鳴かずのカッコウ

著者 :
  • 小学館
3.44
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本棚登録 : 449
感想 : 44
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  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093866033

作品紹介・あらすじ

インテリジェンス後進国ニッポンに突如降臨

公安調査庁は、警察や防衛省の情報機関と比べて、ヒトもカネも乏しく、武器すら持たない。そんな最小で最弱の組織に入庁してしまったマンガオタク青年の梶壮太は、戸惑いながらもインテリジェンスの世界に誘われていく。

ある日のジョギング中、ふと目にした看板から中国・北朝鮮・ウクライナの組織が入り乱れた国際諜報戦線に足を踏み入れることに――。


<初対面の相手に堂々と身分を名乗れず、所属する組織名を記した名刺も切れない――。公安調査官となって何より戸惑ったのはこのことだった>――『ウルトラ・ダラー』『スギハラ・サバイバル』に続く著者11年振りの新作小説。

感想・レビュー・書評

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  • インテリジェンスに弱いとされる日本の諜報を題材にした小説です。
    安定した収入を目当てに公務員を志し、公安調査庁に入庁となった梶壮太を主人公に物語は進みます。
    公安調査庁は人材や財源も少なく、他類似機関と違い武装しません。
    地味である割には危険な仕事であるインテリジェンスの世界を、多くのスパイ小説とは異なり泥臭さを常に漂わせながら描いています。
    梶壮太は単純に安定した生活を望んでいましたが、流れができてからはエージェントとして淡々と業務を遂行していきます。
    ここまで飄々とした主人公も珍しいのですが、そんな彼だからこその結末が待っています。
    スパイ小説とはいえ難い内容ではなく、読みやすい筆致で楽しく読了できる一冊。

  • どうしても、『ウルトラダラー』のような興奮を期待してしまうので、肩透かしの感がある位、話は淡々と進む。
    ブラッドレー君の登場は、おっと思った。
    中国の台湾侵攻、なんかは、ホントの話として遠くない将来に起こるのかなあ。。。

  • もう50歳を過ぎた立派なおばちゃんだけど、
    読了後、頑是ない幼子の様な気持ちになってる。
    平和で安全だと信じてた世界の裏で、
    悪意や企みが進行していて、
    それを追いかける人々がいて。
    親戚が集う正月が一瞬の地震で倒壊し、
    焼失し波に呑まれて無くなってしまう様に、
    平和な世界は一瞬の油断で消えてしまうのかも。
    自分の立つこの世界は、
    実は危うい蜘蛛の巣の上の幻影なのかも。
    そんな気分にさせられました。

    おばばの出雲弁は微妙に違ってて、
    同じ名前の別の土地の話の様に感じるのに、
    彩雲堂の若草なら分かるよ?という変なリアリティ。
    フィクションですよ。なんちゃって。騙された?
    裏の裏の裏の裏の…結局はいまはどっち?
    一つ隣に住んでるあの人は、もしかして潜入捜査中?

    そんな不気味さも面白く読みました。
    著者の他作品も読もうと思います。

  • とても良かった。
    身分を明かせない公務員がいるなんて思いもしなかった。
    地味な主人公の人柄が魅力的なこと、個性的な上司や同僚、神戸の街の情景が有り有りと描かれている様子が素晴らしかった。特におばばの存在は遠くから遠隔操作されている様な面白さ!
    茶道の席や、茶器や着物など道具の繊細な表現も。。。まるで千利休の世界。

    内容は難しいけれど、自分が知らない世界をまた一つ知ることが出来た。

  • 手嶋龍一

  • なかなか、このような工作員?なんというか気密機関の人の話って読んだことなかったのですごく不思議だった。最後、このあと何が起こるのか気になったので第二弾が出たらまた読みたい。難しいけど読んでもらえるから読みおられた本かな。

  • 読書備忘録619号。
    ★★★★★。
    めっちゃおもろかったぁ!
    「初対面の相手に堂々と身分を名乗れず、所属する組織名を記した名刺も切れない――。公安調査官となって何より戸惑ったのはこのことだった。」
    神戸を舞台にした公安調査庁職員の和気あいあいとした国際諜報活動物語!
    まず、神戸が舞台。道々、街並みの表現が完璧に脳内に再現される。それだけでも楽しい。しかも私が住んでる六甲アイランドが諜報の舞台に!小磯良平記念美術館で○対が接触!住吉川ぁぁぁ!

    物語のプロローグ。
    ウクライナで娘の肝移植をなんとか実現したい父親の悲痛な願い。
    根室で密猟の魚介類を捌く仲買いの男。
    ロンドンのバルチック・エクスチェンジ(船舶売買)で売買が禁止されている自動車運搬船の売買の話。
    脈略のない3つのエピソード・・・。

    そして物語は始まる。
    神戸の公安調査庁事務所に就職した梶壮太。警備・公安と違い組織は弱小。ただ、警備・公安は国内のテロなどを防ぐ内向きの組織。公安調査庁は、規模は小さくても国際諜報がターゲット。
    壮太が住むジェームス山で、とある建設現場が目に留まる。施主エバーディール。それはかつて、壮太が北朝鮮船舶を追いかけていたいた時に背後にいた船舶ブローカー。怪しいところは見つけられなかったが、なぜエバーディールが建設に?
    そこから、再び地味で地道な調査と諜報が始まる。
    上司の柏倉頼之、同僚でアラビアのロレンスに惚れこみ公安に入ったMissロレンスこと西海穂稀。個性的なキャラクターが地味地味地味の活動を展開。めっちゃおもろい。
    そして、とうとう見えてきたエバーディールの多面体の実態。そこには北朝鮮、船舶解体業を請け負うバングラディシュ、西欧とロシアの間に揺れ動くウクライナ、海洋強国を目指す中国。
    プロローグの3つのエピソードが一つの絵になる。
    しかし、彼らの想像を超えた実態が!そこには米国ラングレーが絡む・・・。表の外交手段では絶対に交渉不能な外交の実態があった・・・。
    そして更に更にMI6の登場!ジェームス・ボンドか!笑
    違う違う。作者過去作の登場人物スティーブン・ブラッドレーその人ということみたい!
    これでもかというくらいのエンターテイメントサービス!

    ネタバレはこれくらいにしておきましょう。
    フルコースディナーのようなエンターテイメント小説。超絶おススメです。
    そして、シリーズ化として次作に期待。

    • ほくほくあーちゃんさん
      地元が舞台だとテンション上がりますよね!!
      エンターテイメント小説だなんて期待値上がりまくりです(*´艸`*)
      地元が舞台だとテンション上がりますよね!!
      エンターテイメント小説だなんて期待値上がりまくりです(*´艸`*)
      2021/11/13
    • shintak5555さん
      そうなんですよ。毎日ように歩いている街角の描写をされると読んでて悶えます!
      そうなんですよ。毎日ように歩いている街角の描写をされると読んでて悶えます!
      2021/11/14
  • 続きがあるなら読んでみたいと久々に思った

  • 決してドラマや映画のザ・CIAといった華やかさはないが日本の情報組織、公安調査庁のリアルが読み取れる。
    また教養に富まれており刺激も受けた。

  • 神戸が舞台というのもあって面白かった。情報機関のなかでの公安調査庁の位置づけも興味深い。「公安」で括れない構造なので。
    ネタバレの面で何も書けないけど、とても興味深い結末。米中覇権抗争下で、読んでおくべき内容。小説としても面白いけど、それ以上に。

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著者プロフィール

手嶋龍一  Teshima Ryuichi 外交ジャーナリスト・作家。9・11テロにNHKワシントン支局長として遭遇。ハーバード大学国際問題研究所フェローを経て2005年にNHKより独立し、インテリジェンス小説『ウルトラ・ダラー』を発表しベストセラーに。『汝の名はスパイ、裏切り者、あるいは詐欺師』のほか、佐藤優氏との共著『インテリジェンスの最強テキスト』など著書多数。

「2023年 『ウクライナ戦争の嘘』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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