ガラパゴス (下)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093864336

感想・レビュー・書評

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  • すごい作品。
    震える牛を超える衝撃で、読みながら自分の価値観が変わっていくような、ある意味怖い作品だった。
    日本はこのままでいいのか…自分は何も知らずに安穏としていたのか、とやるせない気持ちで苦しくなった。
    「世界で一番企業が活躍しやすい国とは、世界で一番労働者がこき使われる国である」という言葉が、堪えた。

  •  「しかし、働くってのはそんなに難しいことなのか?」

     今でも思い出す胸糞悪い6年前の就活のころ、このセリフと全く同じことを思っていた。
     朝が来るのが怖くて不眠に陥り、毎朝トイレで吐いていた。
     最後の最後、30社以上惨敗した挙句の二次選考に数打ちゃ当たるで唯一内定勝ち取った会社に、今もいる。
     あんな思いは二度とご免だ。転職する奴等の気が知れない。
     
     あの時以来、俺は俺に期待しちゃいないし、誰も俺には期待しちゃいないと割り切れたから、楽になれた。
     最初から自分にも他人にも社会にも何にも期待してなかったら楽だったのにな。

     しかし、もしもあのときに内定が取れていなかったら。働くことができてなかったら。
     今の俺は何してるんだろうな。


     本書の表紙は働く奴隷たちのレリーフがデザインされている。
     ガラパゴス、グローバル標準からかけ離れた日本製品を揶揄する言葉だ。
     その言葉の裏で、使い潰されている派遣労働者がいる。
     コストカット、不景気、リストラ、その裏で何万人の、まともに食えない連中がいるのか。

    「俺はどこまで運が悪いんだよ」
    「執行猶予が付こうが、実刑になろうが、どっちにしても俺はまたアルバイトからやり直しなんだよ!」

     追い詰めた末に殺人犯が叫ぶ最後のセリフは最後まで利己的なものだった。
     この世の中、自暴自棄に追い込まれた末の無差別殺傷事件増えてないか。
     これって、正常な社会?

  • 一気読みでした。
    仲野さんと、田川さんが人情味あふれるいい人で、とても辛く、悲しい結末でした。読んでみれば、普通の話ですが、そこここで今の日本の危うさを実感し、勉強になりました。

  • 田川刑事が粒ほどの遺留品から犯人を特定していく流れはとても面白く、あっという間に読み終えた。宮古島から岩手までの動きもダイナミックで楽しかった。著者の次作が楽しみ。

  • 想像が及ばない

  •  この本が発売されてから8年もたっているのに、世の中の仕組みは全然変わっていない。派遣切り、大企業と政治家の癒着、日本社会にどっぷりと染みついた悪しき習慣が、労働者の賃金が上がらない理由であることは明白である。先日もとある自動車メーカが取引先企業に対して支払金額の減額を強制していたとのニュースがでたばかりである。何気ない政府の対策の裏にはこんな舞台裏が潜んでいたのかと思うと、消費者として猜疑心しか生まれない。昔は山崎豊子先生をはじめ、結構切り込んだテーマを得意とした作家が多くいたが、徹底した取材力が求められることもあり最近は少なくなってきたようで残念である。
     相場先生には、是非今後も難しいテーマに挑戦していただきたい。

  • この作品がフィクションであると分かっていながら、どうしても全てがフィクションとは思えず、我々の子供達が大人になったときに日本はどうなってしまうのだろうかと不安感に苛まれた。
    非正規雇用やフリーランスの労働者が増えていく中でこの作品にあった事件は現実にも起こりうる可能性を秘めている。
    そんな警鐘を分かりやすい文体、展開で表現される相場氏の実力に唸った作品であった。

  • ドラマを見たので、話は分かってるだけど、それでも十分に読ませる文章力は素晴らしい。主人公の田川刑事にすごく魅力を感じる。推理小説とカテゴライズしたが、実際には社会小説で、現代日本の問題を物語の形で描いている。この話が出てから7年経つが同じ道を日本は歩いているなあ・・・ 孫たちの時代が心配

  • やっぱり面白い。
    きっと事件はその次で社会の中身が訴えたいことなんだろうな

  • 今まで考えた事もない派遣の実態や杜撰なデータ改ざんを取り上げて難しい用語はなく丁寧に説明されている。久々に真剣に考えて読んだ本。

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著者プロフィール

1967年、新潟県生まれ。専門学校卒業後、時事通信社へ。経済部記者を務める。2005年『デフォルト 債務不履行』で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞しデビュー。『震える牛』がベストセラーに。『血の轍』『ガラパゴス(上・下)』『不発弾』『トップリーグ』他、映像化作品多数。主な著書に『ファンクション7』『偽金 フェイクマネー』『復讐の血』『共震』『アンダークラス』『Exit イグジット』『レッドネック』『マンモスの抜け殻』『覇王の轍』がある。

「2023年 『心眼』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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