父のおともで文楽へ (小学館文庫 い 45-1)

著者 :
  • 小学館
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094068092

作品紹介・あらすじ

父と私と文楽。共感度100%の家族小説。

母の3回忌の法要で、佐和子は実家を訪ねた。久しぶりに顔を合わせた父・敬一郎から文楽を観に行こうと誘われる。仕事が休みの土曜日、小学生の娘・梨々花は別れた夫・義彦との面会日で家にない。「面白いぞ」と敬一郎は言うが、半信半疑で国立劇場へ向かった。
演目は『心中天網島』だった。天満で紙屋を営む治兵衛が曾根崎新地の遊女と恋仲になり、妻子を捨てて心中するという筋書きだ。治兵衛は、妻のおさんへの未練も断ち切れず、遊女の小春との心中も踏ん切りがつかない。佐和子はまったく共感できなかった。そんな佐和子に、「また付き合え」と敬一郎は言った。
ニューヨーク州の弁護士資格も持ち、アメリカで仕事をする予定の義彦が、梨々花を連れていきたいと言い始めた。佐和子は梨々花を手放したくないが、契約社員としての収入は多くなく、夫からの養育費に頼る身だ。そんな中、敬一郎から検査入院をすると連絡が入る。
37歳でシングルマザー、派遣社員の佐和子には、精神的にも経済的にもゆとりは少ない。公私に亘って、課題が山積みだったが……。




【編集担当からのおすすめ情報】
主人公・佐和子は、37歳。アラフォー女子がピンポイントの読者ですが、原稿を読んだ社内の老若男性社員も、絶賛!佐和子の思いに心を寄せながら、いつの間にか文楽の魅力にも、引き込まれていきます。

感想・レビュー・書評

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  • 文楽を観た後に喫茶店で食べるスイーツがめちゃくちゃおいしそう。
    文楽の登場人物が嫌いになりつつ、でもだからこそ自分のことを見つめることにもなるんだろうなぁと思った。
    人形だからこそ、なんだか元気じゃない時でも気張らずに見に行けるのかもしれない。
    お父さんの「世の中は立派な者ばかりじゃない。むしろ馬鹿者揃いと思っておけ」(p300)という言葉が印象に残った。

    わかりやすくて読みやすかった。

  • 例えばこの小説の文楽のように、何かを介せば父親とうまく話ができたのかもしれない。それから、日常の座標から外れて物語に没頭することの楽しみを再認識。はやく文楽観に行きたいな。そしてその感想を誰かと分かち合いたいな。

  • 初読み作家さん
    なんとなく惹かれて購入したのだけど、予想以上に良かった。
    じわりと誰にでも訪れるであろう不幸が佐和子に忍び寄ってくるのだけど、それがリアルで身がすくむ。明日は我が身的な感覚だ。
    それでも文楽に癒され、前向きに少しずつ好転していく様はとても気持ちがよく、ラストも必ずしもハッピーエンドではないのかもだけど、地に足ついたラストでよかった。
    なんか前向きになれた本だった。

  • かわいい表紙なのに、内容はドキッとする。

    親の老いは切実な問題。
    いくつになっても父の娘への愛は変わらないのが
    ありがたくて切ない。

  • 面白かった。主人公の設定が自分と同世代で、自分と境遇は違うが、分かる分かるこの感じ…と、つい感情移入できるほど描写が丁寧。割と身近にこういう人いそうだな、と思う。この主人公の世代ならではの、家族との関わり方、家族への思い、みたいなものも、分かるなあ、、と頷いてしまう。文楽には全く興味がなかったけれど、この本を読んで、いつか機会があれば行ってみたいなと思った。
    自分の両親は幸いにして健在だけれど、いつかは皆いなくなってしまう、
    その時に後悔しないように、元気なうちにもっとたくさん話をしておかないと、と思った。

  • 状況が凄く悪くて大変なシングルマザー佐和子。とはいえ何でそんな所という些細な事まで気にしていて、ハリネズミ通り越してウニみたいになってる。周りに目が行ってないから敬一郎や梨々花とすれ違う理由が良く分かる。ほんの少しずつ心の持ち方が変わってきて生きる事にゆとりが出てきたのでほっとしました。

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著者プロフィール

2001年作家デビュー。絶妙な語り口と活き活きとしたキャラクター造形に定評がある。主な著書に『紫陽花寺』『恋桜』『ささやき舟』など。

「2019年 『リスタート!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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