- Amazon.co.jp ・本 (643ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094060508
作品紹介・あらすじ
イランを舞台に描く壮大な一大叙事詩
舞台は、イラン、イラク、旧ソビエト、そしてヨーロッパ・・・。壮大なスケールで描く超大作。ペルシアの地を目指した、2人の日本人が、苛烈な運命に翻弄されながらも強く生きる。
イスラム革命が成功したイラン。王の時代は終わりを告げ、念願のイスラム教を軸とする国家へと移りゆく。イスラムの教えを強く信じ、革命を成し遂げた革命防衛隊だったが、権力を手にしたとたん、内部からじわじわと腐敗がすすみゆく。革命の成功が、理想の国家を作り上げると信じていた革命防衛隊員サミル・セイフは、その現実を目の当たりにし、もう一度イスラム革命の理念を取り戻すべく戦う。
一方、イラク、イラン、トルコなど、カスピ海沿岸に国を持たずさまようクルド人。自らの国家を樹立するため、武装蜂起を計画。その意思を受けクルド人の武器を調達する日本人武器密輸商人ハジ。そして、イラン革命をつぶさに見てきた隻脚の日本人ハジ。2人の日本人の生き様を通じて、中東の置かれた現実や人々の思いを見事に描ききる。
20年以上もの長きに渡り、読み継がれてきた船戸与一最高傑作。小学館文庫にて刊行するにあたり、イランの地図と登場人物紹介を付記。
感想・レビュー・書評
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もうお腹いっぱいです。
文庫上・下巻で合わせて1210ページの大部。
本書は1991年に毎日新聞社から単行本として刊行されました。
25年も前の作品ですから、割と古い作品といえましょう。
ただ、決して色あせないのは、本書の内容と同様、今もなお宗教、民族、その他の問題で、世界中でおびただしい量の血が流れているから。
しかも、かつてのような国家間の戦争・紛争というよりは、テロという形で世界中に脅威が拡散しており、より困難な時代に直面しているといえましょう。
さて、本書はイスラム革命後のイランが舞台。
世界中に2500万人という人口がいながら、迫害されてきたクルド人が、聖地マハバードで独立国家樹立を目指して武器の調達を目論みます。
そのクルド人ゲリラの指揮官が、清廉潔白なハッサン・ヘルムートという男。
武器調達を請け負ったのは、目的のためなら殺人もいとわない冷酷な日本人武器密輸商人で、「ハジ」と呼ばれる駒井克人です。
イスラム革命後に腐敗した革命防衛隊を正すため、実力行使に打って出るのが、若き革命防衛隊小隊主任のサミル・セイフ。
そして、かつては非スターリン主義的マルクス主義組織フェダイン・ハルクに所属し、ある事情によって隻脚となった、これもまた「ハジ」と呼ばれる日本人の男。
物語はこれらの登場人物の視点で多元的に展開し、マハバードであいまみえて壮絶なラストを迎えます。
読み終えた後は、歴史に翻弄された者たちの哀しみがひしひしと胸に迫ってくるでしょう。
余計な感傷を極力排し、乾いた筆致で感動を呼び起こす作者の力量にも感服する次第。
日本人にとっては複雑な中東情勢の一端を理解するための一助にもなりましょう。
おススメです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
小説の舞台の全容が見えてきて、登場人物も一箇所に収束してきたみたい・・・。 物語は、いよいよ核心に突入するのだろう。下巻が楽しみ
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上巻を読み終えての感想は、誰かが主人公という簡単な物語ではないということ。イスラム革命後の大きなうねりの中で登場人物たちが翻弄されていく。一体どうなっていくのか?
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中東のゲリラに日本人がからむ話。この本が発売された時はこの手の大作が多かった。お薦め
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壮大なスケール。
イラン革命やクルド人の武装蜂起といったイスラム圏の物語の中に2人の日本人がいるという不思議な設定にワクワクする。
この設定の発想が堪らなくいいのとそれに見合った構成力が素晴らしい。
日本人だけでなくイラン革命防衛軍やクルド人ゲリラの視点でも描かれ、どっちが敵でどっちが味方ではなく、それぞれが信念に基づいて行動しそれが大量の殺戮の歴史を繰り広げている哀しさも感じる。
後半に期待。 -
想像以上の作品だった。文句なしの星5ツ。
私がまだ若い頃、パーレビ国王、ホメイニ氏、イランイラク戦争などなどの単語はテレビのニュースでよく耳にしていた。でもそれだけだった。
中東情勢については全く不勉強だったし、興味もなかった。
この作品を読んで全てが繋がり全体像が見えた。
昔から気になっていた作品であったが、読み始めは難しく失敗だったかも。。。と思った。
ところが少し先に進むともう止まらない!先が読みたくて仕方ない!おもしろすぎる!
パーレビ体制からホメイニ氏を指導者とするイスラム革命後のイラン現代史の中での物語 -
イランという国は、石油関連の事業を中心に意外と日本との関係が深い。しかし、革命後のイランとなると殆ど国の行ききがなくなり情報もアメリカとの軋轢に終始したものになってしまった。それ故に本作品の躍動あるストーリーは、目新しくまた、