- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087718546
作品紹介・あらすじ
レジェンド調教師・角居勝彦氏絶賛!「引退競走馬を取り巻く現状を丁寧に取材した一冊。片野さんの馬に対する強い愛情を感じます」(元JRA調教師・一般財団法人 ホースコミュニティ代表理事)引退競走馬支援活動歴25年以上の沼田恭子氏推薦!「ここ数年で引退競走馬をめぐる状況が大きく変わりました。その現状と未来がこの本には書かれています」(認定NPO法人引退馬協会代表理事)レースで走る馬たちは、この後どこへ行くのだろう…?競馬業界の未来と社会をつなぐプロジェクトが今、動き出す!動物ノンフィクション作家が、競馬業界を歩いて目にした最新事情。抱いたのは“社会が変わる”大きな期待感だった。4年の歳月をかけて馬を愛してやまない人々の活動現場に迫った、渾身のルポルタージュ! 引退競走馬支援の存在を知ったときにまず感じたのは、この世界に注目することで“社会が良い方向へ変化する過程”をリアルタイムで追うことができるはず、という大きな期待だった。 この本は、二〇一九年から二〇二三年までの約四年間にわたり、馬の知識ゼロだった私が初めて馬の世界に足を踏み入れ、引退競走馬をめぐる世界の全貌を求めて各地を訪ね、様々な人に出会いながら、馬の魅力にグイグイと引き込まれていく旅の記録である。(「はじめに」より)【目次】はじめに第一章 突然だが、馬主になった第二章 馬と生きる新しい仕組み第三章 知られざるリトレーニングの世界第四章 馬と暮らした日本人第五章 ある地方馬主のリアルと挑戦第六章 ホースセラピーの力第七章 旅して食べて馬を応援第八章 社会が変わる交差点おわりに【著者プロフィール】片野ゆか(かたの・ゆか)1966年東京生まれ。2005年『愛犬王 平岩米吉伝』で第12回小学館ノンフィクション大賞受賞。『ゼロ! 熊本市動物愛護センター10年の闘い』『旅はワン連れ ビビり犬・マドとタイを歩く』『動物翻訳家 心の声をキャッチする、飼育員のリアルストーリー』『平成犬バカ編集部』『着物の国のはてな』など著書多数。話題を呼んだ『北里大学獣医学部 犬部!』は映画化、コミック化もされている。
感想・レビュー・書評
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競馬会で華々しく走った馬たちは、引退したら何処へ?
引退馬たちのその後を、関わる人々、引退馬たちの姿、
そして抱える様々な問題を捉えながら巡る、ノンフィクション。
・カラー口絵2ページ ・はじめに
第1章 突然だが、馬主になった 第2章 馬と生きる新しい仕組み
第3章 知られざるリトレーニングの世界
第4章 馬と暮らした日本人 第5章 ある地方馬主のリアルと挑戦
第6章 ホースセラピーの力 第7章 旅して食べて馬を応援
第8章 社会が変わる交差点
・おわりに 主要参考文献有り。
2019~2023年の約4年間の、引退競走馬を巡る世界への記録です。
2~3歳での引退もあるが、寿命は30年以上。
アスリートになるために幼少から特別な訓練を受けてきた
競走馬たちが、乗馬クラブや観光牧場、セラピーホースとして
医療・福祉施設等に迎え入れられ、セカンドキャリアに
つくためには、リトレーリングが必要になる。
TCCセラピーパークの存在。栗東トレセンの調教師の挑戦。
岡山乗馬倶楽部の代表とリトレーリングを行う人々、
住宅地で馬と暮らす人の試み。馬事学院のカリキュラムと
セリで売れ残ったサラブレッドのリトレーリング。
肥育場の馬に新たな馬生を用意する地方馬主の努力。
再びTCCでのホースセラピーの仕事をする馬と再会。
ホースセラピーの研究者である東京農大の教授からの話。
引退競走馬の養老牧場をつくる「奥能登・馬プロジェクト」
引退競走馬と農業を繋げる馬厩肥でのマッシュルーム栽培。
<ウマ娘>からの引退馬への支援の拡がり。
そしてJRAの変化。
実際のところ知らなかった世界だったので、驚きの連続。
馬って繊細な生き物なんだなぁと、しみじみと感じました。
でも、リトレーニングしてセカンドキャリアに繋げる人々の
行動と努力の熱さにも感動しました。
かつて引退後が行方不明だったことを考えれば、
課題はあれど、大いなる変化であり、進展だと思います。
引退競走馬の穏かな姿は癒しだなぁ。会ってみたくなりました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「犬部!」以来、出ると読んでいる片野ゆかさんの新作。今回は、動物好きの著者でもこれまでほとんど縁がなかったという馬について。いつも通り、いやいつも以上に、へぇ~知らなかったなあということがたくさんあって興味深かった。
そもそも捕食動物である犬や猫と違って、馬は被食動物なのだということからして、言われてみれば確かに!と目が開かれる。だから基本的に臆病なのだ。体が大きいからそういうイメージがなかった。そうなのか、ということが次々と出てくる
・背中に人間が乗れる動物はごくわずかで、馬、象、ラクダくらい。
・前足近くに乗れるのは馬だけ。だからあまり揺れず乗り心地がいい。
・日本は世界一馬券が買われている国。公営も珍しい。
・レースの賞金(5着まで)は8割が馬主、残り2割の半分が調教師に渡される。調教師が重要。
・日本で「生産」される馬のほとんどはサラブレッドで、年間数千頭に及び、競走馬として活躍するのはその一部。
・競走馬の引退後は、多くが所在不明。
・公営競馬の(莫大な)収益は、畜産振興などに当てられ、欠かせない財源となっている。
馬って誰もが知ってはいるが、身近ではない。競馬についても、近年そのイメージが変わってきているとはいえ、ギャンブルのネガティブな印象はぬぐえない。大体サラブレッド自体、生き物として不自然じゃないかという感覚はわたしも持っていた。そういったところにも十分目を行き届かせつつ、丁寧な取材が積み重ねられていて、具体的で実感を伴ったものになっていると思う。
かつては、引退競走馬については業界内で口にすることもタブーだったそうだ。近年その状況が大きく変わっていこうとしていて、まさに取材をする過程でダイナミックな動きがあり、そのことへの著者の驚きと嬉しさがストレートに伝わってくる。「犬部!」などの他の著作でもそうだが、片野ゆかさんの書かれるものには一本芯が通っていて、それは行動する人間への信頼だ。
「社会問題を考える際、その課題があまりに深刻すぎたり大きすぎたりすると無力感におそわれ、個人的に行動することは無意味と感じてしまう人は少なくない」
「だが社会問題が世間で注目され、改善へ向かうムーブメントに至った実例に目を向ければ、その原点には今できることを考え、行動した人がかならず存在している。同調圧力の強い社会では、こうした行動や発言を疎ましく思う人もいるが、それでも活動を継続させることで多くの賛同者を集め、それが世論や社会を動かす力になった例は数え切れない」
本当にそうだと思う。本書には、馬が好きで、行き場をなくした馬たちに何とか安息の地を与えたいと奮闘する人たちが出てくる。目の前の馬だけでも救いたいという必死の思いが、やがて事態を動かす力になっていくさまには、心を動かされるものがある。励まされる一冊だった。
・表紙の馬は著者が一口馬主になっているラッキーハンター。すごーくいい表情。
・著者の「馬ってかわいい!」という気持ちがあふれていて、そこも読みどころ。
・片野さんは犬好きで、馬と犬に共通点を感じている。どっちもカシコイ系。わたしはどっちかっていうと、コイツは何を考えてるのかいやたぶん何も考えてないだろタイプの牛や猫が好き。(猫好きの反論可)
・よく思うのだが、こと動物に関する議論が、しばしば感情的でヒステリックな応酬になってしまうのはなぜなのか。
・とか言いつつ、自分も実は、一部の人だとはわかっているけれど、みんなが動物(特に犬)好きだとは限らないということを理解しない人たちのせいで、犬好き一般に警戒心があり苦手にしている。 -
ホースセラピーという活動が印象に残った。自閉症の子を支援する活動も行われているという。そして、そこに活躍の場を移した引退競走馬も。
冒頭にあるが、確かに馬のことが嫌いな人は少ない。大きくて怖い、と感じる人はいるだろうが。犬や猫は、その大きさからも人間がコントロールする関係になることが多く、不幸にも犬や猫が傷つけられることもある。しかし、馬は力ずくでは動かすことができない動物。一緒に歩いたり乗ったりするには、馬の気持ちを理解して、自分の気持ちとバランスを取る、馬と折り合いをつける必要がある。だからこそ、馬との関係から心を癒やされたり鍛えられたり、ホースセラピーが成立するのだという。
日本には約7万頭の馬がいて、その約7割が競馬に出走するサラブレッド。そして、競馬業界では毎年約7千頭のサラブレッドが生産され、一方で約6千頭が引退するが、その多くは「行方不明」になっているという4年ほど前(2018-2019頃)の記事から取材を始めた著者。過去は競馬業界では、引退競走馬の問題は表立って口にすべきではないものとされてきたが、引退競走馬の情報発信を始めた現役調教師がいるという。そして、今では引退競走馬の問題は多くの人の注目を集め、新たな潮流をつくり、法律に影響を及ぼすまでになっている。
まだ活動は始まったばかりで、もう少し大きく多様な活動が必要だという。今のところ、引退競走馬の居所が拡大すると、乗馬用の居場所が減ってしまうという矛盾も起きている。中でも引退競走馬の行き先が決まるまで、一時的に預かる施設、勝つために追い込まれ、気性まで変わってしまった競走馬をリトレーニングする施設が重要だという。 -
引退競走馬についての、詳細な取材に基づくルポルタージュ。
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近くに乗馬クラブがあって、いつもぼけ〜っと見ていましたが、この様な世界に居たんですね。
競馬ファンの皆さんにも、是非読んで欲しいです。 -
アトロク2でクマスが紹介していたので読みました。
こんな世界があったのか!と目からウロコでした。 -
日本にいる馬のほとんどが競走馬。しかしレースに出て活躍できるのは一握りで、成功しても長い余生を安楽に過ごせるかどうか分からないらしい。
馬たちは、レースという人間の娯楽のために極限まで心身共に追い詰め、すり減らされていることを思えばいたたまれない。
本書はそんな「引退競走馬」を追ったルポ。理不尽な状況を変えようと、手弁当で取り組まれている方や、クラウドファンディングで支援する方など、少しづつでも改善しようとする姿には心温まる。
著者は本書の取材を始めるまで馬についてはほとんど知らなかったらしい。取材をしながら学びを進めていくことで、自分自身も驚きと感動を同時体験できたのも良かった。
読み終えると馬に会いたくなるな。どこにいけば良いのだろう。