テヘランからきた男 西田厚聰と東芝壊滅

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093897747

作品紹介・あらすじ

”戦犯”と呼ばれた男が全告白

イランで現地採用され、社長に成り上がるや、米原子力事業を6400億円で買った男は、いつ、どこで、何を、どう、間違え、東芝を “奈落の底”に突き落としたのか。

大宅賞作家が第15代東芝社長、西田厚聰の肉声を交えながら描いた企業崩壊ドキュメント。

――東日本大震災、そして原発事故がなければ、東芝はどうなっていたんでしょうか。
「事故が起きなくても同じような問題が起きたんじゃないでしょうか。先延ばしされただけじゃないかな。すべては経営の問題だから」

2017年10月初旬、最後のインタビューは行われた。実は、西田は9時間を超える大手術、3ヶ月に及ぶ入院生活を経て、ようやく退院したところだった。存亡の危機に立たされていた古巣と同様、この男もまた死線をさまよっていた。


【編集担当からのおすすめ情報】
2000年代、顔の見える経営者、そして「選択と集中」の実践者として、元東芝社長、西田厚聰氏は、日本財界の顔でした。東大大学院で西洋政治思想史を学び、恋人を追ってイランに辿り着き、そしてイラン政府と東芝の合弁会社に現地採用された異色の経歴も、氏の出世伝説を引き立てました。しかし、西田氏が社長を退いてから10年にも満たない現在、誰が東芝の窮状を想像できたでしょうか。そして、米国原子力事業の買収をはじめとして、名門崩壊のトリガーを引いたのは、西田氏と糾弾されてもいます。本作は、西田氏という異端の企業人の歩みを追いながら、企業崩壊の内幕を描く意欲作です。

感想・レビュー・書評

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  • 元東芝社長の西田厚聡は2017年に急性心筋梗塞のため逝去。73歳だった。東大大学院で政治学を修了し、イランの現地法人を経て1975年に東芝に入社。2005年に社長に就任。米原発設備大手ウエスチングハウス(WH)の買収劇が有名。

    09年に社長から会長に退き、相談役だった15年に東芝の会計不祥事が発覚。後任の佐々木則夫社長との確執もあり、両者は東芝解体の戦犯とされる。

    本著は、こうした解体劇に至る経緯を追いながら、西田を巡るドラマを描く。東大学者時代から、フィアンセを追ってイランに向かい、人生を変えた。その才能も好意的に語る。一方的に断罪するのではない、バランスの取れた内容だ。何より、西田という一人の男の人生は面白い。

    土光敏夫が東芝にチャレンジとレスポンスと言う精神を叩き込んだ。しかしそのチャレンジと言う言葉がやがて目標達成できなかった場合の粉飾を助長する言葉に変質してしまった。

    真っ直ぐな明るい勤勉家。しかし、万事がうまくいく訳では無い。組織が歪み、幹部の関係性が拗れ、感情が炸裂する。足下で起こる誤りを見抜くガバナンスはない。東芝をきっかけに社会が変わった面は否めない。見せしめという事では無いが、社会は、インパクトの大きなインシデントでも底上げされていくものなのだろう。

    この一連を把握するに適した名著である。

  • 『トヨタ 中国の怪物』で著者の筆致に魅せられて、他の著作も読んでみようと手を出した1冊。
    「東芝壊滅」というのはなかなかな言い回しですが、今の東芝は株式市場からも退出したほか、ホームページの「製品・サービス」を開くと、「東芝ブランド許諾商品等(ご案内)」として、切り売りされた事業が並ぶというお寒い状況。まぁ間違いとは言えないか…。
    で、その原因を作ったと言われているのが、本著で取り上げられた西田社長、佐々木社長の時代です。宮仕えの身として読んで損はないのではと思って読了しました。

    学びがあり、読みやすく文章もコンパクト。個人的に仕事が4月から繁忙期に入ってしまったのですが、業務の後にも気負わず読める1冊でした。
    ①夢の無いサラリーマンすごろく
    ②企業のガバナンスとは…

    ①夢の無いサラリーマンすごろく
    気負わず読める1冊でしたが、内容的には読んでて明るくなれる感じではないなと…。
    偉くなっても幸せになれる訳じゃないよね…という帰結だし、これは筆致の問題ですが人の無能ぶりが強く描写されている感もあり、一流企業で腕を見込まれた(はずの)人材が采配を誤り、手をこまねいて、言い訳をする様を見るとゲンナリしてしまいます。
    著者の書き手としての強さ(西田氏に失敗の要因を問うたり、氏が「変わってしまった」描写をしたり)を感じつつ、勤め人の悲しさが伝わってきます。

    ②企業のガバナンスとは…
    そんな東芝ですが、本著ではあまり描写されていないものの「コーポレートガバナンスの優等生」として、先進的な取り組みをしてきた企業です。
    ガバナンスとは、本著で挙げられたような不祥事を防ぐ仕組みであったり、発覚した事象に適切に対応する仕組みだったりすると思うのですが、本件では結局役には立たなかった訳で。。
    最後は「人は城、人は石垣、人は堀」なんでしょうが、流行りのコーポレートガバナンスは、実効性を伴うものなのか疑問に思ってしまいます。

  • 『感想』
    〇西田厚聰氏と東芝の凋落について著者の取材をもとに語られている。

    〇どんなに優秀な人でも組織を動かすのは簡単ではない。社会情勢にも左右されるし、それぞれの正義で動いている人がどれだけでもいて、その結果を負う立場は大変だ。

    〇立場が上がれば権力も得るが、そこに利害関係のある者が当然いるわけで、全員がいい目をみられるわけではない。外された方は恨みにも思うだろう。

    〇立場が人をつくるところはあるが、立場が人を変えるわけでもある。

  • 中途採用という異色のスタートから社員20万人を抱える東芝という大企業の社長となった西田厚聰さんに関する本。ビジネスマンとして、本当に才能があり、実績も残し、すごい人だということは分かったが、最後には欲に溺れ、自分を正当化する。WHの買収、パソコン事業でのバイセル行為。過去を振り返っても、反省しても現実は変わらないが、この方、また歴代社長の判断によってどれほど多くの人が露頭に迷ったことか。内部にいても全く情報が無かったが、こんなやりとりが上層部ではあったのかと。

  • 東芝の不正問題について学びたかったのだが、その辺りはさらりと書かれており、あまり参考にならなかった。

    西田氏についても、深く掘り下げて書かれているとは思えず、もう少し厚みのある記述が読みたかった。

    巨大企業の社内政治はドラマのようで面白かったし、経団連の事などは勉強になった。

  • 博士から企業に。
    イランの配偶者と魅力ある人物だった西田社長。
    どこで間違えたのか、最後のインタビューに集約されている。

  • 東電を含め、東芝はガバナンスが効いておらず、それに対する変革もできなかった。
    最後、美学のように語る西田さんにも疑問です。

  •  土光は社員らに、「チャレンジ」と「レスポンス」(素早い対応)を叩き込む。土光の言う「チャレンジ」とは、目標達成ができなかった場合、その原因を突き止め、その上でさらに挑戦するという意味だ。1977年発行の社史『東芝百年史』によれば、やがて「チャレンジ」と「レスポンス」は、組織と組織のコミュニケーションにも応用されるようになり、当時の東芝社内ではこれが「合言葉になった」と記されている。


    「仕事十訓」とタイトルがついた紙には元ホテルオークラの副社長で数多くの著書を持つ橋本保雄の『感動を創る』(現在はPHP文庫に収録)から抜き出されたものが記されている。
    1.バイタリティを持て
    2.常に頭脳を酷使せよ
    3.周囲の変化に挑戦せよ
    4.他から信頼される人になろうと努めよ
    5.ルールはルールとして重んじよ
    6.一度計画したものは、万難を排して完成させろ
    7.失敗を恐れるな、失敗は次への成功の足がかりだ
    8.今日のことは今日やっておけ、明日は明日の仕事がある
    9.おのれの時間を大切にせよ
    10.生きがいのある職場で価値ある人生の創造を


    ■西田がジャック・ウェルチから感銘を受け、自己鍛錬としてきた6つのルール
    1.あるままの現実を受け入れろ
    2.にも誠実であれ
    3.ネージャーではなく、リーダーになれ
    4.わらなければならない前に変化せよ
    5.争優位を持てないならば競争をするな
    6.自分の運命は自分でコントロールせよ。でないと、他人にコントロールされる

  • 数年前に東芝が「不正」会計問題でメディアに取り沙汰されていた頃、自分はあまり何も知らずに東芝を横目で冷ややかに見ていた記憶がある。もちろん西田厚聰なる人物も知らず、東芝がひとつの企業としてどのような歴史をたどり、どのようなことをしていたのかも知らなかった。単に、日本的な企業の成れの果て、というような単純で穿った見方しか持っていなかった。

    西田厚聰はその経歴や考え方、物事の進め方などおよそ常人からはかけ離れており、そのような人物を社長に指名した東芝という会社も実は大胆不敵な組織であったのではないだろうか。しかし、WH買収、SWの減損問題、原子力事業に関わる成り行きを見ると、西田厚聰もどこかで目が曇り始めていたのだろうか。後継者の佐々木則夫との確執についても、佐々木則夫個人にも問題はあっただろうが、リーダーとしてもっと別のやり方はなかったのだろうか。単に世界の変化に対応しきれなかったと言うのは簡単かもしれないが、西田厚聰ほどの人物であっても、晩年にはそのすごみが陰ってしまった原因は何であったかのだろうか。

  • 面白いが誤植が目立つ

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