事件は終わった

著者 :
  • 集英社
3.46
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本棚登録 : 753
感想 : 77
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087718065

作品紹介・あらすじ

年の瀬に起きた痛ましい〈地下鉄S線内無差別殺傷事件〉。
突然男は刃物を振り回し、妊婦を切りつけ、助けに入った老人を刺殺した。
時は過ぎ、事件に偶然居合わせてしまった人々には、日常が戻ってくるはずだった――。

会社員の和宏は、一目散にその場から逃げ出したことをSNSで非難されて以来、日々正体不明の音に悩まされ始め……(「音」)。

切りつけられた妊婦の千穂は、幸いにも軽傷で済んだが、急に「霊が見える」と言い出して……(「水の香」)。

事件発生直前の行動を後悔する女子高生の響が、新たな一歩を踏み出すために決意したこととは(「扉」)。

人生に諦念を抱える老人が、暴れる犯人から妊婦を守ろうとした本当の理由とは(「壁の男」)。
ほか、全6編。

大注目の『このミス』大賞&推理作家協会賞作家が贈る、事件が終わって始まった、少し不思議でかなり切ない“その後"を描く連作短編集。


【著者略歴】
降田 天 (ふるた・てん)
執筆担当の鮎川颯(あゆかわ・そう)とプロット担当の萩野瑛(はぎの・えい)による作家ユニット。少女小説作家として活躍後、2014年に「女王はかえらない」で第13回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、降田天名義でのデビューを果たす。18年、「偽りの春」で第71回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。他の著書に、「偽りの春」が収録された『偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理』、『彼女はもどらない』、『すみれ屋敷の罪人』、『ネメシス4』、『朝と夕の犯罪』、『さんず』などがある。

感想・レビュー・書評

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  • 地下鉄の無差別殺傷事件に居合わせた乗客たちのそれからは… 連作短編ミステリー #事件は終わった

    ■あらすじ
    地下鉄で無差別殺傷事件が発生。居合わせた乗客たちは逃げ惑う人、救助する人、犯人に立ち向かう人たちで車内は騒然となった。無事犯人は逮捕されるも、残念ながら被害者がでてしまう結果に。
    さて事件が終わった後、居合わせた乗客たちの日常生活がどうなっていくのか。ひとりひとりの人生に与えた影響が綴られていく…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    事件がきっかけになりつつも、直接被害にあったわけではない。しかし人々の心のわだかまりや悩みが重なり合って、苦難を乗り越えていく心あたたまる物語。
    スパイスとなる程度にミステリー要素も効かされており、全編楽しく読ませていただきました。

    本作は電車に乗り合わせたどこにでもいそうな登場人物たちが、よくある心配事やストレスがテーマになっています。
    家族のトラブル、夫婦の悩み、夢を追う若者、人生に疲れた老人… 自分にも思い当たるような人生のワンシーンが切り取られて、お話が語れていくのです。

    なんといっても登場人物たちの心情を深堀り具合がめちゃくちゃウマイです。
    老若男女、いろんな人物が描かれますが、ひとりひとり目の前に存在するかのようにリアル。しかも読者との距離感も近く、彼らの日常に吸い込まれたような感覚がありました。

    日頃過ごしている日常生活と、ひょっとして明日にも起こりうる理不尽な事件を上手に繋いでいる。エンタメ小説やミステリーは、なにかと大げさになりがちですが、先生のたくらみが冴えている作品でした。

    ■推しポイント
    タイトル名とあらすじだけを見ると、これから不幸が待ち受けるような雰囲気が漂ってきます。すくなからず事件に巻き込まれてしまった彼らに待ち受ける試練は厳しい。しかしすべて読み終わってから、もう一度タイトル名を見てみると、あなたは違ったイメージを持つでしょう。

    今日もひとりひとりの人生を背負って、電車にはたくさんの人を乗せて走っている。きっと今度電車に乗ったときには、目の前の見知らぬ人を応援してしまうような気がしました。

  • 年の瀬に起きた「地下鉄Ꮪ線内無差別殺傷事件」
    そこに居合わせた人にとっては、忘れられない衝撃的事件だ。
    それでも時は過ぎるし、それぞれに日常が戻ってくるはずだった、たまたま居合わせただけなのだから。
    しかし、目に見えない傷が癒えるのは簡単なことじゃない、元通りの世界には戻らない。
    間違いなく、人生が変わってしまっていた。
    そんな6人の、それぞれの物語。

    現実的ではない少し不思議なことが起きている話もあるので、そこが好みの分かれ目かもしれない。
    しかし、もし自分だったら、自分の大切な人だったらと思うと、その後の生活にどんな影響が出ていてもおかしくないのかもしれない、と思った。
    日常の中にいて、非日常を想像するのは難しいことですが、本作はとても読みやすかったです。
    表紙には事件直前の車内の絵、登場人物や車内の様子が想像しやすかったです。

    • 1Q84O1さん
      表紙何度も見ちゃいましたよw
      表紙何度も見ちゃいましたよw
      2023/03/27
    • あゆみりんさん
      そうそう、向井さんは背表紙に居ましたよね( ֊ ̫ ֊)
      そうそう、向井さんは背表紙に居ましたよね( ֊ ̫ ֊)
      2023/03/27
  • みなさんは普段電車を利用しますか?
    通勤や通学など日常生活で使う機会が多い方もたくさんいると思います

    普段から利用する電車の中で、もしこんな事件に巻き込まれたらどうします?

    自分が乗っている車両でいきなりある人がナイフを取り出し、奇声を発しながら振り回す!

    恐怖でしかないですよね…!
    本作はこのような出来事に巻き込まれた人たちのその後についての話である
    ・現場から逃げた男性は非難を浴びてPDSDに陥る
    ・犯人を抑えようとして殺された男性
    ・殺された男性に助けられた妊婦の罪悪感
    ・殺された男性に暴言を浴びせた女子高生の後悔など

    そして、このような社会的大事件の中心にある男性が存在している・・・
    その男性とは一体・・・、犯人?被害者?乗客?

    • あゆみりんさん
      おはようございます。
      私も昨夜、こちらの本を読了しました、同じ時に読んでいましたね❘ ω• )ジィー…
      ほん3さんが仰っていましたが、降...
      おはようございます。
      私も昨夜、こちらの本を読了しました、同じ時に読んでいましたね❘ ω• )ジィー…
      ほん3さんが仰っていましたが、降田天さんユニットだったんですね。
      2023/03/27
    • 1Q84O1さん
      ほん3さん
      読みましたよ!
      ☆3と☆4迷いました(^.^;
      けど、読みやすい作品でした♪
      ほん3さん
      読みましたよ!
      ☆3と☆4迷いました(^.^;
      けど、読みやすい作品でした♪
      2023/03/27
    • 1Q84O1さん
      あゆみりんさん
      同じ車両に乗っていましたかw
      事件には巻き込まれていませんか?w
      私は逃げて無事でした
      ε≡≡ヘ( ´Д`)ノ
      あゆみりんさん
      同じ車両に乗っていましたかw
      事件には巻き込まれていませんか?w
      私は逃げて無事でした
      ε≡≡ヘ( ´Д`)ノ
      2023/03/27
  •  年末に起きた〈地下鉄S線内無差別殺傷事件〉…犯人は、妊婦を切り付け助けに入った老人を刺殺、その場で取り押さえられた…。同じ時間、同じ車両に乗り事件に遭遇してしまった人々のその後を描くストーリー。

     もし、自分がその場にいたら…を考えずにはいられませんでした。きっと、トラウマになって電車に乗ること自体を身体が拒否しそう…。全編通してこの事件に遭遇したことで苦しむが、何とかその人なりの妥協点を見出していくような内容かな…ちょっとオカルトの要素もあったり…でも、この事件に遭遇しなくともいずれはそれぞれの登場人物が生きるために解決しなければならないことなのではないのかなぁ…と漠然と感じしました。この事件の犯人の視点がなかったことも残念に感じました…。私的には、この前に読んだ「すみれ屋敷の罪人」の方が好きです。

  • 地下鉄S線内無差別殺傷事件。
    〈突然、青年がナイフを取り出し女性の腕を切り裂き、助けに入った老人を刺殺した。
    取り押さえられ、事件は終わった。〉

    だがこの事件に関わった者たちにとっては、終わりではなかった。
    助けられた女性の罪悪感や老人に「死ねよ」と言った女子高生の後悔などなど別の視点から全6編の物語がある。
    人によって見え方が違ってくるというのが、よくわかった。
    「壁の男」に出てくる老人が繋がっていたとは思いもよらず、人の行動や気持ちなど勝手に想像して決めつけていることに恐ろしさを感じてしまった。

    世界の見え方は心しだいだ。
    そのことばが、響いた。

  • 図書館で借りました
    電車内での事件があったりと
    物騒な世の中になってますが
    居合わせた人達がどんな心境なのか
    興味があり読みました
    イメージとは違いましたが
    じっくり読めました


  • 執筆担当 鮎川颯
    プロット担当 萩野瑛
    作家ユニット

    漫画でユニット物はよく耳にするけれど、
    小説では手にしたのが初めてだったので
    期待して読み始めました。

    年末間近の混み合った地下鉄で起きた
    無差別殺傷事件。

    ひとつの事件に遭遇してしまってことで
    日常が一変してしまった人たちのその後を
    綴った物語。

    00 事件
    01 音
    02 水の香
    03 顔
    04 英雄の鏡
    05 扉
    06 壁の男

    話の軸に事件が絡んでいるので、どれもが
    少しずつ関係していますが、印象として
    『04』は事件との関係性がやや弱めの印象。
    それよりも、話の後半にかけ主人公が
    どんどん狂気じみてきて、それをひっくり返す
    オチは好きな展開でした。

    『05』は『03』からの流れ。
    再生へ向けた第一歩を恐る恐る踏み出そうと
    する前向きさと、まだ進めない戸惑いの間を
    行ったり来たりする揺れ動く感じが絶妙。

    ひとつの事件が直接的、間接的に影響を
    及ぼす様を描いた6つの物語。
    水紋が波及する様を思い浮かべました。

  • 実際にこういう事件がいくつも起きているわけで、それを小説にしてしまうには、良心の呵責というか、被害者への配慮や遠慮の気持ちが働いたのだろう。

    だから本書における被害者は、1話目の人物を除き、電車内の事件と直接的には関係のない部分で元々問題を抱えていたような内容だし、未来だの霊だの記憶喪失だの変な方向にも行ってしまっている。

    これだったら、電車内の殺傷事件をわざわざ絡ませなくても良かったんじゃないかと思う。
    各章の初出は「小説すばる」であり、0章だけ書き下ろしでこの事件を追加することによって各章をくっつけたのだろうか?
    初出の時は電車内殺傷事件は絡んでいなかったのでは?
    「小説すばる」を読んでいないから、わからないまま勝手に私は想像しているのだけれども。

    とにかく、本書に電車内殺傷事件はそもそも要らなかったと思う。

    ホストの章からは飛ばし読み。

  • 地下鉄で起こった殺傷事件
    その事件によって日常が人生が少しズレてしまった人たちのアナザーストリート

    犯人についてはほとんど書かれてません。
    明確にこの本の書きたいところはそこではないんだなと。むしろそこが良かったのかもしれません。許されざる犯罪者に焦点を当ててしまうと、思わず犯人に肩入れしてしまい、事件の被害者達への見方がブレてしまう気がしたから。

    そしてちょっとファンタジーさを強く感じました。ここは少し違和感を覚えましたが、作品をトータルで見たら、その方が最後の章「壁の男」の世界観にスッと入れたので良かったのかも。

    同じ事件に関わった人たちで各章が構成されている連作短編で読みやすいですし、ちょっぴり目頭が熱くなる内容でもありました。
    なぜ、被害に遭った年配の男性は犯人に立ち向かっていったのか。正義を振りかざす理由よりも、私は人間味があって作中の理由の方が好きでした。

  • 「すみれ屋敷の罪人」が面白かったこと、本作のテーマに興味を持ったことを理由に図書館で借りました。
    結論からすると、私が勝手に想像していたストーリーとは違っていて勝手に残念な気持ちになりました。
    単に、今読みたいテイストではなかったという意味でですが。

    ここ数年で数件起きた公共交通機関内での無差別殺傷事件をテーマに、程度の差こそあれ関わった人達のその後を描いた短編集です。
    読んでいる途中はホラーの要素も否定できませんが、読み終わってみるとファンタジーの方が強いかなといった印象です。
    私はホラーもファンタジーも好みではないので、この点が期待外れで評価も低めとなりましたが、心に刺さる方もきっと多くいらっしゃるだろうし、読むタイミングが違えば私ももう少し深く考えを巡らせたかもしれません。

    今まで読んだミステリー小説でも時折扱われる題材ですが、犯罪事件の犯人が逮捕され裁かれ、法律上の償いをした後も、被害者や関係者は事件を心に背負って生きていかなければなりません。
    その事について世の中に注目されたがっているとは思いませんが、面白半分の興味本位で放った一言が、彼らを生涯苦しめるかもしれないということは認識しておくべきですよね。世間を賑わす事件でなかったとしても。知った上で求められない限り放っておくことも必要なのかな。
    著者の狙いとは外れるかもしれませんが、読了後にはそんなことをぼんやりと考えたのでした。

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著者プロフィール

(ふるた・てん)プロット担当の萩野瑛(はぎの・えい)と執筆担当の鮎川颯(あゆかわ・そう)による作家ユニット。少女小説作家として活躍後、「女王はかえらない」で第13回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、同名義でのデビューを果たす。「小説 野性時代」掲載の「偽りの春」で第71回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。同作を収録した短編集『偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理』を2019年に刊行した。他の著書に『匿名交叉』(文庫化に際して『彼女は戻らない』に改題)『すみれ屋敷の罪人』がある。

「2021年 『朝と夕の犯罪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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