奇跡集

著者 :
  • 集英社
3.39
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本棚登録 : 935
感想 : 110
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087717754

作品紹介・あらすじ

同じ電車の同じ車両に、たまたま乗り合わせた見しらぬ男女たちがつなぐ、幸せのふしぎスイッチ。

第一話「青戸条哉(あおと・じょうや)の奇跡 竜を放つ」ーー満員の朝の快速電車。ぼくは過去最凶の腹痛に耐えていた。もうダメだと思い、その場にしゃがもうとした瞬間、隣に立つ同い年くらいの女性が、ぼくよりもわずかに早く、しゃがみこんだ。

第二話「大野柑奈(おおの・かんな)の奇跡 情を放つ」ーー大学時代、わたしは小劇団にのめり込んだが、結局就活をして、食品会社へ。通勤途中、具合が悪くて社内で声をかけた女性の様子が気になり、駅を一つ戻ってホームに降りると、そこには意外な先客がーー。

第三話「東原達人(ひがしはら・たつひと)の奇跡 銃を放つ」ーー満員電車での尾行中。住宅街の駅で降りた捜査対象者に気づかれぬよう後を追っていると、赤ん坊を抱いた裸足の女性が、すごいスピードで無表情のまま目の前を通り過ぎていった。

第四話「赤沢道香(あかざわ・みちか)の奇跡 今日を放つ」ーー五年ぶりのデート。満員電車で、男の人の手が、女性のお尻のあたりで動いているのを見てしまった。女性は、まったく別の男性に「触りましたよね?」と詰め寄った。どうする、わたし?

第五話「小見太平(おみ・たいへい)の奇跡 ニューを放つ」ーーカップ麺会社の宣伝部で、おれは失敗した。起用した女性大食いユーチューバーが炎上した。代替案を上司に提案しなければならないが、電車が止まってしまう。「イッキュウちゃんの動画。見た?」という会話が聞こえたのはその時だ。

第六話「西村琴子(にしむら・ことこ)の奇跡 業を放つ」ーー満員電車で、彼の浮気相手をひそかに凝視する。彼はわたしの8歳年下で、その女はわたしの16歳下。有休をとり、女の乗った通勤電車にわたしも乗った。だが、わたしは決してストーカーではない。

第七話「黒瀬悦生(くろせ・えつお)の奇跡 空を放つ」ーーななめ掛けしたボディバッグに拳銃を入れた俺は、とっくに尾行されていることに気がついていた。目的地の一つ前の駅で降りて住宅街を歩いていると、声をかけてきたのは、尾行していた刑事ではなかった。

小さいけれど確かに人生を左右する(かもしれない)7つのミラクルを描く、連作短編小説!

【著者略歴】
小野寺史宜(おのでら・ふみのり)
1968年、千葉県生まれ。法政大学文学部卒業。2006年に短篇「裏へ走り蹴り込め」で第86回オール讀物新人賞を受賞。08年『ROCKER』で第3回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞し、初の単行本を刊行。『ひと』で19年本屋大賞2位。主な著書に「みつばの郵便屋さん」シリーズ、『ひりつく夜の音』『夜の側に立つ』『ライフ』『縁』『まち』『今日も町の隅で』『食っちゃ寝て書いて』『タクジョ!』『今夜』『天使と悪魔のシネマ』『片見里荒川コネクション』『とにもかくにもごはん』『ミニシアターの六人』『いえ』など。

感想・レビュー・書評

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  • たまたま乗り合わせた同じ電車の同じ車両、見しらぬ乗客が微妙に繋がり、それぞれの人間模様を見せてくれた。「最凶の腹痛に悶える」「尾行」「触りましたよね!と詰め寄られる痴漢」「イッキュウちゃんの動画」「浮気相手のストーカー」「拳銃所持する怪しい奴」快速電車の駅間の15分の場面、登場人物によって情景が全く異なる。この話しは奇跡なのか?否、時間を輪切りに切たとしても人それぞれ模様が異なる。それが人生であって面白い所。もう少し登場人物同士の繋がりがあると奇跡だったかな?「ホワイトシチューうどん」かぁ~ない、ない。④

  • 小野寺史宣さんらしいと言えばらしい連作短編集
    悪く言えばこんだけあれば何かしら引っかかるでしょうよって言う短編集
    っておい!「悪く言えば」って良く言った後にく来るやつだろ!いきなり悪く言うやつがあるか!

    いやでもね、小野寺史宣さんの短編集読んでると、ふとこれ誰に向けて書いてるんだろう?って思うことがあるんよね
    色んな人に向けてるようで誰にも向いてないような気がするときがあるんよね
    今作はまさにそれだなぁ思ってしまったなぁ

    ちょっとした出来事をきっかけにして 人生をちょっとだけプラスに転換する
    そんな小さな奇跡集は誰の身にも実は起きていることで見逃してるだけなのかも
    見逃さない準備をしておこう

  • 快速電車内での乗客のそれぞれの奇跡。

    七人掛けの座席の真ん中に立っている前リュックの青戸から始まる全七話の短編集。

    その周辺で起こる奇跡はどれも唸らせる。
    朝の満員電車の中の人の動きが、とても興味深いと改めて思った。
    人間描写と心情描写が、やはり凄いなぁと感じた。
    とても読み易い。

    今現在は、通勤に使うことはないが10年以上前は、同じような朝の満員状況で快速電車を利用したのを思い出した。
    だが、人の様子を見ることもなく、ただ読書に勤しんでいた。
    もう、自分だけの世界というか…本の中の世界へと入り込んでいた。
    快速電車で30分では足りないくらいに…。

    その間に周りではいろいろな奇跡、軌跡があったのかもしれない。




  • 同じ電車に乗り合わせた、それぞれの人の視点からの話

    人物ごとに分かれてて読みやすかった

    電車の話、こんなの前にあったなと思いながら読み
    あ、飛行機の話は読んだことがないなぁとか思ってしまった

    奇跡っちゃ、奇跡だけど…

    具合が悪くなってしまった女子学生に声をかけた男子学生がバイトで授業に出れず、明日の試験は絶望的だったけど
    具合が悪くなった女子学生が同じ大学の一個上の先輩でノートを借りれることになったとかの奇跡の話は好きだったなぁ

  • 日常には、小さな奇跡が転がっていて繋がっていくんだなぁと思った。
    人それぞれいろいろな奇跡の短編集。おもしろかった。

    • TAMAさん
       yukaさんのレビュー見てこの本を読んでみましたが、普段の日常の一場面においてあかの他人と一瞬人生が交差した時に、その一場面の奥に一歩踏み...
       yukaさんのレビュー見てこの本を読んでみましたが、普段の日常の一場面においてあかの他人と一瞬人生が交差した時に、その一場面の奥に一歩踏み込んだ、それぞれの人生を見れた感じがして面白かったです。
       電車に乗る時の周りの見方が少し変わりそうです。
      2023/07/31
  • 奇跡から軌跡への一冊。

    同じ空間、同じ時。
    小野寺さんが描く満員電車という物語が走り出す。

    淡々と紡がれる物語の揺れに身を任せながらキラッと光る幾つもの瞬間を目にするのが心地よかった。

    時に苦しみを背負いながらも揺れに身を任せるしかない朝。

    それがほんの些細な誰かの手で、心で、その人にとって特別なかけがえのない朝に変わる、奇跡の瞬間。

    そしてその一瞬が人生の"軌跡"へと変わるはず。

    そう思うと、満ちる幸せ。

    何げない光景、言葉を目に耳にした誰もがブルーな気持ちをブルーの空へ解き放つような小さな一瞬を大切に探したくなる。

  • 同じ空間に偶然居合わせた人たちに起こる小さな奇跡。
    普段の暮らしのなかに小さな奇跡は転がっているかもしれない。
    見知らぬ人とも気づかないうちに影響しあっているかもしれない。
    そんな風に自然と思えるほど、身近な出来事から始まり、非日常的な出来事へと繋がっていく。
    奇跡は待っているだけでは起こらない。
    彼らの勇気ある優しい行動が奇跡を起こしたのだ。
    人との繋がりに心が温まった。

  • 電車を利用するとき、この人はどんな性格だろうか?家族背景は?と風貌から想像することはある。しかし、一瞬で終わる。なぜなら、自分には関わりのない人だから。しかし、この物語のように、共通の体験をしたならば、他人に深入りするかもしれない。

    最終話は異質。他人の生活を知ることは怖いとすら感じた。
    2022,6/11-15

  •  全七話からなる連作短編小説です。『奇跡集』というタイトルの通り、偶然同一電車の同一車両に乗り合わせた人たちの繋がりが、小さな奇跡として描かれています。
     仮に一車両に50人乗っていたとすると、50人それぞれの日常があり、たまたま時間と場所を共有しただけで、人生が交差することは多くあっても、ほとんど干渉せずに過ぎ去ってしまうのが普通です。
     こんな何でもない日常に、ちょっとしたことがきっかけになり、赤の他人と関わることになったら…。後付けでタラレバの話じゃないよねと、なかなか有り得ない偶然に驚いた経験も確かにあるなぁ、とも思います。
     次々と視点が変わる奇跡が続くと「うーん」と思ってしまいますが、第一話の奇跡「竜を放つ」の巻が一番楽しく、小野寺史宜さんらしいと思いました。

  • 私が読む小野寺史宜氏作品の12冊目。
    出ました、劇団『東京フルボッコ』や『横尾成吾』。
    そして相変わらず多い、多いよ、フルネーム。
    全部は覚えておけないのに、以前の作品と繋がっていることもある。
    この繋がっている系は、いつか文庫本で全部購入するか、図書館本を待たずにいっぺんに借りられるようになった頃に、ひとり小野寺史宜祭りをしないとダメかな。
    でもこの先もどんどん、繋がっている系が出版されるのだろうな。

    その前に、思い切って一度『横尾成吾』のペンネームで『脇家族』『三年兄妹』『百十五ヶ月』を含んだ短編集を出して欲しいものだ。

    で、本作は、まあまあだった。

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著者プロフィール

一九六八年千葉県生まれ。二〇〇八年『ROCKER』で第三回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞し同作で単行本デビュー。著書に「みつばの郵便屋さん」シリーズ、『ひと』『ミニシアターの六人』『レジデンス』『タクジョ!』『銀座に住むのはまだ早い』『君に光射す』などがある。

「2023年 『片見里荒川コネクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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