印象派という革命

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087814965

感想・レビュー・書評

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  • 現代の私たちに最も知名度があり受け入れられている印象派のアウトプットが、宮廷画家から美術アカデミー・サロンとくる保守本流の流れのなかで、いかに異端であったか、よくわかった。書名の通りまさに革命。

    また、この時代の画家達の、例えば現実をそのまま描くこと、社会の闇を描くこと、約束ごとを破って描くことは、既存の絵画解説でもよく指摘されることではあるが、当書では、フランスの歴史の流れの中で、もしくは当時の社会の中でそれらのムーブメントを語っているため、より理解が深まる。なぜ歴史に残ったのかも理解できた。

    もちろんヨーロッパ社会も変わりつつあったため新しいうねりが定着したわけだが、アメリカ社会の新たな隆盛も印象派にとって追い風だったことは、なるほど、と。新興勢力にとって新興芸術はとても相性が良いようだ。

    加えて
    ・印象派の面々が極めて濃厚な関係性にあったこと。しかも、少なくとも当書での紹介では、それが良性で上品な関係性であったこと
    ・自分が勉強不足で寡聞にして知らなかった重要な女流画家
    を知ったことが、当書の収穫。

  • タイトルからも分かるように印象派の歴史と当時の画家の特徴がとてもよくまとめられている。
    巻頭に111枚もの作品の写真が掲載されており、本文を読みながら該当の作品を見ることが出来るのがありがたい。
    印象派についての概要を知るのにとても適した本だと思う。
    歴史だけでなく、著者の作品に対する考察も勉強になった。

  • なかなかよかったと思います。
    私も印象派の絵画は大好きな部類の絵ですが。
    なぜ日本人は印象派が好きなのかという解説の序章から
    フランス近代絵画に至るまでの歴史と流れ、
    特にアカデミーとサロンの成り立ち、またその特性
    の解説を簡潔に整理してあり、ここまでがベースとして
    の内容があり。そのあと各画家についての解説という
    流れと配分がなかなかいいと思います。この本1冊で
    大枠の流れがよくわかる本の構成になっていると
    思います。

    エドワードマネから
    クロードモネ。ルノワール。エドガードガ。
    ベルトモリゾ。メアリーカサット
    と印象派の主たる、みんな繋がっている仲間の画家
    の解説(作品・歴史・考え方・関係性など)と、
    巻頭にそこでの作品のカラー口絵があって非常に
    分かりやすいと思います。
    ここにセザンヌがあればなあと思ったりしますが。。

  • 印象派の印象が変わった。

  • 序章【なぜ日本人は「印象派」が好きなのか】に納得する。それまでの西洋の絵は、感性で「観る」ものでなく、知性で「読む」もの。日本のようにそのままの自然を描くのではなく、神話や宗教のシーンを使って理想を描くもの。西洋の歴史や文化を知らずには、ピンとこないのも仕方ない。が、せめてそういうものだということは知っておきたい。

    第一章はフランスの美術史、第二章以下は、マネ、モネ、ルノワール、ドガ、ベルト・モリゾと、著名な画家の人生が書かれている。印象派とひとくくりにされている中でも、それぞれの目指すことが違っていたこと、各人が家族ぐるみの付き合いをしていたこと、フランスの階級社会の様相など、興味深かった。

    「恋愛美術館」西岡文彦著と同じ人物の紹介も多いのだけれど、こちらの本のほうが淡々とした文。絵が、小さいながらも、ぜんぶカラーなのも良かった。

  • フランス絵画史を俯瞰できる好著。

  • 以前にこの人の著作を、内容はともかく読者をバカにしきったような文体から、「二度と読まない」と評したことがある。本書もタイトルで飛びつき、著者名を見て「あちゃー」となったが、まあしかたないかと読み始めた。
    結論から言うと、面白かった。そして筆致もだいぶまともだった。中盤以降に一部、ヨーロッパかぶれの選良主義がちらつくが、まあ我慢できる程度である。
    そして内容は、掛け値なしにすばらしい。豊富な図案と、その(それこそ)「印象」に頼らない理性的な論理展開。「わかる人にはわかる」だった絵画芸術を、言葉が読めて理解できれば「誰にでもわかる」に変えた功績は大きいだろう。感性偏重の排他性を退けた著者が、ヨーロピアン・エリート的な教養の有無をもって(昔の)アメリカ人や(古今の)日本人を揶揄的に描いているのは、皮肉と言うしかないのだけれど。これさえなければ、文句なしに星5つなんだけどねえ。

    2015/2/24〜2/25読了

  • 第一章で印象派が登場するまでのフランスの美術史を手際よく解説し、貴族からブルジョワジーに社会の主権が移っていくにつれて、印象派が広まっていったことがよくわかる。二章以降は、マネ、モネ、ルノワール、ドガ、モリゾとカサットと、代表的な画家の生涯と作品の変遷についての解説が続く。口絵に、たくさんのカラー図版が掲載されており、文中に引用がある都度、眺めるのが楽しいが、出来れば、もっと大きなサイズの図版にして欲しかった。モリゾとカサットのところが一番面白かった。

  • 以前、パリに行ったときオルセー美術館に行きました。
    素晴らしいな~と漠然と思ってみたものの、この本を知り、読み、たまたま開催中のオルセー美術館展を観に行ったところ、絵が語りかけてくる気がしました。
    歴史を知ることで観かたが全然違うんだなと。
    この木村氏の本は、絵に対して非常に興味が沸く本です。
    また絶対オルセーに行ってみようっと。

  • 昔好きだった絵が、全く違った意味を持って見えてきた。良くも悪くも。

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著者プロフィール

1966年生まれ。カリフォルニア大学バークレー校卒業。専攻は西洋美術史。ロンドン・サザビーズ美術教養講座にてWorks of Art修了。講演、セミナーなど開催多数。著書に、『名画の言い分』(ちくま文庫)、『世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」』(ダイヤモンド社)、『名画は?をつく』シリーズ(ビジュアルだいわ文庫)などがある。

「2019年 『カラー新書 ゴッホとゴーギャン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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