学校であった怖い話 1 月曜日 (ビッグコロタン)

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 83
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784092591318

作品紹介・あらすじ

学園ホラーの決定版、シリーズ第一弾!

鳴神学園……そこは、「七不思議」では数えられないくらいほどの伝説や噂で彩られている小学校だった。そしてなぜか「6年6組」には、不思議で個性的な子どもたちが集まっていた。

ある月曜日、その6年6組に、ひとりの転校生がやってくる。

6年6組の面々は、その転校生に、学校に伝わる怪談や超常現象、あるいは自分が体験した摩訶不思議な出来事を語って聞かせるのだった。

戸浦愛梨は、「隠された人形」にまつわる二人の少女とその母親たちの悲劇を。

松戸博士は、「全自動安全運転システム」というプロジェクトの背後にある巨大な何かの正体を。

藤森美沙は、「腕のいい美容師」をめぐる、みにくく恐ろしい女の情念と復讐劇を。

新堂大誠は、「死を呼ぶゼッケン」をつけて参加したマラソン大会での恐怖体験を。

風間祝は、「しりとり小僧」という妖怪を呼び出そうとした少女たちの惨劇を。

安西真奈は、鳴神学園の噂の中でも特に有名な「学園七不思議」の話を。

そして、少年少女たちの語りは、火曜日へと続いていく……




【編集担当からのおすすめ情報】
名作ゲームソフト『学校であった怖い話』のシナリオを手がけた飯島多紀哉氏による書き下ろし。二転三転する衝撃の展開、とどまることを知らぬ恐怖の連続。これぞ本家本元の学園ホラー小説です。
さらに、『ヘタリア』の日丸屋秀和氏がイラストで参戦!
最新最強タッグが送る、新機軸新本格ホラー。子どもも大人も恐怖の世界へいざなわれます。

感想・レビュー・書評

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  • 怖い話の裏側に見え隠れする錯綜。

    同名小説としては1995年に発売されたゲームソフトおよび小説『学校であった怖い話』がありますが、まさに、その遺伝子を汲む児童書シリーズということで、作者を同じくして世に送り出された作品です。

    高校に代えて小学校が舞台ということで、プロローグに当たる「ホームルーム」から〆の短編「放課後」の間に五本の「授業(短編)」を挟むという、小学校の一日の出来事ですという体裁を取ってこの作品は構成されています。
    おそらくは授業の合間に先生の目を掻い潜って怖い話を教えてもらっているのでしょうね。

    かつてより二十年近い時を経て、当時を懐かしむプレイヤーの幾割も、また執筆者「飯島多紀哉」氏も子持つ親となった頃合い、それは作中においても同じことというわけで。
    怖い話を教えてくれる六年六組の生徒たち「新堂」や「風間」といった名字から察せられる通り、彼らはかつての高校生だった彼らのご子息だったりするわけなのですよ。

    児童書のくくりから脱しないように、過剰な残虐描写などは控えめになっていますが、そこはトラウマメーカーとして名高い「学怖」ブランド。
    話によっては実は怪奇現象などなくて、実は人間の仕業だったのではないか? という解釈も成り立つ奥行きの深さを持たせていらっしゃるようです。
    恐怖が混じりつつ、表向きは感動できる語りの裏側に、実は人間の悪意や残酷な真実が隠されていたかもしれない、そんな裏話を聞かされた時はゾッとしました。

    ただし、霊や妖怪、都市伝説などの超常現象を否定する作風ではなく、恐怖でなく明確に感動を志向した作品も存在するなど、読者が持つだろう感情の幅は相当広いだろうとも感じました。

    また、個性豊かな面々が語り調で怖い話を教えてくれるという構成は本家と変わりないのですが、そこはやたら大人びていると言っても小学生、裏側に気づいていない子は結構多いです。
    かと思えば、意図的に情報を伏せて聞き手の主人公≒読者の思考を誘導してるんじゃないか? と思わせる曲者も多く、話芸の巧みさを感じましたね。

    それでは各話を簡潔に紹介してみます。ホームルームは放課後に合わせて。

    『隠された人形』
    表紙を飾る「戸浦愛梨」ちゃんが語りますのは、「学怖」界隈では頻出するモチーフでありながら、未だ語り切れる気配のしない「人形」にまつわる怖い話です。

    小学生だからこその、浅はかな思いから犯してしまったあやまちの過去と、大人になった今、対峙することを迫られるという、結構胸に来る話です。
    この辺の心理の語り方、共感のさせ方と追い詰め方が上手いんですよね。また、話の来歴に思いを馳せると色々な感情が湧きだしてくると思います。
    語り手の心理も、時には話以上に怖いことってあるんですよ……。

    『全自動安全運転システム』
    科学の進歩は日進月歩、けれどそれは人倫の枷を振りほどいた結果なのでしょうか? 語るのは科学を愛する小学生「松戸博士」くんです。
    実は完全なオカルト否定派かつ科学信奉者は、このシリーズで彼が初めてなんじゃないかと思います。
    けれど、ちゃんと怖い話として成立してます、ご安心あれ。

    作中で語られている完全自動運転車は2018年11月現在、現実においても未だ表には出てきてはいないのですが、たとえ実現したとしても色あせない恐怖がここにはあります。
    ……これって語り手の体験談なんですよね。
    しかも、結構核心にまで首突っ込んでるのに、科学の進歩にしか興味のないその思考が怖い。
    彼って思考は柔軟で発想力もあるんですが、人の心には疎くて科学以外は切り捨てる思考が幼くも、危ういというか。

    で、ある程度彼を信頼できるからこそ、たぶん作中で明確に付いただろう「ウソ」が否定しきれなくなって怖いというか、これも結構多層的な話ですね。
    話の核心はわりとすぐ読めるからこそのハラハラ感がヤバいです。

    『腕のいい美容師』
    女性の「美」に対する追求は妄執に変わり、やがて……。
    語り手はクールでツンケンとした語り口が光る「藤森美沙」さんです。彼女の本領は別にあるのですが、それは次の機会にでも。
    芸能界という華やかな舞台で脚光を浴びた女がより上回る美を宿した小学生に向けた嫉妬、というえぐい話でした。

    マスコミ権力が敵に回る恐怖も含んでいたので、怖さという意味では、長く艶やかな黒髪のように一番ストレートな話かもしれません。
    女の醜さとそれを上回る美しさがいかに残酷か、というのをしっかり書いてくださっているので、むしろ超常現象が絡んでくださいと懇願したくなりましたよ。

    それこそ美の女神アフロディーテの怒りを買ったとでも考えないとやってられないというか。

    『死を呼ぶゼッケン』
    『学校であった怖い話』でトップバッターを務めたであろう新堂誠、その血を受けた息子「新堂大誠」が語るのはマラソン大会での恐怖体験。

    早速、曲者しかいない転校初日の「月曜日」でようやくまともな小学生と出会えたというか、王道の怪談です。
    ついでに、さっきの授業で話をしてくれた藤森美沙さんの影が見え隠れします。ここが上手い。

    死のマラソンに迷い込んでしまった中で、藤森さんを信じるか否か? 完走に至るまでの、彼の真に迫った苦しさと迷いが直に伝わってくる名作です。
    頭は悪いかもしれないけど、ひたむきでまっすぐな彼の姿に勇気をもらえました。

    『しりとり小僧』
    話をしてくれるのは「風間祝」……。
    「風間」姓を聞いた時点で回り右したくなる気持ちはわかります。どうどう。
    何が何だかわからない人ともども着座してどうぞ。

    基本的にこのシリーズはホラーなのですが、「風間」を名乗る者の話は別の意味で身構えて聞くことをおススメします。
    実のところ、この話は以前彼の親族(?)が話したことがあるのでシリーズファンにとっては初出ではないのです、私にしても聞いたことはあります。
    にしたって脱力感は変わりませんでした、風間ってすごい。小学生特有のノリと風間が融合してやがる。

    ネタバレが意味を成さない、恐ろしい領域を読んだ気がします。

    『学園七不思議』
    導入であるホームルームでは担任の「百瀬毬絵」先生が舞台になっている「鳴神学園」の危険性を、話してるあなたの方が怖いよってノリで語ってくれたわけですが。

    ここ放課後、転校初日「月曜日」の終わりを飾るのは「安西真奈」ちゃんです。
    誰よりも怖い話の先手を打った愛梨ちゃんの友達というだけあって、彼女もまたツワモノでした。

    この学園に潜む真の危険について教えてくれながら話を聞いている「あなた」について踏み込みます。
    それは過去、語られなかったどこかの歴史が現在を侵食していく恐怖のように見えますが、果たして。
    そして、物語は「火曜日」へ……。


    ここからは余談になります。
    「学校であった怖い話」というコンテンツは息が長く、初代SFC版から脈々と受け継がれてきた怪談、2007年から「アパシー・シリーズ」と定義がなされて同人ゲームを中心にリリースされてきた歴史、双方の流れが混然一体となって存在します。

    そして、それらは舞台や基本設定は共有しつつも、一貫した歴史によって紡がれているわけではなく、時に交わったり離れたりと全貌は掴めません。
    けれども確かな世界観によって物語が紡がれているのです。

    不幸なことに「月曜日」から「金曜日」までの五巻で第一シーズンを成すはずだった、この小学館版『学校であった話』は「水曜日」で刊行打ち切りとなりました。

    けれど、筆者「飯島多紀哉」は元々ゲームクリエイター、父の後姿を見て同じ道を選んだ娘さんの後押しを受けて同人ゲームとしての完結を志向され、『小学校であった怖い話』と銘を変えて前述の「アパシー・シリーズ」のストリームのひとつとして組み込まれることになりました。

    まずはこの「月曜日」が早速2018年10月26日にPCダウンロード専用ソフトして移植・リリースされました。
    この流れが順当に進めば、完結も見えてくるそうです(2018年11月19日現在)。

    よって、このレビューは演出、新たなキャラクターデザイン、BGM、新規書き下ろしシナリオが施されたゲームを遊んだ私が書籍を再読した上で書いたものになります。
    どうしても本単独の評価という公平な形にはならないかと存じますが、どうかご容赦ください。

    一方で、原作者自ら味付けしたゲームとこの本を比べてみて違いを楽しまれるのも一興と思いますので興味がありましたらぜひどうそ。

  • 鳴神学園に転校してきた貴方。ここは七不思議ではかなわない程の怖い話を抱えている、とても大きな学園です。貴方は、クラスメイトから学園から生まれた怖い話を聞かされます。震えるほどに怖い話を、代わる代わる貴方に――。

    ***

    ファミコンやPCゲームで主に展開している有名なホラーゲーム「学校であった怖い話」と同じ作者の本。おそらく同じシリーズなのだろうと思われる。ゲームは未プレイなのでどのような繋がりがあるのかが、わからないが、前々から興味があったシリーズなので読むのを楽しみにしていた一冊。
    転校生であり読者である貴方に、鳴神学園にまつわる怖い話や、不思議な話を教えてくれる、6年6組のクラスメイト達。この語り手であるクラスメイト達が、紹介される怖い話に負けず劣らずの個性的な人物たち。クラスメイトのキャラクターが濃すぎて初めて読んだときはびっくりしてしまうかもしれない。 6人のクラスメイトが登場し、それぞれが1話ずつ語っていく。もともとが人が語っている怪談を聞くというスタイルのゲームなため、小説的な書き方ではなく語り口調。
    それぞれのキャラクターのしゃべり方で語られるため、いろいろな雰囲気の漂う怖い話達が楽しめた。ただキャラクターによっては、前置きが長く冗長だと感じることもあるかもしれない。しかし、その後に用意された怖い話は、どれも独特て粒揃いなのでぜひ読んでみて欲しいところ。全部で6話ある中で一番怖いと感じたのは一番最後のはなし。この話はかなりこのシリーズの確信に迫る話なので、あまり詳しく話せないのが残念だが、読んでいて思わず鳥肌がたったほど。次巻をまだ読み始めたばかりなので、なんとも言いがたいが、全部で6話あるいは7話構成で構成され、それぞれバラバラの話が5話から6話。その後にこの一番最後の話の続きか、その関連話を聞けそうな感じである。聞き手であった"あなた"も何か秘密を持っていそうでますます先の気になるシリーズである。 ただ、全巻購入のため、先が後何冊あるのか調べてみたが、どうやら3巻で止まってしまっているようだ。3巻のあらすじを見る限り、4巻も出るような書き方だったが、何か大人の事情があって続きがでなくなってしまったのだろう。最低でもあと2冊はでそうな構成だったため、続きが刊行されなかったことによって核心部分の真相は闇の中……。とかだったらいやだなぁ。

  •  『ヘタリア』の日丸屋さんが描かれた表紙につられて手に取りました。

     転校生である主人公に対して、クラスメートたちが順番に怖い話をしていくという体裁で、語り口調で書かれた短編集です。なんとなく既視感を覚えてよく見てみると、なんと著者の飯島氏はゲーム「学校であった怖い話」のシナリオライターで驚きました。
     
     ゲーム自体はスーファミソフトで結構古いので、私は5、6年前に実況動画で見て知りました。実写の濃ゆい登場人物や、バラエティに富んだシナリオが衝撃的でした。いろんな意味で。

     ゲームは高校が舞台でしたが、小学校に移っても「学怖」テイストは健在です。しかも本家のキャラの子どもが出てきたり、本家とリンクしてます。
     
     しかし、登場人物はほとんど小学生なのに、イラストだとどう見ても高校生くらいにしか見えない・・・。そういえばゲームも実写で自社のスタッフを起用していて、明らかに高校生には見えない人物もいました。そんなとこまで本家譲り・・・。

     話は結構怖いものもあったり、アホらしいものもあったりで、小学生向きかは分かりませんが、なかなかおもしろいです。「学怖」のファンならかなり楽しめるかもしれません。

  • 転校先の学園にはたくさんの怪談が存在していた。
    6年6組の友達が話しかけてくる。
    実際体験するのではないのでその距離感で直接的な恐怖感が少し薄いかも。
    でも、怨霊や怪異に襲われるとか血みどろのグロテスクとかもいいけど、嫉妬、憎悪、後悔、誤解、すれ違い、人の心の暗黒面が呼び起こす怖さや狂気も好きなので楽しかったです。エピローグではうまく読者を巻き込んでいる。
    扉絵の女の子の表情がいいですが視線が今一つかな。
    続刊も読んでみたい。

  • 1,2巻

  • イラストが日丸屋先生であり、学校であった怖い話という「タイトル」自体に惹かれて購入しました。
    鳴神学園が舞台であり、SFCの頃のキャラクターの子供らしき人物が登場するなど嬉しい演出も多かったのですが、内容としては児童向けにしてもお粗末すぎるかな、と。
    これならまだアパシーの方がずっと怖かったです。全編通して少しでも怖いな、と思えたのは新堂君の話くらいで、それも挿絵があったからだと思います。
    自分が小学生の頃に読んでいた、子供向けホラーはこんなに怖くないものだったのだろうか?と考えてしまいました。
    子供が背伸びして自分の考えた怖そうな話をしている、といった風に思えました。
    所々怖がらそうとしているのだろうと思いますが、ただ気持ちの悪いだけの描写があります。
    ホラー風味の、「学校であった怖い話」ファン向けサプライズ、のようなものでしょうか?

    ホラーや、SFC・Sなどの怖さを求めて購入するとがっかりすると思います。雰囲気は好きですが、ホラーとしては今一度でした。

  • 『学校であった怖い話 1995』の語り部である新堂誠の息子と風間望の息子(もしくは親類)と思われる少年が登場。

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