カミサマはそういない

著者 :
  • 集英社
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感想 : 83
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087717679

感想・レビュー・書評

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  • 自分が初めて読んだ深緑野分さんの作品が今作のようなダークでゾッとする話だったので、お帰りなさいという気持ちで読みました。戦場のコックたちやベルリンは晴れているか的な話を期待しているとあれ?と思うかもしれないけど、こういうダークな作品ももっと読みたい。全話世にも奇妙な物語でドラマ化されてもおかしくない。

  • 〇カミサマを探したい!7編暗さがそれぞれ違い、次を読みたくなる

    10月の月の異名は神無月。出雲大社へ各神社の神様が行ってしまうから神無月だ、と親に教わったような気もする。10月の神社でお参りしても効果がないと昔の僕は思っていたが、その真偽は大人になった今でも調べていない。

    7つの短編集からなる。

    ・伊藤が消えた
    信太に、同居していた恭介の父から電話が入る。どうやら実家に帰ると言って帰っていないらしいが、同じく同居の堤が駅まで送ったはずだが。
    ――白い車があるのはなぜ。

    ・潮風吹いて、ゴンドラ揺れる
    僕は目を覚ますと観覧車のゴンドラにいて、ネヴィルの焼死体が車軸に巻き付いていた。人を探しているとネヴィルが生きて現れて。
    ――結末は恐ろしくて。

    ・朔日晦日(ついたちつごもり)
    遠くの工場で起こった事故のせいで、兄の目に斑点ができた。なんとかならないかと神様に願っていたが。
    ――神様はそういない。

    ・見張り塔
    二番と呼ばれる兵士の僕は、重要任務を上長から任され、敵を狙撃することに。
    ――絶望と希望の間に挟まれた僕が気づいたことはなんだったか。

    ・ストーカーVS盗撮魔
    SNSでの人間観察から個人を特定するのが好きな俺。次のターゲットを追うと、そこではそのターゲットの兄が部屋を監視していた上に。
    ――天職へ転職できるか?

    ・饑奇譚(ききたん)
    「大放出」の前日にご飯を食べないと、体が消えてしまう世界。食べなかったらまさか僕の体が別世界に飛ばされてしまい。
    ――二つの世界で起こる不思議な出来事の間で、大事にしたい僕の気持ちは。

    ・新しい音楽、海賊ラジオ
    海に囲まれた島に住む僕たちは、海賊ラジオで新しい音楽を聴きたい、と探し続ける。
    ――いまできることをやろうとするとどうなるか、探し出せるか。



    この本には、10月かどうかに関わらず、おそらくほとんど神様がいない。これだけですでにネタバレになってしまうだろうか。
    神様のいる・いないの狭間を彷徨って、結末をラストまで明らかにしないシリアスさは、この残暑にじわりと浮き出る汗のように、じっとりとした気持ちにさせられるのは僕だけではないはずだ。


    そして、世界観はまるでジブリの映画で見たような、否、それよりもさらにリアルな描写で、現代が置き去ったよろしい過去と、現代がいじめ抜いた未来の姿が描かれていて、それらが絡みつきながら脳天を揺さぶってくる。

    もしそれぞれの話の状況に置かれたら、僕らは、あぁ神様、と叫ぶのだろうか。
    それぞれの世界の主人公たちはその世界を全うしようとしているから、おそらく叫ばないだろう。
    現代にいる僕らだから、おそらく叫びたくなる。そんな風刺や人間の黒い部分にあふれた物語ばかりだ。

    ほとんどカミサマはいないのだが、本当に神様を頼ろうとするかどうかは、読者の良心次第なのだろう、とも思った。
    皆さんは、この本からカミサマを探し出せるだろうか。

  • 引き込まれて読んだが後味が悪くなる、怖い短編集。

  • Amazonの紹介より
    現代日本、近未来、異世界――様々な舞台で描かれる圧倒的絶望。
    この物語に、救いの「カミサマ」はいるのか。
    見たくない、しかし目をそらせない、人間の本性をあぶり出すダークな短編集。


    現実世界から異世界まで、時にコミカルに、時に恐怖を掻き立てたりと、独特な世界観で、あらゆる「絶望」を味わえました。
    全7話からなる短編集です。

    初めの方では、現代を舞台にしているので、物語の世界に入りやすく、恐怖がダイレクトに伝わってきます。
    後半になると、異世界や近未来といった設定になっていくので、なかなか世界観を掴みにくいなという印象でした。
    その分、独特な世界観で、世にも奇妙な物語を読んでいるような感覚もありました。

    個人的に印象深かったのは、「伊藤が消えた」「見張り塔」「新しい音楽、海賊ラジオ」でした。

    第1話「伊藤が消えた」では、ルームシェアをしている三人をメインにしたミステリーです。ある日、実家に帰ろうとした一人が帰ってきていないと他の二人に父親が電話で伝えます。
    家を出たはずなのに行方不明となった一人。徐々に会話から見えてくる真相が面白く、第1話目として良いスタートを切っているなと思いました。
    演劇を見ているかのように段々と「形」になっていく様、三人の友情が壊れていく様、その先の結末が絶望ながらも楽しめました。

    第4話「見張り塔」では、戦争を舞台にした物語です。見張り塔で敵を見張り、敵と戦っている少年兵12名。隊長の命令に従いながら、日々敵を撃っていましたが、そこにはとんでもない秘密がありました。
    真実がわかった時の絶望感や少年兵達の心情に言葉も出ないくらい、嫌な気持ちになりました。
    作品の中では、一番良かったかなと思いました。

    最終話「新しい音楽、海賊ラジオ」では、陸がほぼ海に覆われてしまった近未来?を舞台にした物語です。二人の若者が「音楽」を求めて旅する物語でしたが、それまでの物語とはうってかわって、爽快さが加わるので、最終話に相応しい読後感がありました。
    絶望の中に一筋の光が射したような希望のようなものを感じ、心地よい気持ちにもなりました。

    その他の話でも色々な「絶望」を体験でき、ちょっとわかりにくい世界観もありましたが、短編集ながらもゾワリとさせてくれました。
    深緑ワールドを存分に楽しめた作品でした。

  • どれもこれも、一瞬で世界に引きずり込まれ、もっと読んでいたいと思いました。戦争ミステリー作家のイメージがあったので、こんなバラエティーある短編も書く作家だとわかって嬉しい驚きです。どの作品もズシンとダーク。けれど最後の「新しい音楽、海賊ラジオ」を読んで「カミサマは滅多にいない」けど、「カミサマは絶対にいない」わけではないと思わせてもらえました。こんな時代にこそ読んでよかったラスト。素晴らしい物語でした。

  • 色違いのイヤぁーなぞわぞわが7回楽しめる。
    「イヤぁーな話」がこんなに色とりどりだなんて、世の中暗いねぇ、真っ暗闇だ。
    それにしても深緑さんがこんなに黒イヤ小説を描かれるなんて、あぁ、イヤすぎるイヤすぎる!!
    どの話も救いのないイヤさだけど、読み終わった後、「よし、次のイヤ話いこう、次はなんだ」とどんどんイヤさへの耐性がついていく。どうしてくれるこのイヤ期待値!!もうちょっとやそっとのイヤ話じゃ満足できなくなりそうだ。

  • ショートショートストリー的な短編集、最後の一行のどんでん返しや戦争の無情さSF的な近未来的なお話読み手の心をつかんで離さないお話ばかりダークゾーンの世界へあなたもぜひ入ってください。

  • 「恐ろしさ」の背後を見つめる――深緑野分さん『カミサマはそういない』刊行記念インタビュー | 集英社 文芸ステーション
    https://www.bungei.shueisha.co.jp/interview/kamisama/

    カミサマはそういない/深緑 野分 | 集英社の本 公式
    https://books.shueisha.co.jp/items/contents.html?isbn=978-4-08-771767-9

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      深緑野分『カミサマはそういない』を杉江松恋が読む「人生のほろ苦さを色とりどりの紙に包んで」 | レビュー | Book Bang -ブックバ...
      深緑野分『カミサマはそういない』を杉江松恋が読む「人生のほろ苦さを色とりどりの紙に包んで」 | レビュー | Book Bang -ブックバン-
      https://www.bookbang.jp/review/article/704199
      2021/09/26
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      【今月の一冊】深緑野分の紡ぐ物語たちに震撼する傑作「カミサマはそういない」|@DIME アットダイム
      https://dime.jp/gen...
      【今月の一冊】深緑野分の紡ぐ物語たちに震撼する傑作「カミサマはそういない」|@DIME アットダイム
      https://dime.jp/genre/1286098/
      2022/01/05
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著者プロフィール

深緑野分(ふかみどり・のわき)
1983年神奈川県生まれ。2010年、「オーブランの少女」が第7回ミステリーズ!新人賞佳作に入選。13年、入選作を表題作とした短編集でデビュー。15年刊行の長編『戦場のコックたち』で第154回直木賞候補、16年本屋大賞ノミネート、第18回大藪春彦賞候補。18年刊行の『ベルリンは晴れているか』で第9回Twitter文学賞国内編第1位、19年本屋大賞ノミネート、第160回直木賞候補、第21回大藪春彦賞候補。19年刊行の『この本を盗む者は』で、21年本屋大賞ノミネート、「キノベス!2021」第3位となった。その他の著書に『分かれ道ノストラダムス』『カミサマはそういない』がある。

「2022年 『ベルリンは晴れているか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

深緑野分の作品

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