栄光なき凱旋 下

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 160
感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (656ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093797276

作品紹介・あらすじ

終戦の時は近づいていた。アメリカ軍は日本軍を罠にかける秘密の作戦を立案する。その命令を受けたマットは太平洋の小島でジローと出会い、彼の過去の秘密を知る。収容所から日系部隊へ進んだヘンリーは、仲間とともにイタリア戦線へ投入され、過酷な戦場に身をさらしていく。やがて彼らが再会する時、運命は三人に残酷なまでの試練を与える。愛、友情、生と死。魂を揺さぶる感動のエンターテインメント巨編。

感想・レビュー・書評

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  • 図書館員に薦められて読んだ本。戦記物は好きだけど日系人の視点というところがなかなか面白い。詳細→http://takeshi3017.chu.jp/file7/naiyou5607.html

  • 第三部 疑惑
    訓練キャンプで知り合うヘンリーとマット。キャンプ内では少数の本土出身兵士と多数のハワイ出身兵士が、いがみ合い衝突している。同じ日系人の中でも経歴や育った環境により相手を理解することができずにいた。また、ジローは南方戦線にて人殺しである自分を抑えきれずに、酒や喧嘩に明け暮れていた。
    人種に限らず多数派と少数派、そこに階級などの差が生まれると支配や妬みが生まれ、人々の衝突へと繋がっていく。

    第四部 戦場
    マットとジローは南方の島で極秘任務にあたり、同じ日本人をその手で殺した。しかし、その任務は捨て駒を試すようなもので、現地ゲリラをも犠牲にするものだった。
    ヘンリーは第100大隊としてイタリア・フランスに送られ、過酷な戦闘の中で仲間を失い、自分自身も失っていった。その戦いも、戦果を競う師団長たちが、机上の駒を動かすような命令であった。
    この大戦は個人の妬み・恨みとは違った、国を動かす人々の思惑が始めたものであった。

    第五部 裁判
    ジローの裁判で再び会う、三人。ヘンリーは検事側の証人として、マットは弁護人側の証人として。そして第一級殺人罪で収監されるジロー。
    そして刑期を終えたジローに二つの封筒が・・・。



    日系アメリカ人としてのアメリカ社会での差別、戦争をしかけてきた日本への思い、戦争と言うものの犠牲。

    日本人としての戦争経験はテレビや本でなんとなく知ってはいるが、日系アメリカ人としての戦争は初めて知り、第100大隊についてもそのような部隊があったことに驚いた。

  • 「ドブ漁りを自覚する者は、懸命に聞こえのいい名目を探し、自らの行為を正当化しようと血眼になる」
    どの国家も個人も同じか。
    違うのはチカラをもつものと持たないものの差、そこは戦場でも平和な日常でも立場が違っても変わらなく立ちはだかる。
    それでも、それぞれのしっかりとした自らのアイデンティティというものはそれだけでは縛られない強さをもつ。
    それは日系アメリカ人として受けた日本やアメリカからの不当な扱いに対する感情を保つものであったのではないかと思う。
    最後のシーンは物語であるが、ジロー、ヘンリー、マットという日系アメリカ人を通してそのことを強烈に表していていろいろなことを考えさせられる、そして物語のエンディングとしてすごくよかった。
    星六つ

  • いかなる国も人種も宗教も是非を確定させることなく、登場者に強き信念を語らせる裏で弱き実態を与える。奇抜な構成、惹き付ける展開、迫力ある描写、納得の結末、秀作を得た気分。

  •  戦争って本当に悲惨だなと思います。
     生きて帰ってきても、心は傷ついている。この作品を読んでそう思いました。

  • 8月やから第二次世界大戦の話でもってことで読みはじめて1ヶ月。何とか8月中に読み終えた。日系人への差別やら強制収容やら、恥ずかしながらこの小説で初めて知った。主人公の三人のタイプがそれぞれ違っていて面白かった。ゴーフォーブローク(当たって砕けろ)の合い言葉を掲げて、過酷なヨーロッパ戦線を戦い続けた第442連隊。アメリカ生まれの日系二世とは言っても、やっぱり彼らはヤマトダマシイを持った人達なんだと思った。

  • 感想未記入

  • 読みおわってぐったり。今の日本人にはあまりにもかけ離れた状況。人種差別も戦争もない。だけど今、読めてよかった。知れてよかった。

  • 上巻に記載

  • 上巻でたっぷりと人物や背景に時間をかけた後、満を持したように戦争に突入していく下巻。もちろん戦争の描写もすごかったが、ほぼ全体のどの場面にもでてくる登場人物たちの心情吐露が迫真だった。これでもかこれでもかと襲い来る苛酷な状況に人間はどんなことを見、どんなことを感じるのか秀逸なシュミレーションのようで息が詰まった。そしてそのどれもが、自分だったらと考えさせられるリアリティがある。戦争は汚い、戦争は悲しい。しかし、この世界では血を流すことでしか得られないものが確かにある。たくさんの日系人たちが血を流したから今のアメリカでの場所がある、同じように今の日本の繁栄もまた、あの当時たくさんの血を流して倒れていった人々の亡骸を礎としているはずである。いい悪いの問題ではなくそういった深い部分も考えさせられるテーマの小説だった。

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著者プロフィール

真保裕一(しんぽ・ゆういち)
1961年東京都生まれ。91年に『連鎖』で江戸川乱歩賞を受賞。96年に『ホワイトアウト』で吉川英治文学新人賞、97年に『奪取』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞長編部門、2006年『灰色の北壁』で新田次郎賞を受賞。他の書著に『アマルフィ』『天使の報酬』『アンダルシア』の「外交官シリーズ」や『デパートへ行こう!』『ローカル線で行こう!』『遊園地に行こう!』『オリンピックへ行こう!』の「行こう!シリーズ」、『ダーク・ブルー』『シークレット・エクスプレス』『真・慶安太平記』などがある。


「2022年 『暗闇のアリア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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