カミサマはそういない

著者 :
  • 集英社
3.08
  • (19)
  • (30)
  • (90)
  • (29)
  • (12)
本棚登録 : 706
感想 : 83
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087717679

作品紹介・あらすじ

変な予感がするんだ。
扉の向こうで、何か恐ろしいものが、僕を待っている気がして――。

目を覚ましたら、なぜか無人の遊園地にいた。園内には僕をいじめた奴の死体が転がっている。ここは死後の世界なのだろうか? そこへナイフを持ったピエロが現れ……(「潮風吹いて、ゴンドラ揺れる」)。

僕らはこの見張り塔から敵を撃つ。戦争が終わるまで。しかし、人員は減らされ、任務は過酷なものになっていく。そしてある日、味方の民間人への狙撃命令が下され……(「見張り塔」)

など全7編を収録。

現代日本、近未来、異世界――様々な舞台で描かれる圧倒的絶望。
この物語に、救いの「カミサマ」はいるのか。
見たくない、しかし目をそらせない、人間の本性をあぶり出すダークな短編集。


【プロフィール】
深緑野分(ふかみどり・のわき)
1983年神奈川県生まれ。2010年、「オーブランの少女」が第7回ミステリーズ!新人賞佳作に入選。13年、入選作を表題作とした短編集でデビュー。15年刊行の長編『戦場のコックたち』で第154回直木賞候補、16年本屋大賞ノミネート、第18回大藪春彦賞候補。18年刊行の『ベルリンは晴れているか』で第9回Twitter文学賞国内編第1位、19年本屋大賞ノミネート、第160回直木賞候補、第21回大藪春彦賞候補。19年刊行の『この本を盗む者は』で、21年本屋大賞ノミネート、「キノベス!2021」第3位となった。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • うーん。
    1話目だけ、読了。
    あとは寝ちゃった。
    伊藤が消えたは、伊藤を消した、だね。
    これに対してカミサマを語れるのは伊藤だけだね。

  • タイトル通りの展開が続くSF短編集。物語である以上、作者という神は存在していて登場人物のありさまについて祈りたくなることもある。この作品はそんな状況でも神様なんていないでしょ、現実だってそうじゃない?って突き付けられてくる。祈りたくなるくらい目を背けたい状況なのに、救われることはないのだろうなと心のどこかで感じてしまう絶望を現した作品でした。

  • 時代小説も現代小説も、最後は、未来に明るく終わる小説が、好きである。
    ホラー小説であっても、摩訶不思議な事も、好きである。
    しかし、この本は、異次元の世界に飛び込んだような、そして、逃げ道のない空間に彷徨った感じにさせる。
    余り好きな小説では無かった。
    目次では、6編であるが、どれも繋がりはない短編小説。
    最後の海賊ラジオから声が聞こえて来たのは良かったけど,これからどうなるのだろうか???

  • 不思議な世界観の短編集。重苦しく絶望が漂っている。まさに表題通り「カミサマはそういない」と思わせてくれた。ただ最後のお話だけはほんの少し「カミサマはいるかもね」と一抹の希望があったように思った。全体を通して読むのに疲れた。

  • ちょっと現代とは違うSFの世界(だけど現代に限りなく似ている)の世界で起きる出来事。
    幸せなことは起こらず、でも決してものすごく酷いことも起こらない(多少は起きる)日常が描かれている感じ。
    感動も救いも別になくて、ほんと読んだ感想は「まぁ神様ってそういないんだな」という感じ。
    一つ一つの世界をもっと掘り下げて書かれた世界を読んでみたい。

  • 短編集。
    どれもかなり後味が悪い!最後の「新しい音楽、海賊ラジオ」だけは明るいラストかな?特に気に入った二編について。

    ○「潮風吹いて、ゴンドラ揺れる」
    遊園地で目を覚ました僕は、観覧車の軸に引っかかった黒焦げの死体を見つける。

    モチーフがなるほどなと思った。
    観覧車やメリーゴーランド、ジェットコースター。「永遠に」「同じコースを回り続ける」ものがあふれる遊園地で、きっと永遠に殺される恐怖を味わることになる。
    怖すぎる・・・

    ○「見張り塔」
    二番は仲間とともに見張り塔で敵を狙撃する。ある日、射撃の腕と忠誠心を買われた二番は体調に【特別任務】を命じられる。

    「僕はね、相手を敵だと信じて殺しているうちは気持ちよかったよ。爽快なくらいだった。だけど味方だったと知ったら……それで気づいたんだ。殺した相手が本当に敵だったとしたら、僕はほっと安堵してしまうってことに。」
    ラジオが直って、それでも音が聞こえない。そして知る。祖国は全滅したということに。それを受け入れられない隊長の行動。
    私は戦争を経験していないから、もし戦争が終わったと知ったら喜んで真っ先に帰国するのが普通なのでは?と思ってしまうけれど、「戦争が終わったこと、自国が負けたことを信じられなかった」という体験談も多いから、やっぱりそういうことなのかな。

    主題からはちょっと外れてしまうかもしれないけれど、五番を格下に見ていた二番に対して十番がぶつけた言葉。
    「君は仲間よりも軍の方が大切で、頑固だったから……そんなやつに自分の話なんか打ち明けるもんか。今だって僕の話を信じてないだろ。だから君はみんなから信用されないんだよ!」
    見下していた相手に、実はそもそも相手にされていなかったという屈辱。決めつけって怖いなと思った。


    「こいつにとって釣りの次に好きなのは音楽だって、幼稚園からの長い付き合いだから知ってる。‶インディーズ”の話をしても食いつきが悪いのは、そんなのあり得ないってもう諦めてるからだ。でも僕らは‶いま”に飽き飽きしてるだろ?」

  • かつて、いじめられっ子の言いなりになったために一人の少女の恨みを買い、苦しみの連鎖に囚われてしまう「潮風吹いて、ゴンドラ揺れる」ほか7編のホラー短編集。

    いつも違う角度の物語で楽しませてくれる深緑さん、この本は少し不思議な世界を舞台に、人間の心の闇を覗き込むようなホラーチックなお話を中心に、いくつかまとめたものです。個人的には「潮風吹いて、ゴンドラ揺れる」が非常に恐ろしくて楽しめました。「新しい音楽、海賊ラジオ」は恐ろしい要素というよりも新しい明日を切り開く希望のような終わり方で、こちらもよかったです。
    深緑さんは、なんというか、人間の闇を暴くときの文章の切れ味が鋭くて容赦がないのが迫真に迫っています。男性の著者ではなかなかこういう容赦のなさは出せないのではないかな、と思いながらいつも読んでいますが、本当に幅の広いお話を書くので次に読む本も楽しみになります。
    ところで最後の章に出てくる「本」はエンデの「はてしない物語」だと思うのですがどうでしょうか。いや、そんな本はたくさんあるとは思うのだけど。

    自分がなんのために誰と戦っているのか分からない戦争を描く大友克洋監督の「メモリーズ、砲台の町」と一緒にお楽しみください。ワンカットと言われる映像もそうだけどテーマも面白いのです。あれ。

  • 深緑野分…名前は見たことあるけど、初読の作家さんです。タイトルどおりに、なかなか絶望的なお話が7つ並んだ短編集。現代日本から近未来、異世界まで幅広い世界を舞台に、短編ながらもそれぞれの世界観がよく見えるというか…世にも奇妙な的世界が次から次へと楽しめます。読後感は決して良くはないのですが(=_=;) 私的には『朔日晦日』が好きですね。

  • 短編。おもろく印象的な話と、変わった世界観の話があった。
    圧倒的に「潮風吹いて、ゴンドラ揺れる」が良かった!!!



    ・伊藤が消えた ★★★
    タイトルがなんか良い!
    タイトル通り伊藤は殺されて消えたんやけど、伊藤含め3人で同居してて同居人達がやばい。と言うより伊藤以外の登場人物全員やばい。

    主人公の信太は伊藤のお金と通帳盗むし、伊藤の彼女はその信太と浮気する。
    堤は伊藤を殺すし、伊藤の父は潰れた旅館の負担を伊藤に強いろうとしてるよう。

    伊藤が不憫や。


    ・潮風吹いて、ゴンドラ揺れる ★★★★★
    むっちゃ良かった!!
    バッドエンドで無限ループ。

    誰もいない遊園地、ピエロに追いかけられて殺される。むっちゃワクワクなシチュエーション!
    ホラー映画でありそうやけど本では、あんまりないシチュエーションかも!
    楽しく一気読み!!


    ・朔日晦日 ★★★★
    怖くないけど、ちょっとホラー要素あり。
    目にゴマ粒みたいなのが出来て、見えないものが見えてだけど怖くな、なんだか楽しそう!
    と、思ったらその目を取りに来られるとか、嫌。

    超!短くて一瞬で読めるけど、長さに対して内容が濃かった。


    ・見張り塔 ★★★
    日本の戦時中の話かと思ったら、日本ではなさそう。
    オチは読めたけど、バッドエンドやし話の中でもハッピー要素ゼロやし、悲しい。


    ・ストーカーVS盗撮魔 ★★★★
    タイトルからしてバリおもろい!!
    ちょっとオチが残念やったけど、ストーカーが主人公の話。
    キモい男が女の人をストーカーするのではなく、ネットにある一般人の情報特定するって話。


    ・饑奇譚 ★★★
    世界観を理解するのに時間かかった。
    ディストピアな雰囲気で、嫌いじゃない。
    始めは微妙やったけど途中から面白くなって一気読み。


    ・新しい音楽、海賊ラジオ ★★★
    陸の面積が狭くなって海が広がった世界の話。
    陸だった所は海に呑まれて文明ごと沈む。
    物資や電波も制限され、政府に内緒でラジオから流れると噂の音楽が聴ける海賊ラジオを探す話。
    前半はディストピアな雰囲気で後半はなんだか清々しい感じだった。

  • 私はどうもこの人の少し薄暗く昔作られた近未来の映像みたいな世界がとても好きらしい。
    意味のわからない一日がある世界。陸が沈んで波音に包まれた世界。実は選ばれた人々が集められた町。好きだなー!

全83件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

深緑野分(ふかみどり・のわき)
1983年神奈川県生まれ。2010年、「オーブランの少女」が第7回ミステリーズ!新人賞佳作に入選。13年、入選作を表題作とした短編集でデビュー。15年刊行の長編『戦場のコックたち』で第154回直木賞候補、16年本屋大賞ノミネート、第18回大藪春彦賞候補。18年刊行の『ベルリンは晴れているか』で第9回Twitter文学賞国内編第1位、19年本屋大賞ノミネート、第160回直木賞候補、第21回大藪春彦賞候補。19年刊行の『この本を盗む者は』で、21年本屋大賞ノミネート、「キノベス!2021」第3位となった。その他の著書に『分かれ道ノストラダムス』『カミサマはそういない』がある。

「2022年 『ベルリンは晴れているか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

深緑野分の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×