ダチョウの卵で、人類を救います! : アトピー、新型インフルエンザ、HIVも撃墜する夢の抗体発見秘

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093882484

作品紹介・あらすじ

ダチョウの卵が、人類の救世主になるワケ!

新型インフルエンザが猛威をふるった2009年、ダチョウ抗体入りマスクが空前のヒットとなり、一躍注目されたダチョウの卵。今年は、花粉症を防ぐ抗体が出来て、春の花粉の飛翔時期に大変な話題となりました。現在約500羽のダチョウを飼育し研究を続ける、京都府立大学・塚本康浩博士の研究とダチョウ抗体の驚異の力を一冊に。
新型インフルエンザ抗体からO157抗体、虫歯菌抗体、ノロウィルス抗体、HIV抗体の開発。皮膚炎の治療、ニキビ治療など、様々な抗体が日々研究開発されています。癌の転移を防ぐ力があることも分かってきました。
そしてこの春、アトピー性皮膚炎の大きな原因である黄色ブドウ球菌の抗体が出来、抗体入り化粧品が発売されました。アトピー患者は、症状の自覚がある人を含めると1200万人を超えると言われています。まさに、アトピー手苦しむ人たちの救世主! また、約3,400万人もの花粉症患者へのさらなる朗報としては、花粉アレルゲンが粘膜に付着するのを防ぐスプレーも商品化されています。
この3年間のダチョウ博士の抗体開発物語・・・まさに人類を救う、新たな「ダチョウパワー」を追います。

【編集担当からのおすすめ情報】
既にアトピー性皮膚炎の原因である黄色ブドウ球菌の抗体によって、炎症やかゆみを抑える抗体入り化粧品が商品化され、口コミで本当に悩んでいる方たちの間に広がっています。多くの人が悩む病気の救世主になる抗体を次々と開発したいと、ダチョウと格闘するダチョウ博士・塚本康浩教授の姿は、これから社会に出る若者や学者の卵にも、大きなビジネス・チャンスをつかみたい人にも読んでもらいたい一冊です。

感想・レビュー・書評

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  • インフルエンザを予防出来るマスク。あります。市販もされてます。50枚入り8000円弱。高いかな、安いかな。
     マスクに、ダチョウの卵から作った抗体が塗ってあるのです。なんかあやしげですよね、そんなもん、ほんまに効くんかい、と言いたくなります。でもとっても気になります。
     この本を読むとこのマスクに惚れてしまいます。
     ダチョウ愛にあふれてますから。
     動物というのは、かな~り原始的なものから、人間を含む哺乳類まで、体のなかに異物が入ると、これを無力化して、除去しようとするタンパク質の分子を作ります。これが「抗体」です。言いかえれば、怪我や病気に強い生き物は、抗体を作る能力が高い生き物だ、ということです。
     で、ダチョウは、べらぼーに強いのだそうです。ダチョウ。あのやたらでっかい鳥です。体長2.5メートル、体重160キロ、羽はあるけど飛べない。足は速くて、地球上の二足歩行する動物の中では一番。最高時速約60キロ。二番はたぶん、ウサイン・ボルト。
     びっくりするほど何も考えずに生きてるようで、ほんの気まぐれで崖の頂上に一気に昇りつめたりする。で、頂上に着いてから、突然、パニックに襲われる。足がすくんで、動けなくなっちゃうの。気づけよ、もうチョイ早く、ってとこですね。しかも鳴き声を出せない鳥だから、仲間の助けを呼ぶこともできないの。
     しかもこの鳥、ヒマになると、隣りのダチョウの羽毛をツンツンついばんで、むしってヒマつぶしをします。血が出てもやめない。ひどすぎ。なのに、つつかれてるほうは、気にもしないで、平気でエサを食べ続けるの。血によってきたカラスが寄って来てさらに肉を食いちぎっても、平気。お前、鈍感すぎるやろ。
     でもね、尻やら腰やらの肉がえぐられて、うぁぁ、こらもうあかんわ、って重症でも、治っちゃうんだそうですよ。なんとも図太くて、鈍感でタフな、愛すべき鳥でしょう。
     これはもうスンバらしく抗体を作る能力が高い生き物に間違いありません。だってこんなに不注意極まりない鳥なのに、寿命は60年もあるんですよ。
     で、筆者の獣医学博士、塚本さんは、この愛すべきダチョウさんの抗体を何とか利用しようと研究します。抗体のいいところは、体の外に取り出しても、その働きが失われないことです。ダチョウに作ってもらって、利用させてもらいたいじゃないですか。何しろ利用価値がないと、モヤシ会社の社長さんが、ダチョウを飼うのをやめてしまうんです。そうそう、そもそも塚本さんが知り合った、ダチョウ牧場のダチョウだちは、モヤシ会社の社長さんに飼われていたんですよ。どうしてって、売り物にならないイマ一つのモヤシを食べさせるために。売り物にならないモヤシを産業廃棄物として処理する費用はなんと年間1千万円。だったらマメ科植物が好きなダチョウを飼って、食べさせて、そのダチョウの肉や毛皮を売ったらええやないか、これがホンマの一石二鳥や、ということで飼い始めたものの、ダチョウの商売はそう簡単ではなかったようです。もうからんことには、ダチョウは処分されてしまいます。これはなんとしても研究を成功させなくてはいけません。
    さぁ大変。どうなることやら。続きはWebで!というのはウソ。この本でどうぞ。

     絶対おもしろい!!

  • ある番組で著者を拝見し、魅力溢れる人柄に
    やられてしまった…。笑
    ヘルメットして
    捕獲棒持って
    教授自らダチョウを
    必死に追いかける姿に爆笑。(しかもすぐに転んでしまう)
    飾らないところがとても素敵です。
    獣医の世界は
    いつまでも憧れです。

  • 「ダチョウの卵で人類を救います」(塚本康浩 著)▶︎鳥類で最大のダチョウ 身長2.4m体重150kg。時速60kmで走る。卵は1.5kgでその黄身は世界最大の細胞。目玉は直径5cm重さ50g。ただし残念なことに脳の重さは40g。▶︎グループで暇になると、となりのダチョウの尻の羽根をついばむ。でも気づかない。血が出てその匂いからカラスがつつき、肉がえぐられても気が付かない鈍感さ。でも1ヶ月後には新しい皮膚が再生している。▶︎このダチョウの卵を利用して、アトピー・インフルエンザ・HIV・コロナウィルスの抗体が製品化されている。▶︎まさに「鋭きも鈍きも共に捨て難し。錐と槌とに使い分けなば。」(大分の儒学者 広瀬淡窓)

  • ダチョウの卵からさまざまなる抗体ワクチンを取れることを開発した研究者の物語。ダチョウは非常に生命力が強いことに気づいたことから出発していた。インフルエンザだけでなく、アトピーや花粉症、そして癌にまで効果のある抗体を作り出そうとしている。コロナ禍でもある現在、救世主となるワクチンを生み出すのではと思う。

  • 著者は、大学で動物学の教授をしている。子供の頃から鳥好きで、いろいろな鳥を飼っているうちに、もっと変わった鳥は…と接するうちに、ダチョウに行きついた。
    図体はでかいけれど、脳はネコくらいしかない。一応群れているけれど、全く秩序なんてものはなく、無鉄砲に走りまわり、運悪く崖の突端に行きついたら、びっくりしてパニックになり、一歩も動けなくなってしまったり…と、とにかくアホな鳥であるらしい。
    著者がダチョウを観察していて気付いたこと。
    仲間に羽を引き抜かれ、出血しても全く痛がらない。それどころか、血の臭いでカラスが飛んできて、肉をついばんでもどこ吹く風。その傷跡も、放っておいても自然治癒する。
    ということは、ものすごく強力な免疫力と再生能力をもっているのだろう。その強力な抗体の力を人間にも利用できるのではないか?
    研究によって生み出されたものは…
    ダチョウ抗体を配合したアトピー用化粧品
    インフルエンザウイルス用の、ダチョウ抗体マスク・空気清浄機の抗体フィルター
    などなど。

    こうしたベンチャービジネスは、人と違ったところに目を付けることが大切なのだということを実感。
    確かに人類を救うかもしれない研究なのだけれど、「ボクってすごいでしょ!」という自慢がチラホラと感じられて、面白さが半減する。
    今後の研究としては、ガンやHIVにもダチョウ抗体で挑んでいこうとしているそうなので、期待しましょう!

  • ☆ダチョウの卵で抗体を大量生産。
    (著作)『ダチョウ力』

  • 生命力の強いダチョウは、「抗体」を作りだす能力が高いうえ、ウサギ・マウスが作ることができない抗体をも作りだすことができる。
    また大きな卵を年に80〜100個も生むことから、抗体の大量生産にも向いているという。
    ダチョウでHIVやアトピー、インフルエンザが治るかもしれない、そんな未来の医薬の可能性を追う。

  • ダチョウから抗体を作る研究。
    特に卵が大きく、ニワトリの卵の30倍ほどあるので、大量に抗体を作れる。
    例えば、アトピーの治療。直接の原因は肌の感想と炎症によるかゆみで、原因は特定されていないのだが、その過程で黄色ブドウ球菌が繁殖してかゆみの元となることが分かっている。だから、それを塗布した薬剤で殺菌することで、自然治癒を助ける仕組み。
    中々面白い技術だと思います。

    ・ダチョウは、それまでの鳥に対する知見を根底から覆す、常識破りの鳥だった。そのことが僕にはショックだった。子供の頃から鳥を身近に見てきたし、専門家としてもそれなりに研究を積んできた。そんな僕の知識が、まるで通用しない相手だったのだ。
    一般には鳥はきれい好きな動物として知られている。スズメもインコも、毎日せっせと身づくろいをする。寝る前に水浴びする鳥も多い。体を清潔に保ち、病原菌を増殖させないようにすることが、身の安全につながる、と本能的に知っているのだろう。
    ところが、ダチョウは体についた汚れにまったく頓着しない。汚れたら汚れっぱなしで、体に糞をつけたまま平気で走っている。
    「こんな不潔な鳥がいていいものか」と僕はうめいた。
    しかも大きいからといって賢いわけでもない。いつも何も考えずに右へ左へと動き回っている。まれにどんなきまぐれからかわからないが、崖の頂上へ一気に登りつめるダチョウがいる。そして頂上に着いてから、突然、パニックに襲われる。足がすくんで、動かなくなってしまうのだ。鳴き声を出せない鳥だから、仲間の助けを呼ぶこともできない。
    僕は、こんなふうに遭難したダチョウを、何羽助けたかわからない。人間の言葉を真似るインコのほうが、よっぽど注意深いし、賢いと言わざるをえない。

    ・あるイギリスの動物学者が、ダチョウには「誘拐本能がある」と発表していた。それは、こういうものだ。
    アフリカのサバンナで、ダチョウの群れと群れが出会うと、集団を率いるリーダーのオスどうしが争う。決着がつくと、負けたほうは群れから離れる。そして勝ったほうのオスが、負けた側のメスや子供を奪い、育てるのだという。これを、その動物学者は「ダチョウの家族誘拐本能」と名づけた。
    だが、これまで見てきたように、そもそもダチョウの集団にはリーダーがいないし、自分たちが、家族を作っているなどという意識はないだろう。オスどうしが喧嘩することはあるし、負けたオスがすごすごとどこかに逃げるのも目撃されよう。
    しかしメスや子供のダチョウに群れの意識はないはずだ。オスどうしが喧嘩して、わあわあ騒いでいるうちに、もともと自分がどっちの集団に属していたのか、わからなくなる。その結果、喧嘩が終わったあとに、ひとつの集団に生まれ変わっているだけだ。そのくらいダチョウというのは、アホな動物なのである。

  • ダチョウの可能性を見つけて実現した
    ストーリーを開西口調で面白く読むことが
    できました。著者のダテョウ愛を感じました。

  • ダチョウの驚異的生命力に目をつけ、抗体を取り出して活用する等といった話でした。ずいぶん規格外な鳥なんだな~、と感じました(゚O゚)

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著者プロフィール

京都府立大学学長・獣医学博士
1968年、京都府生まれ。1994年、大阪府立大学農学部獣医学科卒業。カナダ・ゲルフ大学獣医学部客員研究員。1999年、ダチョウ牧場「オーストリッチ神戸」のダチョウ主治医に就任し、本格的なダチョウおよびダチョウ抗体の研究を始める。 2008年京都府立大学大学院生命環境科学研究科教授、2020年4月京都府立大学学長に就任。
超大型鳥類であるダチョウを用いた新規有用抗体の低コスト・大量作製法の開発。および、がん細胞における細胞接着分子の機能解明とその臨床応用化、高病原性鳥インフルエンザ防御用素材の開発を研究。2008年6月、京都府立大学発ベンチャー「オーストリッチファーマ株式会社」を設立。ダチョウの卵から抽出した抗体を用いて新型インフルエンザ予防のためにマスクを開発。以後もダチョウ抗体を利用したさまざまな研究(ガン予防・美容など)に取り組む。
著書に『ダチョウ力』(朝日新聞出版)、『ダチョウの卵で、人類を救います』(小学館)などがある。

「2021年 『ダチョウ博士の人畜無害のすゝめ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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