絶対音感

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (337ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093792172

感想・レビュー・書評

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  • ロシアの作家であるパステルナークが出版した二度の自伝。その大幅な自伝の修正は絶対音感に対するパステルナークの考え方の変化がもたらしたものだった・・・。絶対音感を技術的、科学的側面からだけではなく、それを持つ人の苦悩、それを持たない人の絶望、憧れといった非常に難しい側面でも描いています。私は、良い悪いは別として、絶対音感をもっていない人はもちろん絶対音感をもっている人の世界を理解することはできないけれども、同時に、絶対音感を持っている人もまた自分でそれを完全にコントロールできない限り(絶対音感をON/OFFできない限り)、絶対音感を持っていない人の世界を理解することはできないのではないかと思います。最上質のノンフィクション。

  • 読み始めた本は読破してやる、が信条のわたしが、目新しいことがなにも書いてなくて途中で放り出してしまった、数少ない本。

  • 絶対音感。小鳥のさえずりも救急車の音もドレミで聴こえる能力。
    あいまいなはずの人間の感覚に「絶対」なんてあるのか?
    著者は迷宮で次々に扉を開くように絶対音感という幻想の衣を一枚一枚はがしてゆく。広範な資料と取材を重ねて。
    軍事的に利用された時代から、今や世界で最も多く絶対音感の子ども達を量産していく日本。
    それなのにその演奏は創造性や表現の光彩に欠けるのはなぜか?
    壮大なノンフィクション。脳科学から絶対音感を解明しようとする章はやや難解だが、
    絶対音感を持つバイオリニスト五嶋みどりと龍を育てた母親の章は、よくここまで聞き出せたと著者の熱意が伝わってくる。この章に著者がたどり着いたものが表現されている。
    第4回ノンフィクション大賞受章。過去に読了。レビューを書くために再読。

  • 2004年4月3日読了。以下、過去の日記から抜粋。

    もうずいぶん前にベストセラーになった一作。
    めったに読まないノンフィクション。
    ものすごーく丹念に書き込まれていて面白いのですが、
    普段、読みなれていないだけに、非常に脳が疲労します。

    私は吹奏楽部に所属していましたが、音感は鈍いです。
    打楽器だからいいやと訓練を怠ったためだと反省しています。
    よほどずれれば分かりますが、多少のピッチのズレに気づけません。
    でも、友人には絶対音感の持ち主がいました。
    彼は木をコンと叩くだけで、楽々と音名を言い当てました。
    練習はほとんどしないのに、見事にファゴットを弾きこなしました。
    そして、他人の音程には神経質なまでにうるさい男でした。
    そんな彼に、劣等感を抱いた人間はたくさんいたでしょう。
    よくも悪くも目立つヤツだったので、敵もたくさんいました。

    現在、生徒の中にも絶対音感を持つ者が多少存在します。
    彼女達を見ていると、ぼんやりと彼を思い出します。
    共通するのは、生きにくそうな生き方をするなということ。
    絶対音感があるからというわけではないのでしょうが、
    やはり神経が繊細なのかなと思わざるを得ないのです。

    本の感想というよりも思い出話になってしまったかな。

  • 古本屋さんの店頭で見つけました。発行日を見てびっくり!月日の経つのは早いもんで。

    西洋クラシック音楽には必須!の伝説を持つ「絶対音感」を取り上げたノンフィクションです。評価が結構ばらつく本だとは聞いていたので、どういう筆運びかな?と読み進めました。冒頭のパステルナークとスクリャービンのエピソードは、少々もたつくものの劇的。そして、この本のすべてを言い表わしているような気もします。

    筆致は意外とニュートラル。日本で西洋音楽の究極の熟達としてとらえられた「絶対音感」は、戦時中、飛行機のエンジン音や潜水艦のスクリュー音探知に使われたといいます。それって人間レーダーじゃん、『レッド・オクトーバーを追え!』の世界だー!うーん、こういう「特定の音を読める」ようになるってのは通訳の訓練と似てる…との印象を序盤でうっすら持ちました。

    読めば読むほど、かじったことのある「通訳論」に近い感触を受けました。たとえば、先天的に絶対音感を持ってるんじゃないかと自負していた音楽家であっても、ジャズの不協和音を初めて聞いたときには音を当てられなかった、とか。結局、「知らない単語は聞けない、ただの音でしかない」という通訳のイロハとおんなじなのか、という感触が強くなります。それに、身に付けたはずの「基準」が通用しなかったときの衝撃も。各国英語の違いなんて、A音のピッチの微小な差を越えるよな、とちょっと思いました(笑)。

    この能力については、『妻を帽子とまちがえた男』のオリバー・サックスの発言が、私にはいちばん腑に落ちます。「究極の才能として与えられたもの」ととるより、「強固に埋め込まれた尺度のひとつ」が近いかも?最相さん、通訳の世界ものぞいてみてください(料理人さんや棋士さんでも可:笑)。ヘンに「絶対」と言い切っちゃうから、賞賛と誹謗を生むスキルなんでしょうね。「西洋音楽の十二平均律にもとづく音高認識能力」ってちゃんと言えばいいんだ(笑)。

    よく取材されているけれど、総花的でちょっと上滑りなところも?と思ったので、取材がんばり度☆4つ、題材掘り下げ度☆3つで、トータル…がんばり度を優先してもこの☆かなっと。つまみ読みでは方向を見誤る本、とだけは心得たほうがいいと思います。

  • 音楽やってると大体ぶつかる絶対音感
    五嶋家を中心に書かれている

  • 私に絶対音感があるので、つい手に取った本。大切にしている本の一つです。

  • 五嶋みどり、千住真理子、矢野顕子、大西順子、笈田敏夫ら絶対音感をもつ音楽家を取材し、その特異な世界を紹介しつつ、脳科学や神経科学の専門家たちにあたって分析を試みる。

  • 最相葉月さんのノンフィクションはなかなか面白い。ギターをやっているものとしては興味深い内容であった。

  • 高二。

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著者プロフィール

1963年、東京生まれの神戸育ち。関西学院大学法学部卒業。科学技術と人間の関係性、スポーツ、精神医療、信仰などをテーマに執筆活動を展開。著書に『絶対音感』(小学館ノンフィクション大賞)、『星新一 一〇〇一話をつくった人』(大佛次郎賞、講談社ノンフィクション賞ほか)、『青いバラ』『セラピスト』『れるられる』『ナグネ 中国朝鮮族の友と日本』『証し 日本のキリスト者』『中井久夫 人と仕事』ほか、エッセイ集に『なんといふ空』『最相葉月のさいとび』『最相葉月 仕事の手帳』など多数。ミシマ社では『辛口サイショーの人生案内』『辛口サイショーの人生案内DX』『未来への周遊券』(瀬名秀明との共著)『胎児のはなし』(増﨑英明との共著)を刊行。

「2024年 『母の最終講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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