インテリジェンス武器なき戦争 (幻冬舎新書 て 1-1)

  • 幻冬舎
3.48
  • (65)
  • (174)
  • (260)
  • (26)
  • (10)
本棚登録 : 1345
感想 : 182
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344980112

作品紹介・あらすじ

東京のインテリジェンス市場は今、沸き立っている。北の独裁国家が核実験に踏み切ったのを機に、情報大国は第一級のインテリジェンス・オフィサーを日本に送りこんでいる。彼らの接触リストのトップには本書の著者名が常にある。情勢の見立てを誤ったことも、機密を漏らしたこともないからだ。極東発のインテリジェンスは対日戦略の骨格となる。武器なき戦いの幕はあがった。情報大国ニッポンの誕生に向けた驚愕のインテリジェンス入門書。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • インテリジェンス 武器なき戦争
    著:手嶋 龍一
    著:佐藤 優
    幻冬舎新書 0120 て 1 1

    本書は、インテリジェンス入門書

    インテリジェンスの鉄則
     約束したことは必ず守る
     できないことは軽々に約束しない

    元外交官佐藤優と、外交ジャーナリスト手嶋龍一との対話

    気になったのは、以下です

    ■インテリジェンス・オフィサーの誕生

    ・外交は武器を使わない戦争
    ・情報は国家の命運を担う政治指導者が舵を定めるための羅針盤

    ・東京を含めた世界中のありとあらゆる都市で、ほとんどの要人の電話は盗聴されていると考えたほうがいい
    ・我々が扱う「情報」は、「インフォメーション」ではなく、「インテリジェンス」なんです

    ・精査し、裏を取り周到な分析を加えた情報、それがインテリジェンスです
     ちょっと聞きかじっただけの素材は、インテリジェンスには昇華されてない

    ・この人は、本当のプロだ
      第一に約束を絶対に守る
      できない約束はしない
      必要のないこと、これ以上踏み込んで知らないほうがいいことについては、あえて聞かない
     それが、インテリジェンスというゲームの基本ルールであり、この世界の文化なんです

    ・嘘のような真実と、真実のような嘘がちりばめてあるのは、ニュースソースの秘匿のためです

    ・インテリジェンスの世界というのは、2つの要素でできています
     ①誰が指令を出して誰に報告するのか
     ②誰がお金を払うか
     ということです

    ・お金が止まった瞬間に、スパイとしての関係は、終わりなんです

    ・結局、戦前も戦中も日本のカウンター・インテリジェンスは、ドイツを友好国と見なしていないんです

    ・情報を扱う一級の人物で女性に人気のない人を僕は知らない

    ■インテリジェンス大国の条件

    ・国際条約や国際協定は締結の相手国が存在します
     日本の司法当局にすべての解釈権があるわけではありません
     現にロシアからは、一切の異論が出ていません
     安保条約を裁判所が一方的に破棄しろと命じられないのもこのためです

    ・外交官は政治の力を借りないと仕事ができないし、政治家はきちんとしたスタッフがいないから官僚の力を借りるしかない

    ・アメリカ人:軍事力をもって他国を侵略し、主権国家を転覆させているという意識がそもそも希薄なのです

    ・ハイデガーは、用材性と名付けたわけですが、人間は自分の手段や目的に合わせて物事を把握しようとするんです

    ・革命は常に辺境から始まるという名言を吐いたのは毛沢東です

    ・インテリジェンスや情報力というのは、自分の弱いところをできるだけ隠して、強いところを実力以上に強く見せる技法です

    ■ニッポン・インテリジェンスその三大事件

    ・軍事大国はインテリジェンス小国になりがちだ

    ・東京ほど魅惑の貌をした都市はそうめったにない

    ・バチカン市国は、隠れた情報大国です
     近世の対日諜報報告は、古典に挙げられるほどの水準です

    ・日本という国家がこれから国際政治の嵐の中を生きて行こうとすれば、卓抜したインテリジェンス・オフィサーを擁して戦い抜く他はない

    ・つまり対外インテリジェンスをやる人間は、外交の実務をやる人間とは切り離していたほうがいい

    ・戦前の陸軍参謀本部は、秘密戦を4つの分野に分けていた
     ①諜報、②膨張、③宣伝、④謀略 です

    ■日本は外交大国たりえるか

    ・そもそも、日本の安全保障体制は、2つの有事を想定している
     ①朝鮮半島の有事
     ②台湾海峡の有事 です

    ・中国問題で気を付けなければいけないのは、中国側のナショナリズムや思想史に関する学術的研究のレベルが非常にお粗末だということです
     自分たちのやることによって、足下の中国で何がおきるか、日本ではどうかという見通しができないと思います

    ・行き詰まったときには戦線を拡大するのです

    ・国家は、必要なときは嘘をつく。だが、嘘をついたという記録だけは残しておき、いつかその嘘は国益に害がないと明らかにしなければならない

    ・インテリジェンスの世界は情報を外に漏らさないのが原則ですが、しかし、自分がやっていることについて、  
     仮に現時点では嘘をついたとしても、後世に対しては絶対に嘘をついてはならない
     そのためには記録を残しておかなければいけない。それが、国家や歴史に対する責任なんです

    ・二つの椅子に、同時に座ることはできない

    ・同盟とは苛烈なものです
     有事に同盟の相手に後ろ姿を見せてしまえば、安全保障の盟約はそこでたちまち死を迎えてしまう
     ただし、アメリカが力の行使をするにあたっては、その最終的な意思決定に共同参画する仕組みを持っていなければいけません
     それがなければ、日本国内に、我が国は、アメリカの51番目の州なのか、というような不健全なナショナリズムを生むことになる

    ・軍事同盟国として、戦争に参加する以上、日本も、アルカイダやサダム・フセインのイラクに攻撃されるのを覚悟しなければならない

    ■ニッポン・インテリジェンス大国への道

    ・そもそもインテリジェンスの世界では、組織よりも人なんです
     人材を育てるのが先で、組織をつくるのは最終段階

    ・アーネスト・ゲルナーの「民族とナショナリズム」という国際的にも非常に評価の高い定本を読めば、イラクが基本的に国民国家を志向していることがわかる

    ・インテリジェンスに同盟なし

    ・スパイは偽装の職業を2つ持て

    目次
    まえがき
    序章 インテリジェンス・オフィサーの誕生
    第1章 インテリジェンス大国の条件
    第2章 ニッポン・インテリジェンスその三大事件
    第3章 日本は外交大国たりえるか
    第4章 ニッポン・インテリジェンス大国への道
    あとがき

    ISBN:9784344980112
    出版社:幻冬舎
    判型:新書
    ページ数:232ページ
    定価:740円(本体)
    発売日:2006年11月30日第1刷発行
    発売日:2007年01月20日第7刷発行

  • 未知の世界といえましょう。
    政治の裏側では多くの情報が取り交わされ、
    時にそれは外交上でのターニングポイントと
    なるということ。

    本当に外交に関しては
    そういった情報作戦が重要なのに
    どうやら日本は乗り遅れてしまっています。
    それが今現在のさまざまな対応の
    遅れにつながっているように思えてなりません。

    この世界に関しては
    遠い世界(私たちにとっては)なので
    あまり得ることはないですが
    一部文章、得られた情報を鵜呑みにしてはいけない。
    それに関しては日常では役に立つと思います。

    今は情報が錯綜する時代。
    私たちも何かと惑わされないように
    せねばならないのかもしれませんね。

  • 2006年11月30日初版1ヶ月以内に4刷発行の新書である。

  • NHKKの元ワシントン支局長の手嶋龍一氏と、鈴木宗男事件に絡んで
    逮捕され外務省を退職した元外交官・佐藤優氏の対談をまとめた書。

    このふたりの対談なら勿論、テーマは「インテリジェンス」。インテリジェンス
    と言えば、即、スパイと頭に浮かんでしまうのだがスパイ合戦ではなく、
    外交における情報戦を語っている。

    手嶋氏は報道の現場で、佐藤氏は外交官として。それぞれに最前線で
    日本を取り巻く国々の情報戦を体験して来たことがベースになっている
    のでインテリジェンス入門としても分かりやすい。

    特に佐藤氏が外務省での体験や先輩外交官の功罪を語っている部分が
    面白いわ。これは外務省を離れているから語れることなのだろうけれど。

    小泉政権時代の「平壌宣言」なんて糞味噌だったわ。北朝鮮との間での
    拉致被害者問題が何故、現在でも解決されないかの原因がこの宣言に
    あるような気がして来たわ。

    本書は2007年の発行なのでお二方は安倍政権にかなり期待していたよう
    だ。対談のなかでも日本版NSCの必要性も語られているのだが、実際の
    稼働はどうなんだろうね。

    ISによる邦人拘束事件で現地対策本部をヨルダンに置いたってだけで、
    やっぱり現在の日本は嬢情報戦にはからっきし弱いんじゃないかと
    思っているんだが…。

    でも、以前は日本にも優れた外交官がいたとの佐藤氏の話はよかった
    な。何故、それが現在でも維持できななかったのか。政治家と一緒で、
    外交官も人材不足なんだろうか。それとも育成が出来てないんだろうか。

    新書だし、ふたりが繰り出すエピソードはそれぞれに興味深くて面白い
    のだが、全編通してお互いに「よいしょ」しあっているのが少々気持ち
    悪かったわ。

  • 順番は逆になりましたが手嶋龍一佐藤優の三部作を読み終わりました。

    「インテリジェンス」は同じ「情報」という訳語でも「インフォメーション」とは違います。
    分析しないただのインフォメーションでは役に立たないんですよね。
    これは何も外交の世界だけの話ではありません。
    我が社でも情報をいかに仕入れていかに分析するか。
    これができるかできないかで今後の道筋が変わるというものです。

    僕も今までのように地べたで孤軍奮闘するだけではなくこれからはインテリジェンスが必要になりそうです。
    まあとりあえずは情報収集ですね。

  • 『憂国のラスプーチン』こと佐藤優氏と、NHKワシントン特派員を経験し、退職後小説家・外交ジャーナリストとして活躍中の手嶋龍一氏の2人による『インテリジェンスとは何か?』というテーマで語られる入門書。

    かつて、外務省きっての辣腕情報分析官であり、現在は作家の佐藤優氏とと元NHKのワシントン支局長で、同じく現在では作家として活躍されている、手嶋龍一氏による『インテリジェンスとは何か』ということを知るための入門書であり、画期的な対談本であります。

    NHKと外務省。組織名称は違えど、彼らいわく『獣道』を歩いてきただけあって、その虚虚実実、丁々発止のやり取りは本当に読んでいて面白かったです。ここで言う『インテリジェンス』という言葉ので意義付けは『国家間の外交でのイニシアティブを取るための、そして他国の自国への脅威から身を守るための“情報戦”に必要不可欠な武器』であるとされます。

    世界的なインテリジェンスの動向に対して、日本ではどうしてもその辺が後手後手に回っているような気がいたしますが、佐藤氏に言わせると
    「日本のインテリジェンス能力の潜在地は高い」
    だそうで、混迷を深める今だからこそ、それが「正しい」形で実行されることを願ってやみません。

    話を本題に戻すと、ここで二人が扱っているゾルゲ事件に始まって、イギリス旅客機テロ計画阻止、チェチェン紛争、湾岸戦争と世界が動いている裏ではいったい何が行われているのかということが語られており、こういった奥深さもさることながら、軍事力の強いアメリカではインテリジェンスが育ちにくいことやロシアのプーチンとイスラエルの蜜月状態などの衝撃的なことも語られております。

    日本に情報機関が設置されるという話になると、ヒステリックな反応を示す方が多いとは思われますが、世界的な『水面下の戦い』の中で日本だけが「ポヤ~ッ」としているわけにはますますいかなくなっているというのは、もはや言うまでもないでしょう。『謀略は誠なり』戦前の陸軍中の学校の この言葉を体現するこの二人に、乾杯。

  • 腹の底を明かさないような智者達のインテリジェンスに関する2005年頃の対談。佐藤先生は人材の育成の重要さを提言されていましたが現状の日本はどうなっているのでしょう。
    手塚先生のノンフィクションのようにリアルなフィクション作品とうそくさいけどノンフィクションな佐藤先生の著作が気になりました。

  • 佐藤優氏の解説は成る程と言うものが多く、一般的なニュース解説のアンチテーゼとして参考になる。
    この本を見ると先日の北朝鮮のミサイル実験に対する政府の対応はお粗末だし、外務省も同様だ。
    インテリジェンスは公開情報の再整理で98%が得られ、東京で北朝鮮情報の80%が得られるという。

  • 情報の扱い方を個人レベルで応用出来ればいいと思う。

  • 「嘘のような本当」と「本当のような嘘」

    情報分析のプロフェッショナル2人による対談。
    はじめに、この本に書かれていることはどこまでが本当で、どこからが嘘か分かりませんよ、という趣旨のことが言われる。
    積極的に嘘を混ぜることも厭わないし、些細なところで貴重な真実が述べられていたりする。
    インテリジェンス、というと敵地の単身乗り込み、機密情報を入手するスパイの姿が思い浮かぶ。
    けれど、本書で述べられているのは、そんな単純な話ではなく、それぞれの思惑とさじ加減の中から頭と行動を存分に発揮しながら真実を探し当てていく姿だった。
    情報は断片で掴んでも、それを再構築し、現実の事象を浮かび上げていく。

    また、両者とも日本のインテリジェンス機関を憂いていて、今の縄張り争いから国益を考えて行動できる人がどれだけいるか。そして、そのような人を育てることが出来るか、ということに強い関心を持っていた。実際に戦争で国力を決する前に、情報の使い方一つで如何様にも戦争を未然に防ぎ、また相手方の有利にたてるかが分かる。
    平時のインテリジェンスの有用性を理解し、実行していく。

    本当、要は頭の使い方次第。

全182件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

手嶋龍一  Teshima Ryuichi 外交ジャーナリスト・作家。9・11テロにNHKワシントン支局長として遭遇。ハーバード大学国際問題研究所フェローを経て2005年にNHKより独立し、インテリジェンス小説『ウルトラ・ダラー』を発表しベストセラーに。『汝の名はスパイ、裏切り者、あるいは詐欺師』のほか、佐藤優氏との共著『インテリジェンスの最強テキスト』など著書多数。

「2023年 『ウクライナ戦争の嘘』 で使われていた紹介文から引用しています。」

手嶋龍一の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
東野 圭吾
三崎 亜記
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×