桃源郷 下 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087477672

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  • 時は、12世紀。カラ=キタイの耶律大石、ルバイヤートを著したウマル・ハイヤーム、暗殺教団の長ハサン・サッバーフ、方?の乱の方?、水滸伝の宋江、みなすべてかくれマニであった。しかして、かくれマニの間から優れたものを選び出し、何事かをなさせしめんとす。東の方、日本から、遼から、南宋から、西の方へ旅立つものあり。/十年以上ぶりに再読。前回読んだ時は、ファンタジーすぎて、散漫な印象だったが、今回読んでみると、確かに話はそれほど動かず、のんびりゆったりとしたペースで。13世紀に、モンゴル帝国が東西をつなげた、という説に対し、12世紀に「かくれマニ」という設定で、日本、宋、遼、金、カラ=キタイ、大理、インド、セルジューク、アラムートに拠るイスマーイール派、ファーティマ朝、ムラービト朝までつながり、東は太宰府、燕京、西はコルドバまで、自由に行き来し、学び、商いする人々の姿を描く。そして、「マニ」という名を捨て、またマニに限らず、教えの名を捨て、「まことの教え」として世界中の人々に浸透することで、世界がひとつになれる、世界が平和になる、というところまで推し進めた考えが提示されているのでは、と思った。/アラムートの長老”空に飛び散ることばには、なんの重みもない。……風に吹かれるにまかせておけばよい。あとになにも残らない。”p.259上巻/ウマル・ハイヤームの遺訓[「大海原に一滴の水となって、力強く溶けこむべし。マニはすでにあなた方のなかで血肉となっている。もう二度とマニの名を思い出してはならぬ。人にたずねられたなら、スーフィーと答えよ。』p.118下巻/ハーシム「わしらは集まった。世界の隅々から。そして、いつかは世界の隅々にむかって、それぞれ散って行く。集まった証しに、わしらは何かを学び、そして何百年たったら、またおなじことをするだろう」p.131-132下巻/発端となった、陶淵明「桃花源記」には一度あたってみたいと思った。

  • ストーリーは平坦、、登場人物は画一的で魅力なし。それなのに非常に興味深い内容でした。
    舞台は金、宋、遼が3強の時代。遼が滅んで西に逃れ西遼、宋も追われて南宋となります。主人公は遼の西征準備として中近東に向かうのですが、本当は宗教問題が深く絡んでいました。作者によると、この頃の資料はあまり残っていないそうです。だから想像を盛り込めるという事ですが、成功したとは思えません。範囲が広すぎて複雑、しかも宗教と民族が重い。ただ中国、イスラム、ヨーロッパと歴史で区分していたのが、実は一つの大陸だっったと認識を改めさせられました。本当に、孤立してたのは日本だけだったのかも。
    何故元はあれほど広範囲の帝国となったのか、イスラム教とはどういうものか、今のイラク、イラン、アルカイダ、それにエルサレムの原点は。十字軍と日本軍の共通点などヒントをつかめます。ただ、小説としてあまり面白くはありません(爆)

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著者プロフィール

1924年-2015年。神戸市生まれ。大阪外国語大学印度語部を卒業し、終戦まで同校西南亜細亜語研究所助手を務める。61年、『枯草の根』によって江戸川乱歩賞を受賞し、作家活動に入る。その後、93年、朝日賞、95年には日本芸術院賞を受賞する。主な著書に『青玉獅子香炉』(直木賞)、『玉嶺よふたたび』『孔雀の道』(日本推理作家協会賞)、『実録アヘン戦争』(毎日出版文化賞)、『敦煌の旅』(大佛次郎賞)、『茶事遍路』(読売文学賞)、『諸葛孔明』(吉川英治文学賞)、『中国の歴史』(全15巻)などがある。

「2018年 『方壺園 ミステリ短篇傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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