- Amazon.co.jp ・本 (504ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087717211
感想・レビュー・書評
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この時代の、上流階級の文化人の暮らしが丁寧に書かれていて興味深い。偉大な文化人の遺された家族の生き方の難しさ。偉大な父親といつも比べられ比べてしまう不自由さを感じながらも、反面遺されたものに縋り付き甘えて、己では何も生み出すことが出来なかった主人公の葛藤。ということかな。
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覚悟(?)してたけど、揃いも揃って浮世離れしてて、かつそれぞれが独自の審美眼を持つ、美しくも面倒臭い人たち…。彼らには生きにくいことこの上ない、かくも散文的な現代社会になったもんよ。己が日常を振り返って、何だかやるせない心持ちにさせられる、年の瀬である。
しかしまあ、中でも茉莉のイカれっぷり、ハンパないわあ、期待通り(笑)。本人のエッセイも何冊か読んだことがあるが、何の何の!家事も子育ても完全スルー、女中の采配さえ家政婦任せ、そりゃ亭主も浮気するわな。まあ、ご本人に罪はないね、甘やかした鴎外が悪いと思うわ~!
森家の実際か作者の趣味か、やたら植物の描写が多いのが印象的。鴎外が薔薇を好まなかったってのが、何やら意味ありげ…。 -
森家に関する書物、諸々手に取ってみたい。
最近読んだ村山由佳さん『風よあらしよ』が少し重なる。 -
森鴎外の息子・森類の生涯を描いた作品。
実際に存在した人の生涯をここまで描ける朝井まかてさんの文章力がすごいです。
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親のもつ影響力。森鴎外ほどの人物でなくても、庶民でも。
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森鴎外の末子、森類 偉大な父親の庇護のもと何不自由なく育つ。
しかし偉大な父親を持ったがために、世間や家族からの無言のプレッシャーからも逃れられない。
何もせずとも暮らしていけるが、何かやりたい、やらねばという思いで、絵画に打ち込みパリにまで出かけて修行?するが芽が出ない。
二人の姉は、文筆で名をあげ益々焦る類であるが、いかんせん道楽(のように私には見える)である。
やがてエッセーのようなものを書き始めるが、家族の暴露本のようになってしまい、姉たちを怒らせ絶縁状態に。
その間に結婚するがやがて戦争が始まり、終戦、生活は経験したことのないどん底、それではと仕方なく初めて勤め人になるが、使い物にならなくすぐに解雇、無理もない、それまで働いたことのない人だから。
と、なんともあからさまにその生涯が綴られている。
世間知らずのお坊ちゃまだから、悪気はない。
世が世なら、森鴎外の子供として一生涯周りからちやほやされ、苦労知らずで何の心配もなくその生涯を送れていただろうが、戦争がすべてを変えてしまった。
それも類という日との運命なのだ。 -
優雅な生活が最高の復讐である。
でも優雅に暮らしていられなくなったら?
しかし、生まれながらにしてハイソサエティの住民だった森類は存在自体が優雅なので貧乏だろうと愚かだろうと才能がなかろうと美しく生活するしかないのである。
その高貴な後ろ姿を見送った読後に、集英社にしちゃあイヤにセンスのいい装丁を見直してみると、森類その人の絵が使用されていた。 -
朝井まかての作品はこれが初めてだけど、過剰な自然描写(特に花木の名前の多さ)にいちいち思考が中断して、流れに乗れなくて難渋しました。
森家の子供たちは、長男・於菟に始まり、長女・茉莉、次女・杏奴、そして末子・類と全員が父である鷗外について、ひいては森家の家族についての文を残しているから、このような小説を他の作家が書く意義は何なんだろうなぁ〜。
このやたら情緒的で回りくどい描写のせいで無駄に長い作品に仕上がっている割に、感情の起伏も覚えず、読後の達成感も感動もないのは、類という人物がなんとも憐れな高等遊民の成れの果てとしか思えなかったからかもしれない。
彼は言う、「どうして何もしないで、ただ風に吹かれて生きていてはいけないのだろう。どうして誰も彼もが、何かを為さねばならないのだろう」
ん〜、偉大な父の重圧はわかるんだけどね、ただ何もしないでいても食べていかなきゃいけないんだから、何かを為さなくてもいいですから食い扶持だけは稼いできて下さい!って言いたくなるよね‥‥ -
資料ID:98200656
請求記号:913.6||A
配置場所:新着図書
(※配置場所は、レビュー投稿時のものです。)