興味深い怖い話が集まってました!
    山の話とか雨の話とか面白かったですよ〜。

  • 最高に良いホラーに出会ってしまった気がする。きっと後で思い出して後悔するんだろうな、と分かってるのに止められない。日常に潜む怪異を綴った短編集ですが、仕掛けも多々あり最後まで気が抜けません。

  • 「大好きな作家がいて、新作を読みたいと願うのなら、何冊に一回は単行本を購入して応援することが大切です」

    この終盤の文が刺さったのでこれからはなるべく単行本も買うようにしたいと思います

    「死人のテープおこし」
    自殺する間際の肉声を集めた"死人のテープおこし"なんて神も仏も信じなさそうな人でも罰当たりだわ〜と言われそうな企画をしようとしたら案の定…な話。自殺実況テープが淡々としながらも徐々に不可解な"何か"を感じていくのが怖い

    「留守番の夜」
    叔母の部屋に死んだはずの叔母が神としてて居続けているのか、義理の息子の光史(ん?格子…?)は叔母に操られてるのか、それとも生きてると思い込みすぎてあんな感じになってしまったのか。そもそも小田切は何者なのよ

    「集まった四人」
    私の友達とあなたは友達な集団が気まずさ87%の中、山に行ったら大変なことになっちゃいました。
    岳さんは山の魔に魅入られてしまっていたという話でいいのかな。多分連れの人たちは山に行ってしまったんだろう

    「屍と寝るな」
    寝たくないです
    この話の怪奇現象はファンタジー味がある

    「黄雨女」
    最初から最後までじっとり
    情景を想像するとすっごい怖い、ビジュアルは漫画座敷女を想像しちゃうなぁ〜怖

    「すれちがうもの」
    毎日の通勤で"すれちがう"人が怖くなる話
    何も因縁も理由もないのに何かに追い回されるって怖い話だよね、対処法も逃げ場も見つけられない。花を隣の家に置いたらどうなったんだろう。
    巻き込まれた友人がまだ不憫なんだ

    水が共通してるらしいけど「点滴の減りが早い」はわからないよ!!

  • 作者が作品内に登場する怪奇短編集。また、この短編集が本になって出版されるまでの過程も描かれている。裏話的なエピソードが載せられていることによって、この話が本当にあった出来事なのか、それとも完全な創作なのかが分からなくなり、更に恐怖を倍増させる。最後まで怪異の謎が解けないので、読後にモヤモヤが残り、とても怖くなった。

  • 以前ブクログの特集で紹介されていて気になったもの。
    著者の本は初めて。
    これは現実なのか創作なのか、境目がどんどん分からなくなる感じで、引きずり込まれるように読んだ。解説を読んだところ、それが著者の持ち味でもあるらしい。
    現実にもあり得そうな大袈裟でないホラー話と、短編の間に著者と担当編集者との裏話エピソードが挿入されていて、それがまた境目を曖昧にしている。
    こういう感覚は子供の頃にとても覚えがあるけれど、お風呂やお手洗いに行くのが怖くなってしまいそうな話。

  • 初読みの作家さんでしたが最初の表題作から一気に引き込まれました。
    現実と虚構のどちらとも取れるメタホラーで、個人的に好みにピンズドでした。
    説明出来なくて意味不明な得体の知れない怪異って最高

  • 主人公が怪談話を取材して書いていく話ですがこの話はあくまでも小説の中の話のはずなのに本当に取材しているものを書いてあるような感覚に引き込まれて実話怪談を読んでいるように途中から感じました。
    内容は好みの分かれる話も分かりづらい話もありますがサクサク読めます。

  • 初めての三津田作品。各話で完結しているものの序章、幕間、終章によって1冊のホラー作品になっている。フィクションなのか実話なのかどちらとも捉えられる書き筋でラスト1行にぞっとした。なかなか面白い、もしかしたら起こりうるかもなホラー。

  • 図書館。ホラーが読みたくなったので。
    最後の一節、やめて〜!と願うばかりだった。こんなに読者全員に共通して身近にあるものもないのに、それを怖がらせるの、さすがとしか言いようがない。
    ひとつひとつのお話も、リアルで気味が悪くて、とても怖かった。この時期に読むにうってつけだった。

全68件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

三津田信三
奈良県出身。編集者をへて、二〇〇一年『ホラー作家の棲む家』でデビュー。ホラーとミステリを融合させた独特の作風で人気を得る。『水魑の如き沈むもの』で第十回本格ミステリ大賞を受賞。主な作品に『厭魅の如き憑くもの』にはじまる「刀城言耶」シリーズ、『十三の呪』にはじまる「死相学探偵」シリーズ、映画化された『のぞきめ』、戦後まもない北九州の炭鉱を舞台にした『黒面の狐』、これまでにない幽霊屋敷怪談を描く『どこの家にも怖いものはいる』『わざと忌み家を建てて棲む』がある。

「2023年 『そこに無い家に呼ばれる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三津田信三の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×