美味しんぼ〔小学館文庫〕 (12) (小学館文庫 はE 12)

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091925121

作品紹介・あらすじ

▼第1話/餃子の春(前編)(中編)(後編)▼第2話/エイと鮫(前編)(中編)(後編)▼第3話/代用ガム▼第4話/贅沢な献立▼第5話/海のマツタケご飯▼第6話/生肉勝負(前編)(後編)▼第7話/続・生肉勝負▼第8話/猫とマーマレード▼第9話/不器量な魚
●主な登場人物/山岡士郎(東西新聞文化部員。膨大な食の知識を持つ。東西新聞の壮大な企画「究極のメニュー」の作成を担当)、栗田ゆう子(東西新聞文化部員。山岡と共に「究極のメニュー」を担当する)、海原雄山(名だたる陶芸家、画家であり、「美食倶楽部」を主催する食の探究者でもある。山岡の実父だが、激しく対立する。帝都新聞の企画「至高のメニュー」を担当)
●あらすじ/ゆう子の同期社員である森沢よし子は、餃子のチェーン店を経営する山脇にほのかな恋心を抱いている。その山脇が、ライバル店に対抗するため、新しい餃子に挑戦することになった。ゆう子は、よし子の恋を応援すべく、山岡に手助けを依頼。それがきっかけで、遂には雄山との「究極のメニューVS至高のメニュー対決・番外編」へと進展していく(第1話)。
●本巻の特徴/上記「餃子の春」のほか、富井副部長とその弟、そして亡くなった父親の話「代用ガム」。アメリカからの輸入オレンジやレモンが持つ人体への危険性を訴えた「猫とマーマレード」。主に金沢が本場である、見た目はグロテスクな魚「ゴリ」がテーマとなった「不器量な魚」など、全9話を収録。山岡と雄山の「究極のメニューVS至高のメニュー」対決では、番外編となる餃子の他、「エイ」「生肉」がテーマになる。
●その他の登場人物/大原大蔵(東西新聞社社主)、谷村秀夫(東西新聞社文化部部長)、富井富雄(東西新聞社文化部部副部長)

感想・レビュー・書評

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  • 1週間前の「本屋で待つ」の本屋「ウィー東城店」で購入した「エイと鮫」編を含む「美味しんぼ」本を久しぶりに読んだ。111巻まで続いた本作は、改めて漫画家花咲アキラではなく、原作者・雁屋哲の作品なのだと思う。

    ハッキリ言って、ストーリーはファンタジーの世界である。こんなおめでたい、のんびりした新聞社(東西新聞)は、日本の何処を探してもない。社主・局長・部長・課長などが究極のメニュー作りのために毎日右往左往し、担当者2人(山岡・栗田)は、他に記事を書いている気配が全くない。こんな新聞社ならば、絶対看板雑誌の休刊など決定しなかっただろう。登場人物も、みんな型にハマった人物像であり、美味しい料理を食べて、突然人生の方向を変える様な人たちばかりが出てくる。お涙頂戴形式も多い。

    では、そんな空想的なお話がどうしてあの様な長期連載を勝ち取ったのか?それは、1ヶ月か2ヶ月に一回行われたであろう「原作のための取材」が、徹底してリアルに拘ったからである。「エイと鮫」編では全67ページのうち、鮫(ワニ)料理を求めて広島まで行くのではあるが、それはたった12ページしか使われない。隣県の私でさえ、往復5時間かけた旅なのである。東京から行った彼ら(少なくとも4人は必要)は行くだけでどれだけ時間をかけたのか?(もしかしたら、行って帰るのには3日はかかる気がする)雁屋哲は、現地で飯を食べるということに徹底的にこだわる。それが最終編「福島の真実」編で、山岡鼻血事件をもたらし、炎上騒動までに発展したのだろう。鮫(ワニ)料理をプロデュースする小林さん(現在もお元気らしい)が実名と似顔絵の顔出しで発言し、雁屋哲が実際に料理を食べることが重要だったのだろう。

    鮫の肉は、広島の山奥が産地ではない。山陰や四国の海から持ち込んだものだ。漁港では鮫は食べない。アンモニア臭のクセがあるからだ。けれども日持ちがするから、奥備後と呼ばれる中国地方の山岳地域で食べられてきた。「わに料理は伝統的な食文化」なので、美味しく食べるには、此処にくるしかないのだ。私は昨年、奥備後のひとつ三次で、ワニプリンを手に入れて食べたけど、コリコリした無味無臭の食感しか記憶にない。しかしメインは鮫の刺身(臭みは抜いている)だという。または湯吹き、南蛮漬け、フライ、茶漬けにして食べて美味しいという。1週間前、私はウィー東城店に教えられて町内のスーパー(フレスタ)にサメがあると教えられて行ってみた。残念ながら見つけることができなかったけど、県南のスーパーとは、品揃えが全然違っていた(魚に詳しくないので説明できないのがもどかしい)のにびっくりした。この辺りは、全然違う食文化があることはわかった。

    ちなみに、エイについては韓国・光州で食べた。居酒屋の料理ではあるが、臭みをそのまま残す調理方法(その点では日本と考え方が180度違う)で、一緒に行った友人たちはそのアンモニア臭に僻遠して一切食べなかった。私は「食べ残しはしない」という信条があるので我慢して食べたが、美味しくはなかったけど、食べ慣れたらもしかしたらマッコリと合わせながら飲めばクセが癖になる味かもとも思った。

    「猫とマーマレード」編において、輸入柑橘類はOPPやEOBなどの発がん性物質を使っていながら米国内では禁止していたことを暴露している(1988年ごろ)。「日本政府はアメリカの圧力に屈してアメリカからの柑橘類の輸入を増やすそうです」「‥‥ありがたくて涙が出るわ」「政府当局、それに厚生省は、この問題について、国民にちゃんとした説明をするべきなんだ!」と山岡に言わせている。下手をすると、日本のほとんどのマーマレードや柑橘類を扱う会社を敵に回す描写である。漫画という下賎な書き物だから、当時は問題にもならなかったのだろうけど、こういう何者にも忖度しないスタンスがこの長期連載を支えていたんだと、今読んでいて思う。

  • 栗田さんの同僚の恋のためにチェーンの餃子店の問題から対決したり、馬主さんからの依頼で始まる生肉対決、食わず嫌いの映像作家のためのエイ、サメの料理、ジャムと日本猫、京極さんの海のマツタケなどなど。米粉の蒸し餃子作ってみたいなぁ。

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著者プロフィール

本名、戸塚哲也。1941年、中国・北京生まれ。東京大学教養学部基礎科学科で量子力学を専攻。卒業後、電通入社。3年9カ月で退社後、劇画原作者として活躍。1983年より『美味しんぼ』(画、花咲アキラ)連載開始(第32回小学館漫画賞受賞)。1988年より「教育難民」として、オーストラリア・シドニー在住。
原作担当漫画に『まさかの福沢諭吉』『マンガ日本人と天皇』(画、シュガー佐藤)、『男組』(画、池上遼一)、『野望の王国』(画、由起賢二)ほか多数。著書に『美味しんぼの食卓』(角川書店)、『雁屋哲の美味しんぼ列島』(日本放送出版協会)、『日本人の誇り』(飛鳥新社)、『美味しんぼ塾』『同 II』(小学館)、『美味しんぼ食談』(岸朝子と共著)、『シドニー子育て記』、『頭痛、肩コリ、心のコリに美味しんぼ』、『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』(遊幻舎)など。

「2017年 『さようなら!福沢諭吉 Part2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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