- Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093864848
感想・レビュー・書評
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図書館の予約6ヶ月待ちで.ようやく手元に届いた
期待を裏切らない文句なしの五つ星!
田中花実ちゃん、「健やか」という言葉がこんなにぴったりくる子がいるだろうか
決して恵まれた環境とは言えないが、明るく、常に真っ直ぐで、しっかり自分を持っている
何よりお母さんを愛し、生まれ変わってもお母さんの子になりたいという何と清々しいことか
そして、花実ちゃんを女手ひとつでこんな子に育て上げたお母さんもすごい
生まれ変わったらなりたいものは虫、尊敬する人は水田歩道橋下のホームレスのおっさん、好きな言葉は「一山当てる」「元が取れる」・・・と真面目なんだかふざけているんだか分からないけれど、信用金庫でもらった手帳に虐待されて亡くなった子供の名前と年齢を記し、手を合わせ悼み、少しでも魂が救われるように祈る姿は、まぎれもない愛情深い母の姿だ
深く心を打たれた
また、14歳の子が書いた含蓄のある言葉におばさんは、度々うーんと唸ってしまった
その極め付けの一つ
もし死にたいくらい悲しいことがあったら、とりあえずメシを食え。そして、一食食ったら、その一食分だけ生きてみろ。それでまた腹が減ったら、一食食べて、その一食分生きるんだ。そうやってなんとかでもしのいで命をつないでいくんだよ
私が一番好きな場面は、
引きこもりだった賢人が桃の種を埋めながら、花実に、幼い頃家族三人で桃の花見をした思い出を語り涙を流すシーン
花実が、満開の桃の花の下でみんなでお花見をしている場面を想像するシーン
このシーンのように花実ちゃんもお母さんも大家さんも大家さんの一人息子の賢人さんもみんな幸せになって欲しい
それにしても14歳の少女にこんなに感動し、泣かされるとは
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16歳までは普通作家にはなれないものだが、例外が出た…。
というより、ここも三年早くなったのか?
すんばらしくうまい!
はじめから完成されてる。
でも、主人公は確かに子どもだけど、うーん、これは児童文学なんだろうか、大人の小説なんだろうか。
でもなんでかあんまり取り沙汰されてないね。
うますぎる子どもはお嫌いですか?
って感じ?
でもって、小学生や中学生がこれを読むかっていったら、それもうーん、だな。
なので
ぜひ!!
次の芥川賞を彼女にあげて欲しい。
2018/02/23 更新 -
読んだ後の爽快感、素晴らしい、13歳の中学生が書いた作品とは思わなかった。作中に出てくるセリフがおもしろく的を得ている。「なんだかメスのカバが、神様に頼んで一日だけ人間にしてもらったらこうなりました、という仕上がりだった。」「もし死にたいくらい悲しいことがあったら、とりあえずメシを食え。そして一食食ったら、その一食分だけ生きてみろ。それでまた腹が減ったら、一食食べて、その一食分生きるんだ。そうやってなんとかしのいででも命をつないでいくんだよ」食べることに関してのユニークな発想もおもしろいです。
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筆者は中学2年生。
完成度が高くて驚く。
主人公が小6と、ほぼほぼ実年齢なこともあり、子どもたちの内面が具体的でリアル。
たくましくて明るい、母と大家さん。
女子には嫌がられているけれど、味のある木戸先生。
個性的なキャラがたのしく、卑屈にならず、悲観もせず、明るくテンポがいい。
花実が見せる、ユーモアのある鋭いツッコミがおもしろい。
胸の痛むような問題もあり、最後は泣けた。 -
小学校6年生の女の子の目線で書かれた短編4話と、同級生の男の子の目線の「さよなら田中さん」1話。貧乏な母子が明るく楽しく、時に切ない素晴らしい話ばかりです。
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関西風のユーモアと大人びたペーソス、マジで読ませます。大人が子供の世界を借りて書いたとしか思えません。大人の世界、子供の世界、貧しい家庭、リッチな家庭と目配りが老成しています。どんな作家さんになっていくのか楽しみです。
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筆者は14歳の女子中学生。
小4~小6まで、小学館の「12歳の文学賞」史上初3年連続大賞受賞。
フレッシュで、爽快感を感じる。
実際に読んでみて、「実力も十分。」と感嘆しました。
まず、文が生き生きしている。
志賀直哉好きというのもうなづけるような短文の積み重ねに好感が持てます。
そして構成がきちんとしている。
主題に対して伏線もあり、物語の最後に回収され、主題を際立たせる効果を発揮する。
主人公の花実は小6なのだけれど、筆者が同世代であるという強みをいかんなく発揮している。
小学生といえば親や先生など世界が狭いがその狭いながらに世界が広がっていること。「大人」が書く小学生と違い、子供目線の確かなリアリティが感じられる。
そして出てくる物語はすこし悲しく、基本的には明るい。ここからフレッシュなパワーをもらえる。
これはパンクロックを若い人がやってこそ、その疾走感をリアルに感じられるのと同様なのでは。
ねじれていない力、はち切れるパワーを感じる。
自分の小学生時代を思い出すような、メランコリック時代に突入する前の、春の時代のような。
ベースにあるのは、主人公を含めた登場人物たちの優しさ、そしてポジティブな気持ちだと思う。貧しい中にも、あっけらかんとおかしく生きていくお母さん。
それぞれの登場人物の背景やキャラクターが上手くまじりあっている。
そして、男の大人たちがすべて優しい。
そして、会話により主人公たちの関係が生き生きと描き出される。
大家さんの子供と、距離感が知事待っていく様子。これはこの会話をみただけで、信頼感が増していく様子が手に取るようにわかる。
文章自体も最後の、「さよなら田中さん」は、最後の方にかかれたのか、明らかに文章の流れがきれいになっている。視点も男子に変更されていて、一段スキルが上がっている印象。
「さよなら田中さん」の最後のシーン
ああ、かっこうの声がする。田中さんは、本物のかっこうの鳴き声を聞いたことがあるかな?とてもいい声だよ。森の奥から響いてくるみたいだ。
というセリフには感動した。
ただ、技術が増して、感動できるような話が書けるようにどんどんなると思うけれど、初期のような淡々と面白くあっけらかんとしたトーンの中に、ほの哀しいエピソードが少し混じるような、一歩引いたクールな部分をきちんと残しながら、成長していて欲しい。
きっと、すごい小説家になれると、思います。
次回作にも期待。 -
神童だわ。
これは神童だ…中学生が書いたなんて絶対思えない完成度…最初から最後までのめり込んだ。
るりかちゃんは日々何を思って生きているのだろうか?
どうすれば中学生なのにこんな成熟できるのだろうか…
個人的には、信也君のその後が気になる。
死にたいくらい悲しいことがあったらとりあえず飯を食え。その言葉が中学生から紡ぎ出されたことに衝撃を受けた。なんと心強く人を支えて行くのに相応しい言葉なのだろう。
中学生がこう言うんだ、大丈夫だ!
そんな気がしてくる