逆ソクラテス

著者 :
  • 集英社
4.12
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087717044

感想・レビュー・書評

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  • この本の特大ポスターが学校図書館にもとどいたのだが、大好きなJUNAIDAさんの装画に興奮!(もちろん入口に貼りだしている)
    皆さんのレビューからも熱が伝わってきた。


    主に小学校5,6年生の男子が主人公の短編小説集。
    どの短編も、世に流されるオトナをハッとさせてくれる。


    学校の日常にあふれている、個性に対する思い込みやレッテル。それを最初に与えるのは親にしろ教師にしろ、身近な大人だ。
    女子に比べて無邪気な男子も5,6年生になると、段々と大人の表と裏が見えてくる。
    純粋なだけに信頼を裏切られたと感じ、傷つくことが少なくない。

    クラスの中心にはいない生徒の、レッテル貼りに対するささやかだが大きな一歩となる行動。
    「ぼくは、そうは思はない」
    教師に対峙して言うには、相当勇気のいるメッセージだ。

    自分の子どもも、6年生くらいで先生に対して複雑な思いを抱くようになっていたな…と思い出した。
    その時自分は、「磯憲」や「三津桜の母親」のような態度を示せただろうか?…いや、ダメだった。時間を戻したい。

    鴻上尚史さんの「空気を読んでも従わない」を読んだばかりだが、それと重なるところが沢山あった。
    自分の姿勢を問われる小説なのだが、ドン・コルレオーネや、オプティマスプライムのくだりなど、少年らしい笑いも忘れない、さすがである。
    2020.8.15

  • 5つの話からなる短編集。
    1話目の表題作を読み終わった時点で感動と興奮で震えた。
    思えば伊坂幸太郎さんの作品は、先入観を捨てて、自分の頭で考えろ。自分の目で物を見ろ。というメッセージが込められたものが多い。

    小学生から大人まで、その場で力を持つ者の意見に無責任に乗っかる人々の、その圧倒的な壁のような威圧力と顔のない暴力性に嫌悪感と閉塞感を感じた人は少なくないはすで、でもそこにどうやってヒビを入れたらいいのかわからず、あるいは抵抗することに疲れて、沈黙してしまった経験は、きっと多くの人に共通するものだろう。
    今作はそんな思いに唇を噛んだことのある人たちにとって間違いなくとても痛快で、帯文にもあるように最高の読後感を残してくれる傑作である。

    大人にはもちろんだが、小学校の高学年くらいの子にもぜひ読んでほしい。これから長い人生を生きる上で、きっと自分の心を守り支える強い防具となるはずの、素晴らしいメッセージがここにはあるから。
    そして、この本を読んで大人になる子どもたちが多ければ多いほど、この先の世の中、いじめや、大人からの理不尽な暴力で泣く人たちが少なくなっていくはずだから。

    ああ、感動と興奮のあまり普段と違う硬い文体になってしまいました。
    小学生が主人公だし、短編集なので子どもにも読みやすく、でも大人だからこそ沁みる部分もあって、本当にいい作品です。
    ラストの電器屋さんの涙に、私も泣きました。
    伊坂幸太郎さんの作品には、もう信頼感が半端ないです。

    表紙のjunaidaさんの絵も素晴らしく、装丁の美しさも際立っています。栞紐の色が学童帽と同じ黄色〜!とか、この紙質‼︎とか、私は装丁マニアではありませんが、やっぱり紙の本っていいなぁ、好きだなぁ、とうっとりしながら読みました。

    この本の感動を、多くの人と分かち合いたい!と強く思った一冊です。おすすめします!

    • かおりさん
      まことさん、こんにちは。
      コメントありがとうございます❤︎
      伊坂幸太郎さん、いいですよね〜!私も大好きです。

      逆ソクラテス、読まれたらまこ...
      まことさん、こんにちは。
      コメントありがとうございます❤︎
      伊坂幸太郎さん、いいですよね〜!私も大好きです。

      逆ソクラテス、読まれたらまことさんの感想もぜひお聞きしたいです。
      感動を分かち合いましょう!レビュー楽しみにお待ちしています。
      早く届きますように。
      2020/04/25
    • まことさん
      かおりさん♪再度、こんにちは!

      読了しました!
      よかったです(*^^*)
      伊坂さんの小説にはいろいろなタイプがありますが、こういう...
      かおりさん♪再度、こんにちは!

      読了しました!
      よかったです(*^^*)
      伊坂さんの小説にはいろいろなタイプがありますが、こういう少しほのぼのとした伊坂さんもいいですね。
      主人公は子供たちだけど、出てくる大人たちが、子供たちをさとす、決めのセリフには勇気をもらいました。
      あの、子供たちを、変質者から守ろうとするお母さん、最高!でした。
      2020/04/30
    • かおりさん
      まことさん、こんにちは^_^
      再びありがとうございます!
      逆ワシントンのお母さん、お姉ちゃんの教室での突然の演説もよかったですね。

      子ども...
      まことさん、こんにちは^_^
      再びありがとうございます!
      逆ワシントンのお母さん、お姉ちゃんの教室での突然の演説もよかったですね。

      子どものうちに、良い影響を与えてくれる大人に出会える人は幸福だな、と思います。
      すべての人にそんなチャンスがあるわけじゃないから、せめて良い本に出会えたらいいですよね。
      2020/04/30
  • 伊坂さんの小説は、「おまえはどうせ大したことできないんだろ、と思われている人が逆転を起こす話」が多いと思う。本書は5篇ともそういう話で、もはや祈りのような短編集だ。
    しかも、この短編集で奇跡を起こすのは、ほとんどが平凡な子供。力はなくても、アイデアとユーモアと少しの勇気で状況を180度転換してみせて、私たちの頭まで柔らかくしてくれる。どうしようもない現実を、鮮やかに塗り替えるヒントをくれる。

    1番好きな話は、『スロウではない』。
    仲良しの2人がゴッドファーザーのドン・コルレオーネを真似して「特に女子が馬鹿にしてきます」「そんな女性がいるのか」「はい」「では、消せ」ってやりとりするのとか好き。「敵を憎むな。判断が鈍る」ってセリフも、かっこよくて、でも小学生が言ってると思うと可愛くて、はっとさせられて大好き。
    どんでん返しは爽快で、ラストは少し切ない。

  • 久々の伊坂幸太郎作品読破。なんかとても読みやすい短編作品で、どの作品もこんな小学生いたら最強!って思えるぐらい面白かった。特に、『逆ソクラテス』の「俺はそうは思わない」と言うセリフは、そこでくるかー!!ってなタイミングに笑ってしまった。伊坂幸太郎作品って、なんかマジックショーを観ているような不思議な感覚になる。過去に読んだ作品も再読したくなった。

  • 今年の春から読みたいと思っていた本作品、やっと読めました。期待どおりの面白さでした。

    見た感じ弱いと思った奴に、横柄な態度で接する。
    いじめることで優越感を得る。
    暴力で従わせる。
    私は、こういう人間は嫌いです。
    こういう人間に媚びへつらう人間も嫌いです。

    大人と子ども。
    先生と児童。
    体力・知識・経済力で強弱の差がつきやすい関係です。

    大人同士、子ども同士でもこれらの差は敏感に感じ、生意気な奴を何とかギャフンと言わせてやろうと思っているに違いありません。

    「侮られていた人が評価を逆転させる瞬間は痛快で心地よい。」という文章が出てきました。

    よくある逆転の手段は、相手の弱点を見つけてそこをたたくことですが、相手も自覚しているのでさほど効果はありません。
    相手が自信の拠り所としている優位点をたたきつぶしてこそ効果があります。
    「スロウではない」のスッキリ感はまさにこれです。

    「真面目で約束を守ることは評価される。損をすることも多いかもしれない。だけど幸せになれる。」
    これは、私もずっと自分に言い聞かせてきたことです。今でもそのとおりだと思っています。

    「悪いことをしたら、ちゃんと謝る。これが意外とできない。」
    権力者ほど、平気で嘘をついて、言い分けばかりに知恵を使ったり、他人のせいにする人が目立ちます。

    この本を読んだ子供たち、「正直者が馬鹿を見る」社会はおかしいという感性を持ち続けてね!

  • 伊坂さんの本を 先月初めて読み始めたばかりの「伊坂 初心者」です。
    なるべく古い作品から順番にと読み進めていましたが、
    予約していた図書館からの通知で、およそ20年弱の歳月を跳び越すことに。
    どこか不思議だった以前の作品とは違う、子ども目線というのが新鮮でした。
    お洒落で軽妙な会話には、相変わらず楽しませていただきましたが。 
                                                                                                                     
    小学生たちの視線が鋭くて愉快でした。
    「あいつは何をやっても駄目に決まっている」と思い込む久留米先生。
    ソクラテスとは真逆だと気づく小学生の安斎君。
    「いちばんの敵は先入観だよ」って、君はえらい!
    経験というメガネを たくさん つけ替えてきて
    裸眼でまっすぐ見ることを忘れてしまっているのは、
    久留米先生だけでなく、私も同じかもしれません。
    そして、安斎君の魔法の言葉。
    「僕はそうは思わない」
    私も不本意に迎合しそうになった時のおまじないにします。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    伊坂氏の恩師がモデルだという磯憲先生が生徒に言います。
    「未来のおまえは笑ってる。このまま大人になればいい」
    信頼する先生にそんな風に言ってもらえたら、どんなに心強いでしょう。
                                                                                                                                   
    集英社のインタビュー記事に、伊坂氏のこんな発言がありました。
    「これを書いているときにちょうど息子が小学生だったんですよね。
    だから、息子に伝えたいというのが入ったかと思います」
    正解のない問題にもあえて切り込む 熱い思いが伝わってきました。

  • 子どもたちが主人公の短編集。

    簡単に丸め込まれるでもなく、かといって対等に戦えるまではいかず、悩み、知恵を絞る。
    小学校高学年くらいの、大人というものとの距離感が、うまい。

    子どもでも、やはり信念を持った、独特のキャラクターが登場するのが、らしかった。

    三津桜の母の、暴言コーチに対する物言いとか。
    バスケ部の仲間が、いくつかの経験を積み重ねて、ひとつ乗り越えていくところとか。
    特に「アンスポーツマンライク」に、伊坂幸太郎らしさを感じる。

    悩んだり、困ったりしながらも、ラストは前向きだったり、痛快だったり。
    どれも読後感がよかった。

  • 好きな箇所を引用。

    僕は、そうは思わない、って。君の思うことは、他の人に決めることはできないんだから」

    あと、ちゃんと謝る、とかも大事でしょ。悪いことをしたら謝る、って意外にできないから。あの、ワシントン大統領だって、桜の木を切ったことを正直に言って、褒められたわけだし」

    いじめた側といじめられた側が、将来出会うことなんてそうそうない、と思ったら大間違いだからね。

    今の時代、居場所を探そうと思えば、それなりに探せちゃうし、ネットで情報発信なんていくらでもできちゃうんだから。

    誰かを馬鹿にした人は、将来、自分が成功した時に全部、晒されちゃうよ」」

  • 以前junaida展で本書の表紙イラストを見てから、内容も気になっておりました。
    もう既に小学校の思い出がおぼろげな社会人ですが、子供が主人公でも読んでいてしっかりと胸に響くものがあります。理不尽なことは大人になってからも幾度と対峙しますし、共感した彼らのマインドは忘れないようにしたい(`・ω・´)ゞ

    『いろんなひとがいるのが当然だろ。…言葉を、一つずつ相手に噛んで含めるようにしてしっかりと言った。俺は、変だとは、思わない。』-逆ソクラテス-

    『もし、平気で他人に迷惑かける人がいたら、心の中でそっと思っておくといい。可哀想にって。』
    『悪いことをしちゃったな、と思う人のほうが明らかに立派だよ。その立派さが評判を作る。評判が君たちを助けてくれる。』-非オプティマス-

    2024.3

  • 伊坂幸太郎作品を読むのはたぶん10年以上ぶりくらいだけど、クセがなくて、万人が読みやすい文体だなあと思った。
    国語の問題に使われやすそう。

    小学生の日常の、ふとした機微を切り取った短編集。
    どの話も好きな読後感で、ほどよい余韻が楽しめた。
    1番好きな話は「非オプティマス」かなぁ。小学生の年代とはほど遠くなってしまった私も学ばされた。

    小学生でこんな「賢人」が、現実の世界にどれほどいるのかはわからないけど、周りに流されずに、周りを傷つけずに、大切なことの本質を身をもって知っているというのは、これからを生きていくにおいて大きな武器だ。

    「僕は、そうは思わない」

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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