- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087717280
感想・レビュー・書評
-
東京のイタリアンレストランで店長として働く33歳の遼賀。胃に不調を覚え検査を受けたところ、胃がんを宣告される。遼賀が訪れた大学病院で高校時代の同級生で看護師として働く矢田泉と再会。15歳の頃、弟・恭平と雪山で遭難した時のことを思い出しながら、そして家族に支えられ、病と向き合っていく…。
さすが藤岡さん、闘病の描写はとてもリアルだし、家族のあり方も考えさせられるし、なによりも出てくる人たちみんなが本当に優しくてあったかくていい人。
遼賀も優しいだけでなく強いなぁ。
生をあきらめるわけでもなく
死をおそれるわけでもなく
無理にあがくわけでもなく
とても自然に受け入れていく。
私も最期は、自分の人生を悔いなくしあわせだったと言えるように、そしてまわりの人たちに感謝の気持ちを伝えて終わりたいなぁと思います。
物語の構成もとてもよくて、号泣…まではいかなかったですが、胸がいっぱいになりました。藤岡さんの他の本もぜひ読もうと思います。
***
「山に生える、一本の木のような人生だ」(280頁)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
後半は悲しいはずなのに温かい涙涙。主人公然り、周りの人間が優しくて暖かい。
-
若い時の死と向き合う経験。少しずつ蝕まれて、動けなっていく経験。家族やまわりの人の気持ち。主人公の落ち着きっぷりが、30代とは思えず、いま自分の身に同じことが起きても、こんなふうに穏やかに、粛々とは過ごせない。
2021/10/25読了 -
人生の終わりに、自分だったらこんな風に思えるだろうか…?
かわいそうな人生って、なんなんだろう?
かわいそうじゃない人生って、なんなんだろう?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
都内のイタリアンレストラン店長として働く33歳の遼賀は、長く続く胃の不調にあえいでいた。
アルバイト店員の高那に背中をおされ、受診をした遼賀だったが、そこで待ち受けていたのは「胃がん」宣告だった。
告知を受けた遼賀は、15歳の頃、父と弟の恭平とともに雪山登山に出かけ、恭平と遭難したことを夢にみるようになる…
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
藤岡陽子さんのお話を読むのは、「満天のゴール」に続いて2作目ですが、本作「きのうのオレンジ」、めちゃくちゃよかったです。
主人公・遼賀の目線で全編進むと思いきや、1章ごとに遼賀のまわりの人たちに目線がうつっていて、しかもそれぞれの抱える生い立ちや葛藤がすごく心に染みました。
最後の方に、遼賀と恭平が15歳のとき雪山で遭難したときに書いた手紙の内容が出てきます。
あくまでもこの手紙の内容は、15歳の遼賀と恭平が書いたものなのですが、遼賀の手紙の内容は、33歳の遼賀の今と重なるところがあるものでした。
その内容を読んでいてわたしは、もし遼賀のような状況におかれたら、こんな手紙の内容を言えるだろうか…?と思いました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
このお話には、遼賀以外の人物も、生い立ちや関係性が複雑な人たちが出てきます。
なかには、その生い立ちの謎がわかりきらないままの人もいます。
でも登場人物すべての秘密が明らかになるなんて、そんなことはこのお話は必要がないことでした
かわいそうな人生ってなんだろう?
かわいそうじゃない人生ってなんだろう?
いくつまで生きたら、かわいそうじゃない人生なのだろうか?
何歳で死んだらかわいそうじゃない人生なんだろうか?
そもそも、「かわいそう」ってなんなんだ。
なんなんだ。
「かわいそう」という気持ちって、ひどく傲慢だなと思いました。
誰かと誰かの人生を比べて、どちらかに価値があり、どちらかに価値がないと決めつける。
そして価値がないとこちらが思った人生を歩んでいる人をあわれむ。
それって、自分がその人の人生よりも「上」にいる、と思うからこそ「かわいそう」「あわれだ」と思うわけですよね。
かわいそうな人生かとか、かわいそうじゃない人生かとか、そんなことむしろ考えるくらいなら、今、何をしようかと考えることの方が、よっぽど大事だし、人からどう言われようと、自分で自分の人生を認められたなら、それでいいじゃないかとおもいました。 -
高那さんの、ぼくは店長の人柄が好きなんです。の言う通り、登場人物みんなが、優しい物語です。
読み終わって、表紙を見たら涙がこぼれ落ちそうでした。また、何年か後に読み直したいと思えました。 -
濃厚な生と死の匂い。最初から死に向かってまっしぐらの物語でありながら、暗いカンジばかりでもなく希望やおかしみも。岡山弁もポイントか。痛みの詳細な描写にガンの友人思い出す。那岐山のブナ懐かしい、あの登山から何十年経った?「世の中には自分の非を認めない人間が多すぎる。自分に不利なことが生じれば、すぐ他人のせいにする。怖かった、傷ついたと訴えれば誰でも被害者の顔になる」
-
読んでいて、色々想うことがあった。
なんだか、悲しかったり、共感したり、でも最期はこうなんだろうなと思ったり、後悔しても時すでに遅しなこともあるんだろうなとか。
死や病気について、主観的、客観的、そして、当事者、家族、病院関係者、それぞれの捉え方をみられる、これもまた、現実だと思った。
検体の話、治験の話については、自分も医療職で、学生実習で検体を見た経験から、検体はこんな風に提供されているのかと思うと、色々思うところがあった。
この本を読み終え、自分は後悔のない最期を迎えられるのだろうかとか、いつ何が起こるかはわからないぞ、人生は…と思ったり。 -
遼賀、その母、弟の恭平、遼賀の視点の4章。
主人公が病になり高校の同級生と再会するところからストーリーが始まる。とにかく優しく、誰からも頼られる存在のお兄ちゃん。病になり死を感じたことで中学校卒業記念として父と弟と3人で雪山に登山したときに弟と二人遭難して死を覚悟したことを思い出す。
最後の登山でその時の捜索隊の人と偶然再会して、あの生還は奇跡だったと二人に伝えるシーンにジーンときた。 -
思ってたのと全然違くて、泣いた