あのこは貴族

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087710175

感想・レビュー・書評

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  • よかった!すごくよかった!

    私も上京組なので、東京に憧れる気持ち、東京に出たらすべて解決するかのような夢見る思考が手に取るように分かる。
    そして、夢見ていた「東京」はどこにもなくて、東京に憧れる人たちによって作られる架空の「トーキョー」だと気付くところ、東京によってひどく傷つくこともあるところ、自分と階層が違うところにいる東京人を前にすると、自分がひどく地味で平凡で田舎者に感じることなど、時岡美紀と一緒に追体験するかのようだった。

    東京も田舎も実は同じで、お金持ちも田舎者も、みんな狭い世界で暮らしているだけなんだというのが目から鱗だった。
    あまりに東京を特別視していたことに、田舎を出てから20年以上経ってから気づいた。
    でもやっぱり、「トーキョー」が好きだし、引き続き東京で暮らしたいと思ってしまう。

    後半の美紀が熱く語っていたけど、女同士を分断させたり、結婚や家庭などの価値観に縛り付けたり、そういうのってやっぱり、男なんだ?!
    あーそうか、そうか。来世は男に産まれよう。

  • 映画がすごくよかったので読んでみた。山内さんの作品の中で一番いいんじゃないかな。全部読んでないけど。

    知らない世界を垣間見れてやけにリアルに感じる。知らないのに。映画では心の声が出ないから本を読んでみて華子はこんな人に辛辣なレビューしてたのかとか。美紀は意外に心持っていかれてたんだなぁって愛おしさが増した。

    青木さんは映画の中の方が魅力的だったな。
    読んでよかった。前向きになれる力強さがある本です。ドロドロしてなくてさっぱりしていて良い!

  • 最初に読んだ山内マリコが「選んだ孤独はよい孤独」だったから短編しか書かない作家さんなのかと思ってたら(1ページに満たない短編もあったし)普通に長編だった。いい意味でびっくり。

    華子いいなー!松濤で病院やってる家に生まれておばあちゃまの家は広尾にあって正月には帝国ホテルでお食事会して写真館で記念撮影するおうち!貴族ー!
    この世の不公平がどうこうとかすっとばしてマジで羨ましい。来世はこういう家に生まれてえ~!とかのんきに考えてたのに終盤怒涛のコンプレックス披露で「お、おうそうだよな、いろいろあるよな…」と反省してしまった。
    私は結構自分のだめなところを生い立ちのせいにしてしまう癖があるんだけど、そういう言い訳の余地が一個もないのそれはそれで良くない点が完全に自責になるからしんどいんだなぁ。

    一方でそんな華子と同じ男に引っかかってる美紀、努力の女。まあ私からしたら美紀も割と「上」の住人なんだけど、さすがに貴族よりは共感できる点が多いから美紀に肩入れしてしまいたくなる。でも青木と結婚するの、不幸になるのが目に見えてるしなー…
    興信所で素行調査するような家、ラウンジの過去がなくても庶民は無理そう。敷居跨がせてくれなさそう。青木は青木で別に家族を敵に回しても味方になってくれるタイプの男じゃないし。

    そして相楽さん、華子に美紀のことタレこんできたあたりでゴシップ期待してる有閑貴族かと思ったらちゃんと華子のことを心配してる良い友達でこれもまたごめん…
    結婚絡みに口出しするのよくないのわかってるけど結婚したら余計口出せなくなる、出せるうちに自分に言えることは言う!だって幸せになってほしいから!痺れた、そりゃ美紀にも響いちゃう。
    結婚式での「女同士の義理」の逆襲、波風立てないのに青木へのダメージ割と高そうでスカッとジャパン。

    まあ青木と華子の結婚は結局うまくいかなくて割と相楽さんが心配した通りの結果になってしまったわけだけど、ラストの華子めっちゃかっこいいな。
    こんな女を手放した青木はアホだけど(正直政治家の嫁にすごい向いてない!?)青木との結婚~離婚を経ないとこうはならなかったし、最初からこの華子だったら別に青木と結婚しなかったと思うのでめぐりあわせって難しい。

  • 東京の裕福な家庭で育った次女の華子は結婚に焦っていた。

    知り合いや父のつてを借り、片っ端からお見合いをするものの、どうも自分に合う人に巡り合わず
    意気消沈していた矢先に出会ったのは、幸一郎だった。

    幸一郎は端正な顔立ちと華子の実家よりも裕福な家庭で物腰もスマートで、
    これ以上の人はいないとスピード婚したものの、幸一郎は仕事の忙しさで華子のことは家に置き去り状態だった。

    更に結婚前に知ることになったのは、
    幸一郎には地方出身の都合のいい女友達がいたことがわかり
    彼にとって華子は実家の体裁と自身の出世を守るための都合のいい結婚相手だということに気づかされた華子の決断。

    地方出身で裕福な人たちの仲間には決して入ることはできないと東京にきて気づかされた美紀は
    それでも雑草魂で生活している彼女の気持ち。

    親ガチャじゃないけれど
    生まれた時から人生っていうのは
    もしかしたらある程度決められているって
    あながち言い過ぎでもないのかなあ、と。

    私も上層階層の人たちとは縁のない凡人人生だなあ。

  • 失恋した時の自分に読ませてあげたい。
    結婚に焦っていた時の自分にも読ませてあげたい。
    もっと早くに出会いたかった一冊。

    結婚は人生のゴールではないし、そこからがスタートだったりすることを教えてくれる一冊。


    心に残った文
    本文抜粋
    「それがわたしにとっては、いちばんのコンプレックスなんです。たまたま恵まれた家に生まれただけで、ベルトコンベアー式にぬくぬく生きてきて、苦労も挫折もなくて、だから人生に、何にも語るべきことがない。学歴も職歴も、全部親がしてくれたことで、自分はなにもしてない。だから釣り書の見栄えはよくても、実際はスカスカなんです。自分の力で何かを得たこともない、成し遂げたこともない。それに臆病だからテリトリーの外に出ようともしない。人生を切り拓く力もない。取り柄もないし、仕事も好きじゃないし、好きじゃない仕事を続ける根性もない。本当になんにもないんです。だから男の人にもすぐに愛想を尽かされてきました。たぶんわたしが、人としてつまらないから。〜

  • 東京生まれ東京育ちのお嬢様と、上京してきた女性が、一人の男性を巡って出会う話。
    …と聞けば、女の修羅場を想像するけれど、蓋を開けると「男VS女」の話で清々しかった!
    華子と美紀、そして二人の間を取り持った相楽さんの友情が、気持ちいいくらい正直で対等なところが良い。家柄とか階級の違いに、お互い驚く場面もあるけれど、それさえ超えられる女の友情。
    面白かったー!

  •  上京や留学経験者にはささる物語なのではないかと思います。
     生まれも育ちも東京の典型的お嬢様・華子と進学上京してきた苦労人・美紀の人生が東京のボンボン・幸一郎をきっかけに交差する話。
     別に男をめぐってドロドロするわけでも階級社会の光と闇を描写するわけでもありません。
     自分の当たり前を形成した環境を抜け出して初めて自分のアイデンティティが浮き彫りになるのではないかと思いました。
     今まで足場にしてきた当たり前がなくなってしまったとき、次に足場にする価値観や技能を見つけなければならなくて、それが挫折や自立と呼ばれるものなのかなと感じました。
     ラストシーンはこれ以上のものは思いつきません。

  • 階層が違えば常識や考え方も変わるし、知らない世界を覗き見できた気分

  • 女の敵は女はまやかし 女同士の義理っていいな

  • 東京行ったことないけど、こんな感じになのかな…
    どきどき

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著者プロフィール

山内マリコ(やまうち・まりこ):1980年富山県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。2008年「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞し、12年『ここは退屈迎えに来て』でデビュー。主な著書に、『アズミ・ハルコは行方不明』『あのこは貴族』『選んだ孤独はよい孤独』『一心同体だった』『すべてのことはメッセージ小説ユーミン』などがある。『買い物とわたし お伊勢丹より愛をこめて』『山内マリコの美術館はひとりで行く派展』『The Young Women’s Handbook~女の子、どう生きる?~』など、エッセイも多く執筆。

「2024年 『結婚とわたし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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