友罪

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087714937

作品紹介・あらすじ

「凶悪犯罪を起こした過去を知ってもなお、友達でいられますか?」─ミステリ界の若手旗手である薬丸岳が、満を持して「少年犯罪のその後」に挑む、魂のエンタテイメント長編。

感想・レビュー・書評

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  • 「凶悪犯罪を起こした過去を知ってもなお、友達でいられますか?」と言うのがキャッチコピーらしい。
    まさにこの通りの内容で、会社の同僚が有名な少年犯だったと知ることになった主人公がもがき苦しむ姿が語られる。

    意欲的な作品だと思う。
    でもなんだろうこのもやもや感。
    読み終わった後に全く心が晴れない。
    それもそうだろう、簡単に答えが出せるはずがない。
    神戸連続児童殺傷事件がこの作品のモチーフになっているのは明らかで、どうしたってその事件の記憶がよみがえってくる。
    今年も被害者少年の父親が手記を発表したのは記憶に新しい。
    被害者にとって事件は終わっていない。

    だからこそ私も主人公とともに読みながら苦しんだ。
    もし自分が同じ立場に置かれたらどうするべきなのか。
    倫理観と生理的嫌悪感とそして“友情”がせめぎ合って堂々巡り。
    少年犯罪や少年法のあり方について提議すると言う意味では良い作品だと思う。
    それでもやっぱり読むのがしんどかったし、自分の中で消化しきれなかった。
    大人のサイコパスの小説を読む方が精神的には楽かも。
    悩んだ末に☆3つで。

    • nejidonさん
      vilureefさ\ん、こんにちは♪
      わぁ・・重い課題をつきつけられた思いです。
      タイトルの意味するところを、レビューを読んでから理解できま...
      vilureefさ\ん、こんにちは♪
      わぁ・・重い課題をつきつけられた思いです。
      タイトルの意味するところを、レビューを読んでから理解できました。
      私の住む県に、かの少年がひっそりと住んでいるらしいという噂が、まことしやかに流れたことがあります。
      県知事さんがOKしたとかなんだとか。
      真偽のほどは分かりませんけどね。
      もうそれだけで当時は非難ごうごうだったのですよ。

      友達だったら、という問いかけは辛すぎます。
      仲が良かったらなおのこと、現実を受け入れるのに時間がかかるでしょう。
      父親が出した手記も、印税で賠償金を支払うのかと、
      どうしても納得がいかなくて手に取りませんでしたからね。
      ただ、少年法のあり方については考えたいですね。
      vilureefさんにしては珍しい☆三つ。うん、それもアリです。
      2013/07/17
    • vilureefさん
      nejidonさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます♪

      そうなんですよ、非常に重い。
      娯楽作品でありながら娯楽作品ではな...
      nejidonさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます♪

      そうなんですよ、非常に重い。
      娯楽作品でありながら娯楽作品ではない。
      そんな読後感です。
      作品としては良く出来ていると思います。
      でもあまりに現実とシンクロしてしまっているので・・・。

      そうですか、nejidonさんのお住まいの県にもそんな噂が・・・。
      嘘か真かは分からないとしても気になりますよね。
      そう考えると決して小説の中の話だけじゃないんですよね。

      結局は性善説に立つのか性悪説に立つのかってことになるんでしょうか。
      過去にどんな犯罪を犯していても、少年の更生を信じ見守るのか。
      それとも欧米のようにGPSを使って監視するのか。
      少年犯罪って考えれば考えるほど難しいですよね・・・。
      2013/07/18
    • ヒョードルさん
      vilureefさん、お久しぶりです。
      PCが壊れていて、ようやっと復帰しました。
      これ、薬丸さんということでもあり非常に興味ありました。
      ...
      vilureefさん、お久しぶりです。
      PCが壊れていて、ようやっと復帰しました。
      これ、薬丸さんということでもあり非常に興味ありました。
      なるほど。。ますは、機会作って読んでみたいと思います。
      ちなみにあの神戸の少年は、確かに某県の某駅にいると言われております・・。
      2013/10/17
  • ヘビーな内容であるものの、光景が目に浮かび一気読みしました。
    考えさせられます…
    犯罪でなくとも、元々イメージが悪くなくても
    人から聞く噂が悪印象だとどうしてもその人を色眼鏡で見てしまったりする…最終的に鈴木くんの本質に向き合って友達でいることを選んでくれた益田くんに感謝するとともに、いざ自分がその立場になった時どうか…考えさせられました。
    被害者側でなく加害者側の背景や心情に興味がある方はおもしろいかも。

  • 日本中を震撼させた少年事件の犯人が、医療少年院を経て社会復帰。知らずに親密になる益田は、正体を察し苦悩する。

  • ー過去に重大犯罪を犯した人間が、会社の同僚だとわかったら?ー


    ジャーナリストを志して夢破れ、でも再起を夢見て繋ぎの仕事として、
    川口の小さなステンレス加工の製作所に住み込みで働く事になった27歳の益田純一。
    同じ日に採用された同い年の鈴木秀人。
    鈴木は無口で、寮の皆を徹底的に避けている。過去の話もしない。
    極端な程、人を避けるから、職場でも好かれていない。
    そして、何故が毎晩うなされている。うなされているという言葉では足りない程尋常なものではない。
    そんなある日、益田は指を切断する大けがを負うが、鈴木の適切な処置によって、
    指を失う事もなく済んだのであった。
    その事故を機に、同い年で同日入社の二人は少しずつ打ち解け合っていく。

    事務員の藤沢美代子は、昔女優を目指して上京したが、当時付き合っていた達也により、
    AVに出演させられた過去があった。
    達也は執拗に美代子を捜しマンションに現れた時、鈴木に助けられ好意を抱くようになる。

    ある時、益田はスズキが日本中を震い上がらせた十四年前に、14歳の少年が
    幼い二人の子供の首を絞めて殺した後にナイフで目玉をくり貫き、警察に犯行声明文を送り付け、
    何とも大胆不敵で、おぞましい事件『黒蛇神事件』の犯人ではないかと、疑惑を抱くようになるー。
    鈴木は自分が死んだら悲しいと言ってくれた益田の事を唯一の親友だと言い、
    益田になら自分が抱えているものを全て話しても良いと言っている。
    そのかわり、何を聞いても友達でいてほしい…。
    益田はその話を聞く勇気が持てない。
    鈴木への恐れと嫌悪と彼の正体を皆に黙っている罪悪感に苛まれている。

    この事件は『神戸連続児童殺傷事件』をどうしても思い出させる。
    あの事件は、衝撃的でそしてとても異常だった。
    だから、益田の気持ちもわからないでもない。
    自分が益田の立場だったらどうするのだろう…。
    例えば、同じ殺人犯だとしても、その事情や背景が理解出来るものや同情に値するものもある。
    しかし、猟奇的殺人事件の犯人…答えは出せない…。
    益田の苦悩や葛藤も理解できましたが、一歩踏み出す勇気のなさがもどかしかった。
    そして、ジャーナリストの先輩に、鈴木の写真を安易に転送したり、
    一度は手記を書いて送ったくせに、途中で出版しないでくれと言ったり…。
    言っても彼らが出版する事は業界にいたならわかるはずなのに…。(-`ェ´-怒)
    それなら、自分が思っている事と違う様に捏造された記事ではなく、
    腹を括って、日本中の人を敵に回しても鈴木の人としての素晴らしい面も全て
    恐れずに書いて欲しかった。
    ただ、益田は決して強い人間ではないが、真っ当な人間ではある。それが救いだった。

    罪を犯した者は、いつまでもその罪から逃れられないのか?
    どんなに後悔しても、真面目に生きて行こうとしても社会から受け入れられる事はないのか?
    罪を犯した者の更生と贖罪とは…?
    友人が残虐な殺人者だったと知ってしまったら許せるのか?
    とても重いテーマでした。
    幸せになって欲しくない訳ではないのですが、鈴木の様に苦しんでいて欲しいと思った。
    後悔と、贖罪の気持ちを持っていて欲しいと思った。
    しかし、現実の事件の彼は遺族の願いも踏みにじって手記を出版しました…。

    益田の勇気をもって一歩踏み出したラストの手紙には心が打たれました。
    希望の光がさしていました。

  • 14歳の犯罪をテーマにした小説。
    読み応えがあった。

  • 一緒に職場に来た同期が、過去に人を殺していた。

    最初は同期として仲良くなっていくのですが、その過程で、同期が中学生の時に世間を騒がせた幼女連続殺人事件の犯人だったことが分かります。

    どう接すればいいか分からないまま、自分の過去も責めつつ、物語は進んでいきます。

    誰でも、重い過去はあると思います。(ここまで重いのは滅多にないと思うのですが)その過去とどう折り合いをつけて生きていくかがテーマなのかな?と、思ったりしてます。

    逃げるのは違うと思います。

  • 読み物としては面白いのだが、やはりいまだに記憶にある神戸のS連続児童殺傷事件が思い出されて抵抗感がある。この題材に敢えて挑んだのだろうが手放しでは受け入れ難いね。この本ではちょっといい人間にもしてあるし。実際の事件があまりに残酷だっただけに単なる読み物として楽しめなかった。

  • テーマは重いし長編けど、久しぶりに夢中で読んだ本。視点が変わるから、飽きっぽい私も飽きずに一気読みでした。

    「自分だったら??どうする?」
    過去とは言え、そんな残虐な殺人犯と知っていたら恐らく初めから敬遠しちゃうんだろう。
    でも今回のように打ち解けてきた頃に知ったら?

    初めは益田の立場だったら…と考えて読んでいたけど、そのうち、もしも自分が鈴木の立場だったら??(さすがにそれはないけど)
    山内の立場だったら??山内の息子の立場だったら??(それはあってはならないけど可能性として絶対にないとは言い切れないかも)
    自分だったら…がずっと頭にあって考えさせられる話でした。

    余韻が残るラストで若干モヤモヤしたけどそれでOKなんでしょうね。

    面白かったけどちょっと疲れたので次はコメディタッチの軽い話を読みます(笑)

  • ジャーナリストを志して夢破れ、製作所に住み込みで働くことになった益田純一。同僚の鈴木秀人は無口で陰気、どことなく影があって職場で好かれていない。しかし、益田は鈴木と同期入社のよしみもあって、少しずつ打ち解け合っていく。しかし益田はある事がきっかけで鈴木が13年前におきた残虐な少年事件の犯人ではないかと疑念を抱き始める・・・。
    身近な人間に犯罪者がいたらどう接すれば良いのか?
    自分であれば主人公の益田と同じ対応をしたかどうか、考えさせられる本です。

  • とても難しくて考えさせられる内容でした。

    過去に幼い子供を殺害し、医療少年院に入り、精神面からも矯正され、まだサポートされながら生活していかなければいけない鈴木。
    でもそこから飛び出し、自活しようとする。
    そして、たまたま同じ会社に入った益田。
    2人はしだいに友人としていい関係を築き始めるが・・・

    過去の罪を知ってしまったら、やはり今が良くても心は閉じてしまうものなのか。
    自分だったらどうなんだろう。やっぱり怯えてしまうのか。
    友達でいたいと思いながらも、それは難しいものなんだろう。

    美代子もまた忘れたい過去に苦しめられて生きている。
    どんな事も無かった事に出来たらいいが、
    鈴木も美代子も背負って生きていかないといけない。

    益田にも忘れられない過去がある。
    過去を克服できればいいのだが・・・悲しい話だ。

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著者プロフィール

1969年兵庫県生まれ。2005年『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2016年、『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に刑事・夏目信人シリーズ『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』、『悪党』『友罪』『神の子』『ラスト・ナイト』など。

「2023年 『最後の祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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