精神科ER――緊急救命室 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087463743

作品紹介・あらすじ

都知事の発案でより早く急患に対応すべく急遽開設された「東京ER」。その精神科は、日々、緊迫した空気に包まれている。パトカーや救急車でひっきりなしに運ばれてくる患者たち。父親から捨てられ自殺を図った兄妹。心のバランスを崩し、深夜の霊園で叫ぶサラリーマン。「愛が欲しい」と恋人の前で包丁を取り出す女性。極度の緊張の中、厳しい現実と格闘した現役精神科医が語る壮絶人間ドキュメント。

感想・レビュー・書評

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  • 精神疾患や精神科に興味があり読みました。
    精神科の救急とのことで主に命の危険がある場合が多くあるよう。東京都のシステム上、緊急保護入院等の応急処置に繋げたらその後は転院となるため
    継続的には観られないジレンマも感じられました。
    救急のため一時的でも病識がない状態に陥っている患者さんも多く、そんな患者さんや取り巻く家族をなだめながら診察に持っていく手腕は作者の経験技術もさることながら元々の人柄も大きいのではないかなと思いました。文章も専門的なないよも分かりやすく説明されているのでおそらく患者さんや家族への説明もそれぞれのパーソナリティに合わせて説明し適切な対応してをなされているのかなと思いました。
    読んでいて苦しいところもありましたがこのようなお医者さんがいたら心強いのだろうなと思いました。

  • 伝えたいことがたくさんあったのか、なんだか長い業務日誌を読んでいる感じだった。
    ちょっとお腹いっぱいな読後感。
    ECTについては、私も『カッコーの巣の上で』のイメージが強くあまり良い印象はもっていなかったし、作者があまりにも強く勧めるので、もしかして、結局ECT療法のことを言いたかったのかな?とさえ思ってしまったけれど、文庫本のあとがきに、自己の反省を含めた見解が書かれていたので
    すっきりした。読んでよかった。
    というわけで、読むなら文庫本をお勧めします。

  • 患者と医師の適切な距離とは…。主人を見ていてもそこには明確な答えはなく、よい医師とは…と理想を求めても100人の患者がいれば100通りの答えがあるのかもしれない。

    精神科に限って言えば、あまり共感しすぎないのが医師の人格が崩壊しないコツなのかなぁと。

  • 病は突然やって来る。

  • 若手医者による日々の試行錯誤と葛藤が綴られている。
    精神科の治療には、絶対的な方法や回復というものがないのだろうか。
    (2012.8.19)

  • 多分、先に救急センターのノンフィクションを読んでいて、そのイメージが頭に残っていたのが悪かった。
    読みごたえはあると思うが、なんとなくインパクトに欠けるのだ。
    読者に読みとってもらいたい内容の方向性が違うため、もちろんそれは当り前のことなのだが、
    1話がなんとなく短くて、若干拍子抜けしてしまう。

    うつ病や統合失調症など、ストレスフル社会の中で精神を病む人が当たり前になってきている世の中だが、精神科に対する偏見は未だ根強く残る。
    何重にも鍵の掛けられた病棟で、奇声が響き、患者が暴れ、檻の中で拘束される……。
    そこにいるのは人間ではなく「動物」。
    そんなイメージを持つ人も少なくないはず。
    (大学時代心理学をかじった私もこういうイメージが少なからずある。イメージであって嘲る意味はない)
    本著でも、救急車で運ばれ、精神科ERで保護される人たちは、「保護室」と呼ばれる檻・拘束具つきの部屋に収容される。
    暴れる人はベッドに全身を拘束され、落ち着くまで動けなくされる。
    これだけ言うと残酷で非情なようにも聞こえるが、これらは必要なものである。
    暴れたり、自傷したり、脱走したりしようとする患者たちに対しては拘束し、閉じ込めることで治療者も患者も「守る」ことになる。
    精神科を専門とする医師・看護師はそうして命がけで患者を救っていくのだ。

    精神科への差別は根強く、著者いわく同じ病院内でも「なにもできない精神科」と言われる始末である。
    心療内科等が増えてきているにつれて、精神科ERの整備と精神科への偏見が少しでも薄まれば幸いである。

  • 現役の先生が書いてる本。他の本も読みたい。

  • 精神科救急での体験をもとに、一般の人にあまり知られていない精神科医療のことを述べる本。

    文章がわかりやすく、リアリティがあって、どんどん読みすすむ。一日で読み終わった。
    精神科というと遠いことのように感じる人もいるけれど、ある日突然に起こることもある。誰だって、他人事と言い切れない。

    そこにどう寄り添うかが、精神科医の腕の見せ所なのだと思う。

    心理屋としては、臨床心理士がどのようにかかわるのかも知りたかったけど、まあ精神科救急という緊急の場面では心理はなかなか出てきにくいのかな。

    医療現場の話に関連させて、著者がどのような医師になりたいと考えているのかの変遷もたどれるのが興味深い。
    すべてを一人でやることはできないから、どこを担当する医師になるのか。とても難しい選択なのだろうと感じた。

  • 精神病とともに試行錯誤する医師のお話。
    うつ病だけでなく、急性の精神病やせん妄状態の患者など、いろいろな状態を見ることができる。
    ER、とある通り、救急病院のため、受け入れた患者を引き続き見ることはできない。そのもやもやは、「割りきれない気持ちを抱えながら、誠実に向き合う。これを繰り返すしかないんだ」という。
    自分の仕事にも当てはまる。各生徒の一生を見続けることはできない。他の授業にも関われない。でも、誠実に向き合うことが解決の糸口か、と思えた。
    プロについての記述も、どんなときも笑顔で、親身になって、「患者」と向き合い、その積み重ねが余裕を生む。というのは背筋が伸びる。
    外国人の患者で、人よりも仕事ができることを示し続けないと仕事を与えてもらえない、いつも試されているみたい、がんばっても平等に扱ってもらえない、という話があった。
    まるでそのまま自分のようだ。
    どうしても、会社内で、自分がこの専門職の代表になりうる、といったときに上記のような状態になりやすいと思う。辛いよなあ。
    肩の力を抜けるといいんだけど、抜いたことのない人にはよくわからないんですよね。
    最後に、反応性うつ病について書かれていた。明確な原因があり、すぐにはそれが解決しない場合にはどうしたらいいのだろう。
    受け止めることができなくて、病気になるのだとしたら、受け止める準備をするのが必要なのかもしれないな、とおもった。体を整え、諦めることは諦め、幸せに優先順位をつける。そのなかでストイックになりすぎず問題解決を図ると、受け入れることができるようになるかもしれない。
    精神病を外側から見たい人にぴったりの本。

  •  作者さんは、精神科のお医者さんで、もっと質の高い医療を目指して、ER(救急)のある病院の精神科に移ってきた後の話です。

     そこはある意味特殊な世界で、緊急の状態で運ばれてきた患者さんを診察し、入院する必要があるかどうかを判断する……というところです。
     さまざまな患者さんが出てきて、どのように診察を行い、どういう判断でどう処遇したのか、その後の経過はどうなのか、ということがとても現実的に描いてあります。

     ……が。
     そこは、救いようがないほど現実なので、なんというか、物語性はまったくありません。
     よく手記とか読むと、まるっきり物語のように感じられるような場合があると思うんですが、それはそんなことがない……というか、ドラマ性がない、というべきなのかな?
     そういう意味では、そういうものを期待すると、かなり拍子抜けしてしまうと思います。

     まぁ、そう考えるのも、私がまったくそれとかかわりのない仕事をしているわけじゃないからかもしれません。
     この別の側面の現実を私は見てしまっているので、なんだかものすごく想像がたやすくて、正直、言ってつまらなかったです。
     でも、一方ではこれが現実なので、全然分からない人は読んで知っておくといいのかもしれません。

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著者プロフィール

1972年沖縄県那覇市生まれ。精神科医。吉祥寺クローバークリニック院長。精神保健指定医。琉球大学医学部卒業。同附属病院、旧・東京都立府中病院精神神経科、聖路加国際病院麻酔科、JR東京総合病院メンタルヘルス・精神科などを経て、2007年より現職。著書に『発達障害でつまずく人、うまくいく人』(ワニブックス)、『大人の発達障害』(マキノ出版)などがある。

「2017年 『大人の自閉スペクトラム症』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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