イーダの長い夜 上: ラ・ストリア

  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087730531

感想・レビュー・書評

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  • 戦争により人は人の上に人を作ってしまった。その愚かな歴史に向ける作者の視線の鋭さと威力に激しく緊張を強いられる。免許取り立ての女子高生が初めて高速道路に乗ります、同級生を乗せてます、「あたしたち死ぬ時は一緒だね」苦笑い。 人間のぷるるんとした部分、若さ、情熱、魚の目玉から取れる膝の関節をなめらかにする成分、そういう物質を読書によって吸いとられました。老婆です。ガッチガチの関節でひた走る高速の車の中で進行方向からは決して目を背けられない。あれ、今の日本もそうか?運転する人は可愛い女子高生じゃない。。。

  • 最初、戦争小説で悲壮な物語なのに、びっくりするほど面白くて、文体の持つそれ自体の諧謔みと、
    戦争の悲惨さ、貧困であったり恐怖、無理解、無視、利己などが絡み合って圧倒された。しかも作者は登場人物を(描き方としては限りなくそれに近い)神の視座から見るではなく、彼らに寄り添い、寄り添いきれず分からなかった所は分からなかったとしか書かないジャーナリズムを捨てない。すべての登場人物へ向き合う母親のような、温かくも赤裸々な文体、生々しくて痛くて、でもどこかユーモアで優しい。ここまで登場人物へ愛を持って彼らの心を活写できる度量と才能を思う。

    いかにしてイーダはイーダとなったのか、一人息子だったニーノと未亡人となったのか、ウゼッペという父無し児を産んだのか……戦争前から始まる物語の語りの厚みに圧倒された。

    しかし登場人物の感情の深化はない。そこだけ、刹那に生きるだけをする戦争前後の人々という描き方なのか、他の著作を知らないので測りかねるが、外的影響に翻弄される戦争被害者達の思考停止とただ生きるのみが目標の動物をみるようで、痛々しく思った。それが戦争ということだ、と日常生活に寄り添いながら、最初にその年に起きた年表と関係ないようで関係ある彼らへの影響を想像させる本の作り、その構成も妙で、明晰な頭脳にどっぷり浸る読書でした。

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著者プロフィール

1912年ローマ生まれ。現代イタリア最大の作家の一人。本書でヴィアレッジョ賞、『アルトゥーロの島』でストレーガ賞。ほかに『歴史』『アンダルシアの肩かけ』など。夫はアルベルト・モラヴィア。

「2018年 『嘘と魔法 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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