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- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087710458
感想・レビュー・書評
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初出 2016年の「小説すばる」
さすが諸田玲子の書く平安もの。最後はミステリーになっていて、一気に読まされた。歴史好きでない人にはやや取っつきにくいかも知れないが。
恋多き恋の歌詠み和泉式部の、実は平安貴族世界のしがらみ、権謀術数に翻弄されていた人生と心情を丁寧にすくい取っていて、藤原道長の権力欲よって恋や夫婦関係まで翻弄される人々を描こうとした作者の意図が読み取れる。
久しぶりに学生時代に注記を書き込んだ影印本の「和泉式部日記」を引っ張り出してながめたが、本書中では「和泉式部物語」とされていて新しいイメージになっている。
赤染衛門の娘で和泉式部を慕っていた江侍従が、和泉式部の死後思い出をたどるストーリーのあいだに、リアルタイムの和泉式部のストーリーが挟まれる構成になっていて、どういう展開になるのかと思っていたら、最後に死の謎に迫る意外な展開になった。お見事。
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自分の生きる道が、自分以外の所で曲げられ変えられてしまう、宮中という人的広さを持つ場所と。
その中で、自分の持つ和歌という力で成り立ち、救われていこうとする和泉式部。
二人の皇太子との密会が、まさかあんな感情で彩られていたとは思わなかったけれど。
まぁ……自分の預かり知らぬ所から、最後は充分に浮かれ女であったことよ。
鬼笛大将とのクライマックスは、小説らしすぎて、反対に味わいが薄くなってしまった。