生のみ生のままで 下

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087711899

作品紹介・あらすじ

「どんな場所も、あなたといれば日向だ」

互いに男の恋人がいるのに、止めようもなく惹かれあう逢衣(あい)と彩夏(さいか)。
女性同士、心と身体のおもむくままに求め合い、二人は一緒に暮らし始めた。芸能活動をしていた彩夏の人気に火が付き、仕事も恋も順調に回り始めた矢先、思わぬ試練が彼女たちを襲う。切ない決断を迫られ、二人が選んだ道は……。

今まで裸でいても、私は全然裸じゃなかった。常識も世間体も意識から鮮やかに取り払い、一糸纏わぬ姿で抱き合えば、こんなにも身体が軽い――。
女性同士のひたむきで情熱的な恋を描いた、綿矢りさの衝撃作!


【著者プロフィール】
綿矢りさ(わたや・りさ)
1984年京都府生まれ。早稲田大学教育学部卒業。2001年『インストール』で第38回文藝賞を受賞しデビュー。2004年『蹴りたい背中』で第130回芥川賞を受賞。2012年『かわいそうだね?』で第6回大江健三郎賞を受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 色々考えさせられる話でした。理解してもらえず、まだまだ生きづらい世の中なんだと思います。

    二人が悩み、葛藤して考え抜いた答えなので応援したいです。最後のシーンは感動しました。どうぞ、末永くお幸せに。

    初めて読んだ作家さんだったので、どういう感じなんだろうと探りながら読みました。とても、描写というか言葉が綺麗だなと思いました。

  • いろいろな意見があるのだろうが、極めて普遍的な恋愛小説だと思った。挫折や葛藤を経験しつつ障害を乗り越えて逢衣と彩夏の姿は美しく感動的で、リアルに胸に響いてきた。二人を心から応援したくなった。

    性別関係なく、この人だから好きになる、そんな恋愛もある。
    同性愛は特殊ではない。性は多様なもの。様々な幸せの形がある。逢衣と彩夏のようなカップルが、無駄な偏見を傷つくことなく幸せに過ごせるような、そんな社会になっていかないと。

    (p104)逢衣の言葉
    ー どれだけ真面目に、どれだけ世間の気に入るように生きたって、“普通“に必要な条件は次から次へと出てきて、絶対に追いつけない。

    誰しも、自らが「普通」でいることは非常に困難なはず。なのになぜ人には「普通」でいることを強要するのだろう。

    (p184)
    - 骨や灰や塵になる、それまでの短いひととき、なんで自分を、もしくは誰かを、むげに攻撃する必要があるだろうか。

    ほんとにそう。了見の狭い人こそ、自分が理解できないことを嘲笑ったり、怖がって攻撃したりする。

    ありのままを受け止める勇気を持ちたい。

    綿矢りささんの小説は読みやすい。まるで呼吸をするかのように当たり前に自然に読ませて、心に様々なものを置いていく感じ。

    あと、登場する音楽が良かった。
    仲が深まっていくカラオケでの小田和正の「ラブ・ストーリーは突然に」(僕ら世代にとってはベタ過ぎて笑)とか、彩夏の回復途上で逢衣が聴いているジェイソン・ムラーズとコルビー・キャレイの切なく優しいデュエット曲「Lucky」とか、センスが等身大でニヤリとさせた。


    幅広く読まれて欲しい本。

  • 上巻最後で決定的な写真を撮られた二人。彩夏は世間に公表して引退の道を選ぼうとしたが彼女の夢を知っていた逢衣は離れ離れになる事を選ぶ。それから7年後、彩夏の病気を切っ掛けに二人は再開を果たすが…。お互いを想っているが故の別れで生じたとはいえ彩夏の拗らせ具合にしばらくいらいらする。献身的な逢衣の想いは伝わらないのかも、と思っていたけどある意味さっくり伝わって実はちょっと拍子抜け。一番険しい山を越えた二人の揺るぎないラブラブ振りを見せつけられながら幕が閉じたので読後感は爽やか。別れで終わると想像していたもので。逢衣と彩夏が特殊なのではなく運命の人がお互い女性だっただけ、なスタンスだったのはとても素敵だと思った。

  • う~ん、下巻を圧縮して上巻と合わせて一冊で良かったかも...。ステレオタイプな方々との展開は語らずとも理解できる範疇であるし、紙面を割く必要があったのか...。虹色を進める逢衣の申し出を断り単色を選ぶ彩夏の件が、昨今のLGBTQのラベル化を拒絶する。
    これでやっと著者作品を一周しました。二周目、三周目でまた違った感覚を味わえるかもしれないと思い、本棚にストックしておきます。

  • 今まで読んだ著者の作者の中でもものすんごいハッピーエンド。現実はこう上手くいかないかもしれない。けれど良いじゃないか。私はハッピーエンドが大好きなのだから。
    「どれだけ真面目にどれだけ世間の気にいるように生きたって普通に必要な条件は次から次へと出てきて絶対に追いつけない」という逢衣の台詞が印象深い。

  • ”今まで事務所が彩夏にかけてきたお金をすべて返済するほど稼いだら、義務を果たしたら連絡をください。それまで一切彩夏とは会わないし連絡も取りません”
    彩夏の今後の活躍のことを考えて、彼女と会わない約束をした逢衣。
    何の準備もないまま、二人は引き離されてしまった。


    突然の別れから七年、平日は仕事を頑張り、土曜日は身体を鍛える生活を続けた逢衣。メディアで彩夏の大活躍を眺めることが彼女の生きがいだったが、彩夏が入院して仕事を引退したことを知り、会いたいと手紙を送る。

    全身を襲う痛みに苦しみ続け、薬の副作用で外見も変わってしまった彩夏は再会を拒むが、逢衣は彩夏を全力で看病し始める。

    逢衣はかつて一緒に暮らしたマンションを借り、彩夏の介護を続けた。最初は心を閉ざしていた彩夏も、病状がよくなるにつれて以前の明るさを取り戻し、身体の交流でついに二人は七年の歳月を埋める。

    回復した彩夏は仕事に復帰し、事務所に二人の関係を認めさせた。逢衣は、自分の娘の幸せを想って彩夏との付き合いに反対する母親の感情も”愛”だと悟る。彩夏への気持ちも、家族への気持ちも同じ愛だった。

    逢衣と彩夏は自然の神様に愛を誓う。
    お互いに相手を妻として、一生愛する、と。

    ---------------------------------------------

    P168の彩夏のセリフがすべてを物語っていると思うので引用。

    ”私を強烈に嫌いな人もいれば、強烈に好きな人もいる、どうでもいいと思っている人もいる。私のことを嫌いな人が間違ってるとか悪い人だとかは思わないよ、でもそういう人たちと向かい合うには人生は短すぎる。私たちのことだって同じ、色んなことを言う人たちがいるかもしれないけど、理解のある人たちを見つけて、その人たちと付き合っていけば、ちゃんとこの世界でも息を吸えるよ”

    人間関係におけるすべての答えがこれだと思う。
    自分を理解してくれる人たちと付き合う時間こそが人生であって、中傷してきたり、足を引っ張る人の相手をしている時間はない。

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    ”女性同士の恋愛!”って宣伝がやたら踊っていたけど、女だから相手を好きになったんじゃなくて、人間として相手を愛し、愛されたって話だから、”女性同士!”というよりも”性別を超えた愛!”っていうフレーズのほうがしっくりくるような気もする。
    まあ、”女性同士!”って書いたほうがインパクトあるし、わかりやすいからいいけど。
    それにしてもエッチな性描写がたくさんあってドキドキした。電車のなかで読まなくてよかった。この小説、本当に映像化するべきだなあ。


    七年経ってもお互いを想い合っていた二人の関係は最高だった。再び二人の心が通い出す直前の印象的な場面で、スーパーカーの『Lucky』が登場してすごく嬉しかった。大好きな曲。
    男女が温かい声で歌うその曲は、もの哀しい別れの曲なのかもしれないし、再会を願う明るい曲なのかもしれない。

    スーパーカー『Lucky』
    https://www.youtube.com/watch?v=XeDwoxC_Ug4

  • 普通ガール・ミーツ・芸能人ガール、と書くと
    とても甘やかな物語に思えるが、本作品は
    鞘入りナイフガール・ミーツ・剝き出しナイフガール
    (…並ぶと二匹のドーベルマンのよう、と作中で
    表現されています。)

    2組のカップルが偶然、空いているホテルで出会い、
    女性同士が惹かれていく、という元々は異性を愛する
    女性の同性愛の物語。

    綿矢さん初読ということで、おずおずと読み始めました。
    さすがに「さびしさは鳴る」(蹴りたい背中)と
    綴った著者だけあって文章には唸らされる。

    でも…引き込まれない、弾かれる、私(読み手)に
    委ねられていないと感じる。

    性交描写も会話もすべて赤裸々、全部全部見せないと、
    言ってしまわないといけないのか?というぐらい
    さらけ出して「秘」と「余白」がない。

    この登場人物が言ってしまわないと気が済まない
    タイプだからなのか、綿矢さんの作風なのか…。

    この作品は綿矢さんとしては珍しい内容だそうなので
    もう1作読んでみようかな?

  • すらすらと上巻を読み終えて下巻へ。この人だ!と惹かれてしまうのは、女性同士でも成り立つ。そこまでは上手く行くけど継続はなかなか難しい。
    二人が一度離れてしまうけど、また一緒になれてよかった。
    そして、恋愛に対する想いが強いだけでなく、二人がそれぞれ仕事にむかって努力していたり外見を磨いたりしているところにも好感がもてる。精神的にも強い二人だなぁと思った。

  •  上巻も勿論読んだが、チェックし忘れた。
    異性だろうが同性だろうが自由に堂々と愛し合える世の中になったらいい。
     二人の葛藤と苦難が読んでいて苦しくなった。
    家庭環境に恵まれて来なかった彩佳の心の奥底の孤独、7年距離を起きなかなか素直になれない彩佳の藍衣に対する拒絶、煌びやかな世界での後輩からの裏切り、そして彩佳の藍衣に対する最初は強引な後優しい愛情、なんだか守ってあげたくなってしまった。藍衣もそんな気持ちだったのかな。
     この作者の良いところはいつも読後感が良いこと。サラッとしていてそれぞれ皆事情があるが色々込みでまあ何とかやっていきましょう!というライトな気持ちにさせられる。

  • とても気があって、一緒にいて楽しくて、見た目がタイプ(同性においても好きな見た目はある)であれば、同性を好きになることは、あるよね、
    とか思いながら、上巻の恋愛が盛り上がってくるところまでは、問題なく、読んでたんですが、下巻に入って試練が立ちはだかってくるあたりから、どうも私の好みに合わなくてなってきました…。
    なぜ、同性を好きになったのか、とか、彼女のどこを好きなのか、とか、そういう説明が多い…。別に、説明いらない…。

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著者プロフィール

小説家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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