- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087712032
作品紹介・あらすじ
家族のあれこれ知っていますか。父が、母が、子が、祖母が。4世帯家族の混線連作小説集。
感想・レビュー・書評
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新元号が令和に決まってからこの平成大家族を読み終えた。
いろいろあってそれなりに生活しているのが家族だなと思った。
令和になっても家族いろいろでしょうね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
父母、祖母、長男、長女一家、次女の8人の大家族。
それぞれにいろいろな問題がある。
夫が事業に失敗し、自己破産し出戻った長女、不妊が原因で離婚に至った直後に別の人の子を身ごもった次女、ひきこもりの長男、祖母は軽度なようだか認知症を患い、家族のゴタゴタに不満を抱える母、息子との関係修復がままならず我関せずを決め込む父。
どこかにありそうな話のオンパレード。
しかし、著者の筆にかかれば、クスッと笑える家族小説となり、案外幸せだよねと思わされます。
どんなトラブルも、解決しない事はない。
緋田家の未来も明るいものと思える終わり方が良かったです。 -
事情により一時的に三世代同居となった大家族の、それぞれの物語を描いた短編集。
破産した夫とともに帰ってきた長女、離婚したうえに年下の男の子どもを身ごもって帰ってきた次女、ひきこもりの長男。
各自の悩みを、ちょっと突き放したような、ユーモアのある語り口で書いていく。改行と句読点を使った、独特のリズム。
「こうして、緋田家の家族の肖像の、最後のピースがおさまるところにおさまった。/かに見えた。が。/東京の桜もほころび始め、しかし何かが起こりそうな花冷えの夜、深い静寂を破って、戦争は勃発した。/母屋二階の、トイレにおいてである。(p27)」
「どうしてそんなことになったのか。/という質問は、自分でも何度も発するのだけれども、明確な答えはない。(p151)」
作品が発表されたのは2006-2007年。時代背景が特に強調して描き込まれている訳ではないが、やはり20年近く前という時の流れは感じられる。
たとえば大陸引き揚げの記憶を明瞭に持つ92歳の祖母の存在。あるいはひきこもりの息子が結婚して家を出たり、シングルマザーになろうとする次女の決断にも、お話としてのハッピーエンドというにとどまらず、どこか明るさがある。令和に同じ決断をする話なら、もっと絶望感が漂うかもしれない。 -
どん底のように見えても、人間は強かだ。
壊れかけた様に見えても、そこには必ず希望がある。
そう思わせてくれる一冊。 -
中島京子の「やさしい猫」を読み、別の著作をと読み始めました。
緋田家の優柔不断な「家長の父親と長男、さらに孫」の男性達、勝ち気で行動的な長女、次女と少し間の抜けた母親、ボケ始めた祖母。てんやわんやの物語りが始まるも最後は、お後も宜しいような結末を迎える。
深刻な始まりから幸せを予感する結末に悪く言えば軽さを感じつつもあっと言う間に読み終えました。 -
住まい、居場所、という単位の中での悲喜こもごもを描くのがとても上手い作家。出戻り、引きこもり、介護、思春期に老後に姉妹弟のくい違い…どれをとっても決して絵空ごとでは無く、どの家庭にも起こりうるダークな現実をユーモアを交えつつ生き生きと描いている。登場する家族の10代〜90代までのどの人物にも感情移入出来るのは作者の冴え渡る筆致によるものか。さすが中島京子!
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平成が遠くなる前に読んでおこうと思って手にとった本。
それぞれの事情が重なって大家族になった緋田家のお話。
「長いお別れ」と同じように、章ごとに語り手が移っていくタイプの展開で、色んな視点で家族を見れて面白かった。
「長いお別れ」でもそうだったけど、中島さんの描く家族って理想的とかではないけど、そこはかとない結束力を感じてすきだなあ。
家族の中でも白黒つけられないことはたくさんあって、それを無理に突き詰めるよりグレーなまま一緒にいることを選ぶような、見えにくい優しさがあるというか。
ドラマ化したら誰に演じてほしいか、というの特にないんだけど、藤代さんだけ完全に「告白」の頃の橋本愛のイメージで読みました。 -
最初のうちは、龍太郎の視点に同調して、身勝手な家族にイライラする気持ちがあったけど、それぞれの心情がわかるとそうでもなくなる。家族ってそういうものだよなーってすごく実感した。
良かった。 -
装丁/大久保伸子 装画/曽根愛
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この平成時代にこれほどの大家族はなかなかいないだろうな。
結婚して出ていった娘が戻ってきたり(これはありそう)、また出ていったり。引きこもりの息子が出てくるようになったり。これだけ人数がいれば、毎日いろんなことがあって飽きることがないだろうなぁ。羨ましいわ。
人数が多いと意見の食い違いや衝突もあるだろうけど、それも何もないよりは刺激的ということで(笑)。 -
並行して「老後破産」のNHK特集を見ていたら、義母と静かに老後の暮らしていたら、収入のない30代後半の息子と孫2人が戻ってきて、急に6人家族になって、義母は認知症がひどくなってることもあって家計は赤字となる という話をしていた。
この本も同じ趣旨ですね。娘二人が旦那の失業、娘本人の離婚で4人戻ってくる。すでに長男は引きこもりだし、祖母は認知症という設定。鋭く今の状況を映してる内容だ。昭和の大家族と違って平成の大家族は現代の不幸ここに極めり、ライフラインとしての家族だ。
人称を変え、その一人一人の生活ぶり、心情を丁寧に描いている。個人的にこういう内容のものを「日常生活ディテイルもの」と呼んでいる。どこまで日常をリアルに切実にディテイル豊かに描写できるかが腕の見せどころだ。
ヘビーな状況なんだが少しオフビート、脱力系の展開が面白い。まぁこういう展開の仕方も一つのパターンではあるが。こんな状況だってそれなりに希望はあるのさというコンセプトだ。引きこもりの人が結婚にこぎつけるなんて少し無理があるとこなんだろうが、日常生活ディテイルものとしての範疇を壊すことはなく肯定される感じが心地よい。あー、そういう意味ではうまく夢物語を語っているのかもしれない。またこれからの作品が楽しみな作家が増えた。 -
軽い物語かと思ったが意外と重いというか深いというか、タケおばあさんの思い出話の手をつないでいた話とか、確かにあれを聞いていたら「しーーん」となってしまうだろうなと思う。家族ってハナレグミの歌のように、友達のようでいて他人のように遠い。不思議な関係。
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中島京子も不思議な作家。現代っ子なのにいろんな時代の登場人物を描く。これはある家族。それぞれに問題を抱えながら成長し結果、互いに支えになる。過程が面白い。
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面白かった。
どの話もどこかしら「あるある、わかる〜」な部分があって、楽しめた。
大きな事件は起こらないが(最初からみんなトラブルの塊みたいなもんだから)ラストは全員落ち着くべきところに落ち着いて、良かったなと思う。 -
面白かった。
決して仲の良い大家族のお話ではない。むしろ、平均よりもゴタゴタの多い家族だ。だが、読後には「家族っていいなぁ〜」という印象が残る。
「ココ・マッカリーナの机」で感銘を受けた作家さん。軽くなく、重くもなく、読み応えがあります。全作読んでいきたい。 -
淡々としているようで、チクリと軽く毒もある。
いずれにしても穏やかな気持ちで読めてよかった。
最後のお父さん(龍太郎)の一念発起のくだりは、プっと小さく噴き出してしまった。 -
老々介護、自己破産、シングルマザー、引き篭もり、いじめ……現代社会が抱える問題がすべて揃った世帯を舞台に展開されるストーリー。
さぞや悲惨な内容になるのかと思いきや、淡々とそれぞれの登場人物の日常が進んでいく。お互いに噛み合っていないのに、なぜが平穏に物語は進み、読み終わったあとは、読者も不思議にハッピーな気分になる。
これは一旦最初に問題だらけの世帯を提示してからストーリーが始まるという作家の巧さもあるのだけど、一番の特徴は、この一家の世帯主の緋田龍太郎の存在。この人物の描かれ方が、この物語のツボと見た。
どういう風に描かれているかは、読んでのお楽しみ。
ラストシーンを読み終わり、タイトルの「平成大家族」の持つ意味にニヤリとさせられたのは、私だけではあるまい。 -
四世代同居の大家族物というと『東京バンドワゴン』を彷彿とさせるが、こちらの緋田家は、リストラ、自己破産、シングルマザー、引きこもり、痴呆老人介護となかなかヘビーだ。それでも家族皆どこか飄々としている。バンドワゴンと違って普段の食事もばらばらだったりするが、その姿がむしろ現代的でリアルだと思った。印象的だったのは、「冬眠明け」の中で克郎とカヤノが夜の公園で鍋焼きうどんを作りながら会話する場面。二人が微笑ましくてかわいい。表紙の杓文字もこの家族らしさが出てて良かった。
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老夫婦とその息子(何年も引きこもり)、
認知症のおばあちゃんが住む家に、
「嫁いでやれやれ」と思っていた娘達が、
一人は亭主が事業に失敗して自己破産して、
他感な年頃の男の子とともに、
もう一人は離婚して不義の子を宿して転がり込んでくる・・・
いじめ、お受験、不妊、引きこもり、シンママ、
ネットバブル(崩壊後)、高齢者介護など、
平成の世の中が抱える様々な問題を描いた
それぞれのエピソードは、文句なくおもしろい。
そして、中島さんの文章の軽妙なこと!
時には激しく同感し、時にはくすくす笑いながら、
一気に読了してしまいました。
「物語が結婚で終わったからといって、
その先がめでたしめでだしであると信じている人は今日、
どこの世界に行ってもいないでしょう。」
ということなので、
存在感のない家長と、肉食系女子vs草食系男子の物語は
続編があるのかも、しれません? -
認知症の祖母。
ひきこもりの30歳の長男。
旦那の事業が失敗し、自己破産し、旦那と子供を連れて実家に逃げ込んできた長女。
離婚し、しかも別の男性との子供を孕んで出戻ってきた次女。
かなりめちゃくちゃな構成の大家族。
父母はいたって真面目な人間で、まともに子育てしてきたつもりが、子どもたちは成人し、かなりいい大人になっているというのに親に頼りっきり。
とても悲惨な家族かというと、それがそうでもなく。
なんだか温かみがあり、そして現実ってこんなもんだなと思える。
ただ、現実とは違うところは最後は皆なんだかんだいってハッピーになれるところ。
ほんとのほんとの現実はこううまくはいかないでしょ。
でも、ハッピーになれるのを読むと、こちらも気持が明るくなれる。
それが小説のいいところ。
この本、けっこうすきだな。 -
さらりと読めて、おもしろい。
あっさりとした感じが、いい。 -
家族それぞれの視点からストーリーが構成されているのが物語の重層的な魅力を引き出してる。
なんだか癒される。 -
家族みんなが主人公!
カヤノちゃん最高! -
まぁこれが普通のうちなんでしょうかね。
気楽に読み、あとに残らない本でした。
こういう本て何のために書くんだろうね???? -
あまり期待しないで読んだがおもしろかった。社会の負け組の集まりのような家族だが、実は意外とたくましい。
気の強い女性陣だけでなく、(情けなく見えた)男性陣もなかなかものもではないか。
視点が称事に違う人物に移っていくので、今まで知らなかった事実や気持ちが次々と明らかになっていき、飽きさせない。
読後感も良い。 -
ほのぼの系。ドキドキ感はないけど、なんとなく続きが気になってしまう。
最後の締め方がよかったな。 -
なんだか 癒される
今 はまってます