- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087605877
作品紹介・あらすじ
6人もの妻を娶ったイングランド国王ヘンリー8世亡き後、王位を継いだエドワード6世が病弱だったゆえ、水面下では継承者争いが勃発。最初の王妃の娘メアリーと、二番目の王妃で悪名高きアン・ブーリンの娘エリザベスを中心とした醜い争いに、ダドリーをはじめとする貴族らが激しく絡む。女王に道化として仕えたハンナの目を通して語られる裏切りと愛憎の英国版"大奥"の物語、決定版。
感想・レビュー・書評
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映画化された「ブーリン家の姉妹」のシリーズ2作目。
主人公はアン・ブーリンと妹ではなく、次の世代の話。
メアリー女王と後のエリザベス女王という異母姉妹の激しいせめぎ合いを描きます。
主人公は、この二人に仕える娘ハンナ。
ユダヤ人であることを隠して暮らしている本屋の娘でした。
若きロバート・ダドリーと師のジョン・ディー博士に神託の才を見出され、道化として宮廷に上がることに。
当時、聖なる道化という、召使の序列から少しずれた存在が王族に可愛がられていたのですね。
ヘンリー8世亡き後、王位は姉妹の弟のエドワードへ。
少年王は病弱だったため、権力は宰相ダドリーに握られていました。
王位継承順位は、エドワードの次が長女のメアリーと決まっていたのですが。
宰相は他の人物を立てようとを画策、失敗に終わります。
ハンサムなロバート・ダドリーはこの宰相の息子で、エリザベスの幼馴染で後の有名な恋人ですが~とうぶんは謀反人の息子の汚名を着ることに。
メアリー女王のことは、あまりよく知りませんでした。
スペイン出身の最初の妃キャサリンの娘ですが、思えば気の毒な生い立ち。
王女として生まれ育ちながら、若い頃はずっと、父親の浮気と両親の離婚に苦しみ、弟が王位についた後もカトリックなので不遇だったのですから。
少女ハンナの目を通して、地味だが誇り高く善良で、危機に際して立派な振る舞いを示した様子が語られます。
このハンナ、エリザベスにも憧れてしまうんですけどね。
弟とも仲が良く、国民に人気のあったエリザベス。
すらっとして若々しく、人の気持ちを惹きつけるところがあったのです。
それは生き延びるための知恵でもあったのでしょうが‥
ハンナ自身は、ユダヤ人であることがバレたらと怯え、初恋のロバートに逆らえずスパイの役を務め、親の決めた婚約にも乗り気になれないまま。
宮廷の華やかな人々とその危機に次ぐ危機に、幻惑されたように日を送ることになります。
知らなかった事情や、年代の変化が丁寧に追われていて、さらにイングランドだけでなくユダヤ人の世界も描かれるので、非常に濃くてドラマチック!
2作目がこんなに面白いとは予想外でした。
続きも読むつもりです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
初めてフィリッパ・グレゴリーさんの本を読んだ。とても面白い。宗教改革に激しく揺れ、陰謀渦巻く16世紀半ばのイングランドの宮殿を描くのに、「聖なる道化」として自在に行き来できる立場の、少年の格好をした逃亡ユダヤ人少女を主人公に据えているのが上手い。ダドリー、ジョン・ディー、メアリー、エリザベス……彼らの素顔がみんな見えてすごいお得!
とはいえ、歴史小説は結末を変えられないから、読むのに辛いものがなくもない……。みんな幸福になってほしいのに。 -
キャサリンとメアリー、アンとエリザベス。対照的な二組の親子です。語り部である少女ハンナの目を通して見るメアリーとエリザベスは、やはり魅力的です。メアリーとエリザベスの今後に目が離せません。
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前王ヘンリーの崩御により、最初の王妃との間の娘、メアリー女王(かの有名なブラッディメアリー)が統治する時代。
天使の声が聞こえるとのことで「王の聖なる道化」として見出された本屋の娘。スペインより逃れてきたユダヤ人で異端者で、安全に生きることだけを考えていた。
彼女は心優しいメアリーとずる賢いエリザベスの間で生きるために苦悶する。
異端審問、宗教改革、ユダヤの民、身内の骨肉の王座争い-そんな感じの一冊でした。
まぁなんだろう・・・主人公をハンナにする必要はあったのか?時代背景を色々書きたかったのだろうが彼女の性格の強気さと裏腹の優柔不断もいいところ。
もう素直にメアリーかエリザベスを主人公にしたほうが良かった気がするな・・
架空の人物ということで仕方ないのか・・・歴史背景などは細かく臨場感があるが、主人公の設定がちょっと残念だったかも! -
16世紀ヘンリー8世亡き後のイングランド。
即位したエドワード6世が病弱だったため、メアリー王女とエリザベス王女の継承者争いの話。
宮廷の道化師として仕える主人公ハンナに語らせる形式となっている。
ハンナはメアリーとエリザベスの両者の板挟みとなりながら、自分自身の恋愛・結婚と葛藤しながら宮廷に仕え、王女たちの激しい争いを目の当たりにする。
道化師に語らせることで、客観的に争いの様子がわかり、読みやすいと感じた。
ネット上のあらすじにあるように、確かに一言でいえば「英国版大奥」もっともである。 -
前回から一世代、世代交代したお話。
少しだけペースダウンしている感じ。
スピードに乗り切れない。
下巻ではエリザベスが色々とやらかしそうで楽しみです! -
いきなりビッチなエリザベスでっくりですが。
母親がねぇ。そう考えると納得しちゃいそう。ま、それだとイメージに引きずられているだけなんですな。
お子様ハンナが、ふりまわされていく。
昔も今も、利用される女と利用する男って、同じパターンか。 -
*上下巻合わせての感想です。
舞台は一五五〇年代チューダー朝イングランド。異端狩りを逃れて故国スペインからロンドンへやってきたユダヤ人出版者の娘ハンナには、生まれ持っての神託の才があった。少年王エドワード六世の摂政ダドリーの息子ロバートにそこを見いだされ、ハンナは“聖なる道化”として宮廷に仕えることとなる。そこでは病弱な王のあとを継ぐべき二人の姉――ヘンリー八世と最初の王妃、スペイン王女キャサリンの娘メアリーと、新興貴族ブーリン家出身の二番目の妃アンとのあいだに生まれたエリザベス――をめぐる貴族たちの争いがすでに始まろうとしていた。やがて王位に就いたメアリーの治世は、三人の女全員にとって、愛憎と危険、困難に満ちたものとなるのだった。
という感じで『ブーリン家の姉妹2』です。前作主人公たちの子ども世代の物語。メアリーの誇り高さと頑固さも、エリザベスの魅力といやらしさも、確かにあの母にしてこの娘ありだなあと思います。
語り手ハンナはユダヤ人で道化とあって、イングランド宮廷において二重の意味で異物であり、他者なんですね。自立した女を目指しているという点でも逸脱している。前作『ブーリン家の姉妹』の語り手メアリーが宮廷文化のさなかで生まれ育ちながらその外に人生を見いだしていったのと対照的でおもしろいです。作中を通じてハンナの立場が流動的で、宮廷にも庶民の暮らしにも通じ、大陸と行き来しながら政争や戦争に巻き込まれたりと、動きの派手なヒストリカルロマンスのようでした。
登場人物でわたしが好きだったのはジョン・ディー博士(特に前半)と、道化のウィル・サマーズ。どちらも登場シーンが少なめだったのが残念ですけれど。
続いて第三弾『宮廷の愛人』も読む予定です。 -
前作品の続編!
前が良かっただけに期待は通常以上でした。
教科書では
メアリー=悪い人
エリザベス=良い人
みたいなニュアンスが感じられるけど、この本読んじゃうともう彼らを今まで通りには見られない。
愛憎劇も今まで通り、現代と変わらないドロドロしさ。
引き込まれること間違いなし!
ただ前作よりは評価下げます。
なぜか。
前作は、語り手の視点が良かった、と個人的に思う。
王妃の妹であり王の愛人。
凄く近いながらも、彼女の物語はちゃんとあって、しかしあくまででしゃばらない程度。
でも今回は?
ほとんど語り手の物語だった感が正直否めない。
私は歴史小説として手にとったのに、これじゃ意味がない、っていうか何の話だこれは。
霊能力みたいなものを持っている、という設定が、何となく話のリアリティを奪ってる。
つまり、安く仕上がってしまってない?ということ。
そりゃこの時代だから、予言とか天使とかあるのは分かる。
それが描かれたことが嫌なんじゃない。
ただ、視点をこの人にしてしまったのが何とも残念。
唯一の救いは彼女がユダヤ人だってこと。
リアルな迫害の恐怖を感じられた、と思う。
とにかく詰め込みすぎた結果全部が浅くなった、と感じさせられる一冊。
批判ばかりで失礼しました。 -
映画化もされた『ブーリン家の姉妹』の続編。というかアン・ブーリンの娘エリザベスと、アンが追い落としたキャサリン・オブ・アラゴンの娘メアリーとの王位継承と、カトリックとプロテスタントのせめぎあいを描いた物語。ハンナ・グリーンという、スペインの異端者狩に母親を火刑に処され逃れてきた人物を語り部にしています。ハンナは作者の創作上の人物ということでしたが、ハンナの設定が絶妙でした。とても面白かったです。