マスカレード・ホテル

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087714142

感想・レビュー・書評

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  • 重厚なハードカバーの表紙。
    超高級ホテルで起きる殺人事件。
    なんといっても著者が今や不動の人気を誇る東野圭吾。

    これで期待するなという方が難しい。
    これは絶対にハードカバーで読まなければと、鼻息荒く本作を購入!!


    が……しかし。

    読み進めれば読み進めるほど

    あれ……?
    おかしいな……
    私の感性が変わってしまったのか?

    いや、面白いんだよ。面白いのは面白い。
    好きな人はすごく好きだと思う。

    高級ホテルに関する取材も相当徹底的にされたんだろうなあと想像できる。

    登場人物も魅力的で、正義感溢れる少々血気盛んなイケメン刑事と、男性顔負けの優秀な美人ホテルウーマンとのコンビが共に事件に立ち向かうというなんともミステリ好き読者の心をくすぐるような設定。

    それなのに。
    このモヤ~っとした感じはどうしたことでしょう。

    私はこの美人ホテルウーマンが好きになれなかった。
    率直に言えば嫌い。

    山岸尚美さん。
    気が強く、自分の意思がはっきりしていて
    そりゃあもうお客様のことを第一に考えて
    一歩先二歩先三歩先の展開まで早く読み
    自身の多忙な業務に加えて、警察の捜査でも
    その頭の良さを生かして難事件を解決する手助けをして大活躍、
    もうほんと文句のつけようのないヒロイン。

    美しくて聡明で仕事ができて思慮深くていじらしくて、しかも女性的な儚さ、可憐さのようなものもあって男女共に好かれるようなキャラクター。ていうか、好かれないとおかしいよね?山岸尚美を嫌いになる人なんているわけがないよね、ね?という感じ。
    (私の勝手すぎるイメージですが)

    一方新田さんも、男らしくて警察官としての責任感に満ちており、事件解決のためにホテルマンに完璧に成りすまし、捜査にも全力をかける。
    ヒロインと最初は反発しながらも協力し合って、お互い徐々に惹かれあっていき……まあなんてドラマティック、な展開。

    この作品、ものすごーーーーく映像化を意識している気がする。
    もう映像が頭に浮かびましたもん。
    すでにある程度キャスティングが決まっているのか?
    と思ってしまうほど。そのまま脚本にできそうです。

    山岸さん、すんごい上から目線に感じた。
    超一流ホテルの超一流フロントクラークだからって
    ちょっとプライド高すぎな気が。

    上司にホテルでの捜査のことを告げられ、
    刑事のアシスタントになってくれないかと頼まれた時も

    「つまり、社会において女というのは男のアシスタント役だから、ということですか」

    といきなり食って掛かったような態度で挑む。

    こういうこと言うと男尊女卑と取られちゃうかもしれないけれど、すぐこうやって「女は男の補佐役でしかないのか、ふざけんな!」みたいに言い出す女って、同じ女でもあんまり好きになれない。

    男ばかりの現場でやたらと目立ちたがろうとする女って苦手。
    私は紅一点という言葉が好きではない。

    だってこういう女に限って、
    いざというとき女の部分を出してきたりするイメージがあるから。
    もちろん全員が全員という意味ではありませんが。
    女だからってナメんな!とか言うくせに
    女なんだからもっと大切にしてよ!!みたいな。

    そりゃすごいとは思うよ。尊敬するよ。逞しいよ。
    でも、男の現場は男に任せておけばいい場合もあるのではないかと。
    こういう意見は間違っているのかもしれないけれど。
    決して男尊女卑しているわけじゃないですよ。

    そしてプライドがエベレスト並みに高い山岸さんは
    これからパートナーとなる新田に向かって早速
    挨拶の言葉に皮肉を混ぜるというジャブをかまします。
    一流ホテルウーマンが初対面の人にそんな態度とるか?

    「これから人にものを教えてもらうのにその態度はないだろう」
    ってアンタ(山岸尚美)、自分がどんだけエライ立場にいると思っているんだ。

    多忙極める超一流フロントクラークの
    わたくしの手を煩わせでもしたら
    タダじゃおかないわよ!!とでも言わんばかり。

    新田も新田で、最初はあくまで捜査が第一目的なのでやる気な~い態度。

    「ホテルマンになるっつったって俺はあくまで警察としての任務が大事でホテルの仕事はホテル側がやるんだから、髪型や歩き方なんかはどうでもいいっしょ~」
    (というニュアンスに感じる)

    って、お前それでもやり手のエリートか!!
    反抗期の男子中高生やないんやで!?

    エラそーにスカす前に、シャツの第一ボタンくらい留めろ!!
    と開始早々ツッコミまくり。


    が、しかし、その後はお互いの刑事としてホテルウーマンとしてそれぞれのプロ意識に敬意が芽生えはじめ、呼吸も揃ってきたころにまた新たな感情が芽生え始めるんですね。

    男女がコンビを組むとなれば
    やがて恋愛関係に発展していくのは自然なことで。

    こういう王道の凸凹美男美女コンビが描きたかったのでしょうか。
    なんだが恋愛要素を入れたことで安っぽくなっているような気がしてしまいます。


    しかも、そのやり取りが中高生みたいでまたなんとも……。
    レビューとか見ていると、この2人の掛け合いが良いっていう意見が
    わりと多かったので、好きな人は好きなんだろうと思いました

    一応成人した男女で、しかもお互い堅い仕事に就いているのだから
    最初はもっと遠慮がちに控えめな感じで

    「よろしくおねがいします」
    「ええ、どうも」

    みたいな出会いが自然じゃないかと思うんですが
    社会人同士のくせに最初からつんけんし合うとか、
    お互い気になっているけど素直になれない思春期の男女かよ!!
    と、またツッコミを入れずにはいられない。

    このいけ好かないコンビは一旦置いといて
    オオッ!?と思わず目が輝いたのが能勢さんの存在。
    まさに「能ある鷹は爪を隠す」という諺を体現したような刑事・能勢さん。

    能勢さんはすごく良いキャラクターだと思う。
    能勢さんを新田さんのちゃんとしたパートナーにした方が面白かったと思うなあ。
    同じような意見、アマゾンのレビューにもありましたし。

    能勢さんという良いキャラ登場させているのに、
    なぜこっちをメインパートナーにしない!?

    刑事同士なら極秘情報を交換してもおかしくないし
    物語もスムーズに進むだろうに。

    正反対の目的を持つ刑事とホテルマンがコンビを組んでしまったがゆえに
    色々ツッコまざるを得ない部分が生じてしまったのでは?
    まあそのコンビがこの物語のミソなわけで
    それを言い出したら元も子もないのですが……。

    新田さん、山岸さんに極秘事項ベラベラ喋りすぎ。
    アンタそれでもプロ意識もつ敏腕刑事なのか!?
    秘密という秘密を美人で気を許している人だからってペラペラと……

    山岸さんも、ホテルマンなのにエラそうに捜査にがんがん首突っ込んでくるのが
    見ていてすごくイライラした。新田だって、最初はそういうところイライラするって言っていたはずなのに、いつのまにか指示を仰ぐように山岸さんを頼りにし始めるからもうついていけない。素人に推理させるのが敏腕刑事なのか。

    正しい読者目線で言えば

    さすが山岸さんはホテルのことを第一に考えている!!
    自分も忙しいのに、プライベートな事件を削ってでも捜査の役に立とうと奮闘している!
    なんてすばらしい女性なのだ!すこし弱そうな女性らしいところも守ってやりたい!!
    さすがだ、ホテルで働く人間の鑑だ!山岸尚美バンザイ!!!あんたは最高のヒロインだ!となるところなのでしょうが
    私みたいなひねくれまくっている読者目線では
    「素人がいちいち口出ししてくんな!!」
    と思ってしまった。

    そしてついにイライラしながらも読み進めていた
    私の理性がブチ切れるシーンが来る。
    もちろん原因は山岸尚美。

    重要な捜査に参加させてもらえず蚊帳の外に追い出され、
    自分の手柄も横取りされてしまったことで、深く落ち込み失望する新田のことを

    「はっそんなことで落ち込んでんの?馬鹿じゃないの、くっだらねー」
    (実際の文章とはやや異なる)」

    というような暴言で一蹴。

    え……いきなりなにその口調
    どうした?美人ホテルウーマンご乱心か?
    自分が手柄を立てたいと思うことのなにがそんなにおかしいわけ?
    どこが馬鹿げているわけ?むしろ刑事として当然のことじゃないの?
    あんた、超一流ホテルウーマンだよね?
    人をおもてなしする職業だよね?

    長いこと一緒に過ごして苦楽を共にしている新田に対してどうして
    そんな暴言を吐くのか。意味がわからない。
    照れ隠しだとしても乱暴すぎる。思いやりの欠片もない。
    甘えんな、とかいうけど、どこが甘えてるんだよと言いたい。
    新田は一人で葛藤してんだ!一応パートナーのお前がどうしてわからないんだ。

    しかもこんな暴言吐いたくせに、能勢に指摘されて
    新田に対する淡い恋心に気づき始めたような態度も癪に障った。
    いやほんと、この女何がしたいの!?

    だからと言って新田のことも味方する気にはなれなかった。
    刑事としては素晴らしいと思うけど

    最初のやる気ない態度、そして上から目線。
    山岸尚美にきつく何か言われているときに
    キッと目を見開いた表情が美人だなあ……なんてことを考えている奴。
    客を見ても「あれは美人だからストーカーがいそうだ」とか
    これがブスだったらストーカーの心配はナシってことかい

    能勢刑事を主人公にして、ヒロインがホテルの超ベテランのやり手おばちゃんフロントクラークとかならめっちゃ食い付いて読んだと思う。
    恋愛要素なんてそもそもいらないし。
    フロントクラークじゃなくていっそ掃除のおばちゃんでもいい。

    新田の能勢さんに対する態度にも腹が立った。
    最初は見た目だけで判断して、愚鈍そうな男だとかすごいバカにしてる。
    まあ後々能勢さんの能力に気づいて尊敬し始めるんですが
    エリートのくせに人を小馬鹿にしたようなその態度はなんなのかと問いたい。
    山岸も新田も一流エリートのわりには所々ツメが甘すぎるぞ!!

    若かりし新田と教育実習生のエピソードも、新田の好感度をさらに低くした。
    高校生の時の話とはいえ
    「新田、性格悪っ!!」としか思わなかった。
    しかもその教師の章が長いわ内容もむかつくわで読んでいる間中イライラ。

    この教育実習生だった教師も相当根に持つタイプっていうか、
    ここまで執着してきたら怖い。
    絶対こんなやつ教師向いてない!!
    それなのに新田刑事。
    「今からでも教師の道は遅くないですよ。頑張ってください」
    という超きれいごとを言って終わり。なんだそれ!!
    本当にこの人と、そして生徒のことを思ったら
    即刻教師の道は諦めさせるべきだと思う。
    新田さんのキャラがブレているような気がしてならない。

    結局すべてのエピソードは一応伏線にはなっているし
    意味がないことはないんだけど、一つ一つのエピソードが長すぎると思う。

    ラストもなあ……50ページくらいで解決する事件なら
    今までの約410ページは一体……と少し拍子抜け。
    膨大なページ数に中身が見合っていない気がしてしまった。

    一番大事な、犯人を突き止める終盤のシーンはなんと、
    正義のヒーロー新田さんが美しきヒロイン山岸さんを生命の危機から救うというもの。色んな意味で仰天させられました。
    東野圭吾さんって、こんな作風でしたっけ?
    最後にヒーローが登場して、悪者をやっつけてお姫様を助けるって、そんな話を書くような方だったのでしょうか。
    別に否定しているわけではないです。しかし勝手ながら、がっかりしたことは否めません。好みの問題です。
    そして2人のこれからの淡い恋物語を連想させるようなラストシーンで物語は締めくくられます。
    めでたしめでたし。
    最近の東野圭吾さんはなんだか、メディア寄りの作風になっているのかなと思います。
    ガリレオの続編に、原作にはいなかった内海薫を登場させていますが
    嬉しい読者もいるのでしょうけれど、私は湯川先生と草薙刑事のコンビが好きだったので
    あまり嬉しく思っていません。原作は原作のままで書いてほしかったというのが正直な気持ちです。
    なので最近出版された東野圭吾さんの著書は、あまり読む気になれません。

    山岸尚美のことを登場人物も著者もやたらとホメまくりますが
    (美人、すごい女性、ホテルマンの鑑などなど)

    いや言っていることはわかるけど、彼女がすごいかどうかは
    こっちが決めるからそんな押し付けがましく何回も言わんといて!!

    新田さんと能勢さんがコンビだったら★5か★4だったかもしれない。
    トリックはとても面白かったし、ストーリーも良かった。
    なんだかんだぐいぐい引き込まれて読んだのは事実です。

    まだ言いたいことはあるような気がするけどとりあえず終わります。
    色々書いてしまいましたが、東野圭吾さんの大ファンであることに変わりはありません。大好きだから正直な気持ちを書きました。

    • もの知らずさん
      こんにちは。
      他人の気持ちを読み取らない人物ってすごいイライラしますよね。「そうじゃねぇだろうがよ!」とツッコみたくなります。

      ぼく...
      こんにちは。
      他人の気持ちを読み取らない人物ってすごいイライラしますよね。「そうじゃねぇだろうがよ!」とツッコみたくなります。

      ぼくも、「美女が出てきて恋仲に……」などという話はあまり好まないので、ブラウン神父とかミス・マープルみたいな、美女があまり出てこない(王道の)お話を少しずつ読んでいます(笑)

      腹を抱えて笑いました。最高!
      2015/04/19
    • 深雪美冬さん
      いつもコメントありがとうございます!
      こんなレビュー読んでいただけて有難い限りです。

      そうですよね。
      思いやりのないというか、思い...
      いつもコメントありがとうございます!
      こんなレビュー読んでいただけて有難い限りです。

      そうですよね。
      思いやりのないというか、思いやる気がないのか……。
      読んでいてイライラしてしまうんですよね。

      私もまったく同じです!
      美女と美男が集えばそこにはもう恋愛しか生まれないですもんね(笑)
      反発し合っているシーンとかも、なんか私から見ればイチャイチャしてるようにしか見えなくて……。

      「勝手にイチャついてろよ!フ―――ンッ!!」

      と本をぶん投げたくなってしまうのです。
      口が悪くてすみません。

      美男美女のコンビものは苦手です……。
      昔はそんなに腹立たなかったのになあ。

      是非おすすめの本とかあれば教えていただきたいです。

      腹抱えて笑えてもらえたなんて
      こんなに嬉しいことないです!!

      本当にありがとうございました。
      2015/04/22
  • つまらない。
    展開の予想はつくのに、余計なものが多過ぎる

  • 自宅ソファーで読了(83/100)
    久しぶりの東野作品だったのに、これはかなり残念な…。

  • 初めての東野圭吾
    なるほど読みやすい
    けど面白い訳ではない

著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

東野圭吾の作品

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