楊令伝 11 傾暉の章 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087468151

作品紹介・あらすじ

梁山泊は、国としてのかたちを整えていく。西域への交易路開拓のため、韓成は西夏に遣わされる。楊令自ら護衛する最初の商隊が、西域へと出発した。兀朮らが率いる金軍は、南宋の帝となった趙構を討つために旧宋領への侵攻を続ける。劉光世は趙構を守って江南を転戦するが、一方で、岳飛と張俊は趙構の召集に応じることなく、それぞれが独立勢力として中原に立っていた。楊令伝、乱世の第十一巻。第65回毎日出版文化賞特別賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 「退け。退き鉦」
    初めて岳飛はそう言った。しかし、遅い。「珪」の旗が、すぐそばにあった。
    それからどうしたか、わからない。駆けに駆けた。追撃が熄んだ時、一万騎は七千に減っていた。
    そのまま隆徳府の軍営に駆け込んだ。馬を降り、顔をあげて営舎に入り、ひとりになると膝を折った。床に額を叩きつけた。流れた血が、視界を塞ぐ。(略)
    「会議を開く。敗因について、俺が説明する」
    「そこまでしなくても」
    「いや、俺の誤りで負けた場合は、それは説明すべきだ」
    徐史は、迷っているようだった。岳飛は、大声で従者を呼んだ。
    隆徳府の軍営にいた将校は、全員集められた。岳飛は出動し、斥候を出したところから説明を始めた。壁に大きな紙を貼り、両軍の動きを、筆で書き込んでいった。
    質問は、幾つか出た。その時、その時の心の動きまで、岳飛はできうる限り説明した。そうしながら、負けるのは当然だった、とまた思った。蕭珪材の動きには、気負いというものがまったくない。自然体で、ただ前に出てきている。だから、どうにでも動ける余裕があったのだ。
    勝つためにどうすべきだったのか、ということも話した。
    岳飛が話している間、軻輔はただ腕を組んで、黙って聞いていた。(208p)

    十一巻目に至り、かすりもしなかった岳飛の実力は、少しだけ楊令軍に近づく。しかし、あと四巻しか無いのだ。これがどうやって、楊令伝から岳飛伝に移ることが出来るというのだろうか。これからの展開が、岳飛に限っていえば、全く読めない。

    楊令の国造りは、とりあえず順調だ。経済的基盤は何とか出来た。あと、何が必要なのか。

  • 何となく今回も仄々とした展開です。

    梁山泊は交易を本格化させ、内政安泰で税金が安い!軍は若返りつつ、老人達も国の為に働く。
    正に理想的な国家です。

    南の方では李富が暗躍

    中原では岳飛がメキメキと力をつける

    北の金では何やら波乱がありそうな感じもします


    何れにしても嵐の前の静けさか!

  • 20代の若者が国を亡くし、国を憂い、軍閥を作り、国家とは何かを考える、民の租税を安くしようと交易を試みる、自らも家族を持つ。この物語はどこまで漢を試すのか

  • 梁山泊の収入の要 西域との交易の道が拓かれた。
    金は南宋を攻めるが未だ討つには至らない。
    旧宗領では軍閥が力をましていた。
    軍閥の一つ岳飛が率いる岳家軍が梁山泊の牧を襲い交戦状態になる。

    乱世は終わりをみせそうにない。

  • 独立したものの、未だに国の基盤が固まらない金。
    皇帝と名乗るものはいるものの、実態の殆どない南宋。
    その間で、着実に国の形を整えていく梁山泊。
    一見すると梁山泊の一人勝ちのように見えるが、だからこその陥穽も見え始めてきた。

    岳飛や張俊は未だに自分の治める土地のありようについて、悩みながら試行錯誤しているが、梁山泊はある程度人材もそろっているがゆえに、ちょっと出来すぎなところがあって面白くないなーと思い始めたところで、岳飛の一手。
    青蓮寺も動き始めて、次はどうなる!?

  • 梁山泊の国としての整備、西域への開拓、
    秦容の大物ぶり、成長躍動ぶりが快く描かれている
    特に岳家軍と梁山泊軍の戦闘での秦容の存在感がよかった。
    岳飛の苦悩や負けを認める潔さも人間味がありよかった

  • 梁山泊は交易の道を完成させ、国としての形を確立。
    そして岳飛は梁山泊に宣戦布告。
    とうとう岳飛対楊令戦が始まる。

  • 3.9

    やっぱり精強な軍同士の戦いはおもしろい。無条件で昂る。どういう風に第三部に繋がっていくのがなかなか読めないな。

  • 解説:吉田伸子
    地好の光◆地闊の光◆天暴の夢◆地微の光◆天異の夢

    著者:北方謙三(1947-、唐津市、小説家)

  • 水滸伝に引き続き、一気読み。
    単なる国をかけた闘争を描くだけでなく、『志』という不確かなものに戸惑いつつも、前進する男たちの生きざまが面白い。壮大なストーリー展開の中で、たくさんの登場人物が出てくるが、それぞれが個性的で魅力的。よくもまー、これだけの人間それぞれにキャラを立たせられな。そして、そんな魅力的で思い入れもあるキャラが、次から次へと惜しげもなく死んでいくのが、なんとも切ない。最後の幕切れは、ウワーーっとなったし、物流による国の支配がどうなるのか気になってしょうがない。次の岳飛伝も読まないことには気が済まない。まんまと北方ワールドにどっぷりはまっちまいました。

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著者プロフィール

北方謙三

一九四七年、佐賀県唐津市に生まれる。七三年、中央大学法学部を卒業。八一年、ハードボイルド小説『弔鐘はるかなり』で注目を集め、八三年『眠りなき夜』で吉川英治文学新人賞、八五年『渇きの街』で日本推理作家協会賞を受賞。八九年『武王の門』で歴史小説にも進出、九一年に『破軍の星』で柴田錬三郎賞、二〇〇四年に『楊家将』で吉川英治文学賞など数々の受賞を誇る。一三年に紫綬褒章受章、一六年に「大水滸伝」シリーズ(全五十一巻)で菊池寛賞を受賞した。二〇年、旭日小綬章受章。『悪党の裔』『道誉なり』『絶海にあらず』『魂の沃野』など著書多数。

「2022年 『楠木正成(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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