世界中で迷子になって

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093882934

感想・レビュー・書評

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  • 旅に関するエッセイは、面白い。後半は、それ以外のエッセイ。

  • 旅とモノに思う
    前半は旅について、後半は買い物について。
    著者は「大きな共通項に、若き日のやりかたが、その後に深く影響する」点を指摘する。
    確かにそうかもしれない。
    私はそれに加えて、好奇心を刺激すること、迷うことが共通していると感じた。

    エッセイはまとめて読むと途中で飽きてしまうこともあるが本書においてはなかった。
    それだけ好奇心を刺激するのが旅と買い物なのであろう。

    興味深いのが香港についてのエッセイ。
    私は返還前に一度行ったことがあり、そこで食べた穴あきチーズがとても印象に残っている。
    石鹸を食べているような(石鹸は食べたことはないが)味だったのだ!
    絵本で見て憧れていたのに......。

    さて、本文から一部抜粋しよう。
    「香港は、City of survivors--生き残った人、切り抜けてきた人たちの町、と呼ばれているらしい。(中略)だって困難を切り抜けてきた人たちは知っているはずだ。他を排することが生き残る道ではない、他者とともに手を取り合うことが生き残る術だということを。」
    この次のエッセイで、著者はアジアは水でヨーロッパは石の文化だと述べている。
    雑多な文化、受入れる文化、それがアジアの良さであり、謎めいた魅力に繋がっている。
    一方、ヨーロッパは整然とした作りで、古いものを大事にしている。
    しかしながら、アジアは水の文化だからこそ強固な何かを求め、ヨーロッパは柔軟な対応を取っている。
    どちらがより優れているかではなく、その違いを感じることで自分自身のあり方が変化していく。

    「モノ」についてもまた愉快だ。
    これいらないかも、いるかも、かもかもかも。
    こういった経験はよくわかる。
    気に入ったのが鍋と傘の話。
    先日傘を電車に忘れた。戻ってきていない。7000円もするのに!誰だ私の傘を持っていったのは!
    この気持ちを著者とともに共有した。
    鍋は一人暮らしを始めたときに親からもらったものだが、蓋の取っ手がとれ、中の皮膜がはがれた。
    どうすべきか。鍋、捨てられないよね。ちょうどいいんだよね。
    またまた気持ちを共有。

    モノと出会い、人と出会い、本と出会う。
    私たちは迷子になりながら、そこで発見をするのだ。

  • 旅が大好きなバックパッカー角田光代の旅エッセイ。後半はお買い物エッセイ。買い物好きならお買い物エッセイの部分は共感できるところがあるはず。しかしまぁ角田さんはバイタリティにあふれたひとだ。2013/400

  • 誰かと知り合い親しくなるということはかなしみの種類を増やす。


    いきたいところも買いたいものも食べたいものもなんにもない。自分がなにを面白く思うのか知らなかった。

    何かをしなくちゃいけない、充実した旅にしなくちゃと余裕がなかった。

    ☆旅の部分で腹落ちすることがたくさんあった。旅嫌いにオススメ。

  • 間食にいただくチョコが美味しいのは、禁断の恋が燃え盛るのと同じ原理らしい ^^

    旅行がテーマの前半と、モノがテーマの後半で、だいぶ雰囲気が違うけど、どちらも楽しめた。

  • 角田光代『世界中で迷子になって』読了。大きく分けて旅行と買い物の2章立てエッセイ。著者のエッセイはとても自分にしっくりくる。大げさでなく、わりと淡々と地に足が付いた感じの文体なのが合うのかも。何かを買うときに価格や使用頻度、必要性など色々悩む様子がまったく他人事でない。

  • ものの価値観を延々と考え続けていた。角田さんのものに対する姿勢っておもしろいけど、とてもまっとうだと思う。好きだなあ!

  • 大人の心で、大人の財布で旅をしなさい。と、開高健が言ったそうです。わかるような気がする。余裕を持った旅ができるといいですよね。そんなにチャンスとお金があるわけじゃないけど。
    この本、旅に関するエッセイが半分と、買い物に関するエッセイが半分。

  • 前半は旅好きな角田さんの旅にまつわるエッセイ。後半はモノについて。台湾で通訳についてくれた若い女性の素直さにちょっと感動した。”アジアは水で、ヨーロッパは石なのだと。水に自分を投じれば、ものごとは勝手に動いていく。石はそうはいかない”→なるほどと納得!

  • 角田さんにしては、最初の旅のネタが読みにくくてなかなか進まなかった。

  • タイトルから珍道中記を予想したが
    旅自体より自分の価値観や習慣の話題が圧倒的に多かった。

    後半は日常でのモノの話。
    淡々と詠みやすいが、後には残らず。

    【図書館・初読・9/3読了】

  • 親しくない人から聞く旅行話みたいで何だか

  • 旅エッセイ。旅に出ると、その期間が短かろうが長かろうが、第六感が冴えてくるという。ふだんの生活では決して活躍しない感覚が目覚めるのだそうだ。体内危険センサーというものがあったとしたらピコピコ小さく鳴っている感じ。著者ならではの目線で旅の断面が丁寧に切り取られ驚きの発見を見せてくれる。凡人離れの感覚の滑稽さに笑い、特異な非現実体験に目を見張らされた。楽しい旅の追体験を存分に満喫させてもらった。

  • 紀行文も入っていますが、まあエッセイですね。
    角田さんの小説もエッセイも大好きなのですが何故かこちらは
    最初読みにくくちっとも進まなかった。
    「旅行編」が終わって「モノ編」になったらすいすいと読めるように。

    以前から感じていましたが角田さんの文だけでなく全般的に
    紀行文というのが自分は苦手のよう。
    自分が苦手なだけで、紀行文が好きな方、旅行が好きな方には
    きっととても楽しめると思います。

    「モノ編」については激しく共感するところ多々。
    「そうそう!そうだよねぇ」と会話しているかのような気分で
    読み終わりました。

    ほっとしたい時にお茶するように、気軽に楽しめる一冊です。

  • 旅とモノにまつわるエッセイ集。

    題名からして紀行文がメインかと思ったら、モノに関する文章のボリュームのほうが多かった。
    紀行文が読みたかったので、残念。

    モノに関する部分についても、著者のモノへの思い入れ、よりも、モノを購入するに際しての「小心とか冒険とか信用のせめぎあい」ばかりが目についてしまった。

    読むのに時間かかったなぁ。

  • てっきり旅行記なんだと思っていたら、旅について思うこと、モノについて思うことを綴ったエッセイでした。

  • ◆ミャンマー、メキシコ、エジプト…登場する国は数知れず◆
    18歳でひとり旅に目覚め、19歳で初めて異国へ。24歳のとき、本格的な旅にはまる。そんな角田さんの「旅」と「モノ」をテーマにしたエッセイ。
    多くの旅行経験を積んだ角田さんだからこそ語れる海外のあんな話こんな話が満載。「旅」の話は半分足らずで終わってしまうものの、各国でのエピソード一つ一つがとても濃く、読み応えがあります。個人的には、「旅トイレ」の話に一番興味をそそられました。

  • 個人的には角田さんはエッセイよりも小説が断然好き。ただ、モンゴルの大陸的酔っ払いには大いに感銘を受けた(笑)

  • 前半は旅に関しての、後半は買い物に関してのエッセイ集。

    旅でも買い物でも、角田さんの絶妙なさじ加減での自分バランス的なものに惹かれます。
    吝嗇家でも浪費家でもない、自分の価値観を信じて行動する部分が読んでいてかなり気持ちいいです。(もちろんそこに至るまでの失敗談などもあって、興味深く読みました)

    この本の帯にも書かれていた、
    「アジアは水で、ヨーロッパは石なのだ」
    という言葉には、思わず「そうきたか!」と膝ポンしたい気分(笑)

    全体的にサラサラっとするするっと読めてしまうエッセイなのだけど、全体を通して読み終えると、角田さんの人生の楽しみ方、向き合い方みたいなものがおぼろげに見えてきたような気がします。

    良い意味での「自分肯定派」なのかなと。でも生活を、旅を、買い物を、楽しんでいる感じが読んでいて心地よかったです。

  • 旅とお買い物のエッセイ。面白かったです。特に旅編は、私もブランド品、エステに高級ホテルという大半の女性の好む旅行は好きじゃないので共感するところがたくさんありました。私の場合は気に入った場所に何度も行ってそこの国の人みたいになることだけど、角田さんは実にいろいろな国を回って旅行者やその国の人と交流していて、なるほどそんな旅も楽しそうと思いました。お買い物編は慎重派の角田さんとは対象的な買い方をするので、ちょっと見習わないとと思ったり、気づいたら友達と話しているみたいな気分になって読んでいました。

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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