メッセージ (小学館文庫 はA 47)

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 88
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091916099

作品紹介・あらすじ

必見のシリーズ連作・第2弾!!

「あなたを愛しています」・・・世を儚む少女に、黒いマントの男はそう伝え、少女を救う。男は歴史の舞台にたびたび現れては去って行く。オイディプス王、カトリーヌ王女、慈善家の貴婦人・・・。男が彼らに告げたメッセージとは!?
表題連作「メッセージ」ほか、単行本初収録作品を含む「ここではない★どこか」シリーズ待望の第2弾!

感想・レビュー・書評

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  •  歴史編と現代編の比率が4:6。楽しく読めた。
     これまで決定版スフィンクスはギュスターヴ・モロー『オイディプスとスフィンクス』と思っていたが、萩尾スフィンクスの迫力に上描きされそうだ。
     現代編の天草夜羽根は沢田研二がモデルだろうか。『魔界転生』で天草四郎を演じているし。

  • 2006年から2011年の大震災直前までに描かれた作品群の全貌。主にメッセージシリーズと、浦島舞の片思いシリーズを収録する。シリーズ連作「ここではない★どこか」の第二弾単行本らしいが、この本に収録された二つのシリーズに関連はない。

    感想を長々と書けないので、メッセージシリーズの特に「オディプス」と「スフィンクス」について述べる。語り部は時を超えて現れる悪魔の右手(左手は天使?)を持つ黒装束の男である。彼は「運命」を知っている。男は有名なオディプス王にまつわる「運命」を全て知っていて、事が起きる直前に「その道を行くな」と伝える。時には手を掴んで強く諌め、時には道理を尽くして説得する。

    そこには神託を間違って解釈した者が引き起こす次々と連鎖する「悲劇」がある。有名な「父親殺し」と「スフィンクスの謎解き」の挿話はその間の出来事である。

    いくらメッセージを伝えようとも、運命は変わらない。萩尾望都は2007年に一度オディプス王が自らの運命を呪って目を潰す直前の話を描いた。そして二年後なんと同じオディプス王の若い頃から遡って、王と妃にさらには2人の運命を演出した使用人ペレに、メッセージを伝える。しかし、運命は変わらない。

    悲劇の原因はなんだったのか。黒装束の男は知っている。「あなたは知らなかったのです。罪はライオスとイカオステのものです」。しかしオディプスは言う。「今は知っている。ではその罪を知った者が(2人亡き今)最後につぐわなければならない」そして王は自ら罰する。オディプスが本当にするべきは、この神託も解釈次第では間違うこともあることを天下に明らかにすることであって、そのまま目をつぶしたまま荒野を放浪することではなかった。このままでは、真の原因(神託を信じる政治)はなくならないままそのまま続くだろう。

    神託による王の命令に背き幼きオディプスを山で殺さず、その後山で父親殺しをしたのがオディプスであったことを伝えなかったペレは、黒装束の必死の「真実を求める問いかけ」に応えず「いいえ、わたしやなにもしておりません。わたしやなにも見ておりません。そしてこれからのことも見たくありません」と言って去って行く。その事なかれ主義が、政治の革新を遠くに去ることに繋がるだろう。

    萩尾望都はなぜ、二度に渡り同じ挿話を使ったのか。

    「運命」という、人間に対する巨大な「課題」に対して、半神半魔のメッセンジャーである萩尾望都の必死の「訴え」が、ここにある。美しい絵に騙されてはいけない。そして時を超え、そのメッセージは、2011年3月11日にも届いただろう。何も変わらなかったけど。

    文庫の帯にはこう書いていた。
    「眠れない夜は、あなたのことを思い出す」
    歴史的瞬間か、うたたかの想いか。
    変幻自在の萩尾ストーリーズ!

  • メッセージシリーズと、ここではないどこかシリーズの再編集版。正直、「海の青」から続く現代の大学生の恋愛ものシリーズは、比較的最近の作品であるにも関わらず登場人物たちの描き方が昭和のままなので微妙な違和感が・・・。イケメンでモテモテの夜羽根(よはね)くんとやらの魅力が全く私にはわからなかった。やはり萩尾望都はSFや海外が舞台の作品のほうがしっくりくるかも。初期作品の10代からの愛読者としては絵柄の変化もたまにつらい。

    メッセージシリーズはオイディプスをモチーフにしたものなど世界観は好きだけれど、原話を比較的忠実になぞったつくりで、とくに目新しさは感じられず。唯一、スフィンクスに母性を感じさせたのは凄いと思った。

    作家の産みの苦しみを描いた「夜の河を渡る」は良かったです。

    ※収録作品
    「メッセージ」「貴婦人」「オイディプス」「スフィンクス」「花嫁」「海の青」「水玉」「シャンプー」「百合もバラも」「海と真珠」「夜の河を渡る」

  • ここではないどこかシリーズ第2弾

  • flowers掲載の12短編集。黒マントのメッセンジャー、オイディプスとスフィンクスの神話時代のシリーズ、人魚姫の舞と王子様夜羽根の大学生シリーズ、百合もバラも、夜の河を渡る。

    描かれ言葉になっているそのままと、重畳して重なる別のストーリー、シンプルなようでいて奥が深いです。

  • 浦島舞さんの話が好きです。普通の恋愛作品っぽいけど、こういう細かい感情を描けるのは、さすが萩尾先生だな〜と思います。最近の少女漫画ではなかなか見られない。
    人魚姫に例えているところ、めっちゃ上手いな!と思いました。

  • オイディプス王の作品の見方が変わりそう。確かに彼には避けられなかった運命だったし。
    何回も繰り返し読みたくなり、捉え方が変わってくる作品かも。

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著者プロフィール

漫画家。1976年『ポーの一族』『11人いる!』で小学館漫画賞、2006年『バルバラ異界』で日本SF大賞、2012年に少女漫画家として初の紫綬褒章、2017年朝日賞など受賞歴多数。

「2022年 『百億の昼と千億の夜 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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