- Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093863933
感想・レビュー・書評
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直木賞受賞作。上下巻ともすぐに読み終えた。
よかった。凄かった。
小説を読んでこんな感じを覚えたのはなかなか
ないかも。
『あなたが信じるものを、誰かにきめさせてはいけない』詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本の帯の文句(特に著名人のコメント)って大袈裟だなと思うことも多いのだけれど、この本については正直な感想だったんだなと思う。
西さんの作品は全部読んできて大好きなのだが、現時点で出せるものは惜しまず出してくれたんだと感じた。
同い年でもあるので、場所は違えど歩の育ってきた時代の雰囲気や、家族との確執、友人や恋人との関わり方、自意識との折り合いのつけ方・・・ひりつくような感覚だった。
強い強いメッセージ、確かに受け取って、わたしも歩こう!と思った。国際情勢や青年の起こした悲しい事件に心が乱される時期でもあったが、それも含めて人生は続くのだ。
西さんの受賞後のインタビューで「世の中には素晴らしい物語がたくさんある。どうか書店に足を運んで」と話されていたことも印象的だった。 -
物語はすごくシンプルで、伝えたいメッセージは単純だ。
けれど、これだけの長さにしないと伝わらなかったと思う。それだけの役割がある、この本の厚みだと思う。
アユムとタカコがこの先どうなるのか、すがるような思いで読み進めた。
自信をもって、「自分」を生きることの大切さ。「自分」で感じることの大切さ。「自分」しか、「自分」を生きてあげられない。 -
あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ。
自己主張の強すぎる母と姉を持ったことで、周りの空気を読んで常に受け身な主人公。そんな彼が年齢を重ねるにつれて、周りの人たちが自分の信じるものに従って生きていく様子に孤独感を感じ苦しむ。
下巻の中盤から終盤は自分自身と重ねてとても身につまされた。私は歩くんほどもてるタイプではなかったけど、リーダー気質の子と仲良くなって自分がなかったり、ダメな弟に対していい姉という立場だったり、人間関係においても基本的に受け身だったり、傷つかないように先に人を傷付けたり、プライドが邪魔して自分の本心が分からなくなったり、芯がなくて不安定になったりと、歩くんにめちゃくちゃ共感した。
今思うと、私が受け身にならず行動できたのは夫との人間関係が一番大きいかもしれない。後悔の多い人生だが、あのとき自分から行動してよかった。
そして、冒頭の歩の姉からの言葉は、私自身のこれからの人生において心に留めておきたいと思う。
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上巻ではそこそこ順調だった歩の人生も、下巻ではページをめくるごとに不穏になっていった。
「信じるもの」を見つけるまでの歩の葛藤は、他人事にはどうしても思えなかった。
何のあらすじも知らずに読んだから、上巻を読んでる時は「これはどういう話なんだろう?」って思ってたけど、これは歩が自分の信じられるものを見つけるまでのお話だったんだな、って納得した。一番忘れられないのは、上巻ではとんでもない破天荒姉ちゃんだった貴子が歩に語りかけるシーン。歩と一緒に、誰の人生も平等に素晴らしくて軽蔑なんてできないんだと思い知らされた。
「彼には彼の信じるものがある」と相手を尊重できる人間でありたい。 -
上巻は姉に共感していたが、下巻は歩に共感しまくりだった。
歩が思う自分の嫌いな部分は、私にも共通していたので、歩と一緒に落ち込んだ…
信じるものはまだ見つからなかったけど、
自分自身が信じられるものでありたいと思った。
【でも私は私を信じる。私が私でい続けたことを信じているの。だからもしそれが間違いだったとしても、もう私は壊れないわ。私は誰かに騙されていたわけでもない、誰かに任せていたわけでもない。私は私の信じるものを、誰にも決めさせはしないの。】
お姉ちゃん、かっこ良すぎるやろ。最終的には、自分もこんなセリフを言えるように生きていくことに努める。
あと、最終章では、本との向き合い方を学べた。
今後の参考にする。
サラバ!マジ最高〜! -
生きていることを、西加奈子らしく肯定してくれる物語だった。
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「わたしはわたし」そう声に出すと、少し意外なくらい気が楽になる。10代の頃そう気付いて以来、これまで何度口にしたかな。裏を返せば、いつの間にか人との距離感をはかったり、比べたりしてきたからだろうと思う。
「サラバ!」には自分の、自分自身の人生を生きるとは?ということが丁寧に時を積み上げて描かれている。主人公の歩、姉貴子、そして両親の人生を時には笑い、呆れ、ハラハラしながら読み進めるうち、しだいに自分は何を選択し、どう生きるのかを問われるような思いになる。
物語の重要なテーマである貴子のある言葉は、とてもシンプルだけど力強い。またひとつ、時折自分に問いかける言葉に出会った気持ち。貴子を通して、人がどうあろうと、自分自身から目を離さず、真剣に迷い、惑うことは尊いなぁと思った。
彼ら家族だけでなく、すべての登場人物の実存感がすばらしい。途中、歩が親友とエジプトの町ですごすシーンは本当に素晴らしくて、ワクワクして泣けてきて、歩になりたい!と思った。