- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094070538
作品紹介・あらすじ
イタリア半島を帆船で巡った宝物のような旅
「かつて古代の戦闘船が、貿易船が、漁船が、旅客船が周遊したように、新緑のすばらしい季節に風に吹かれてイタリア半島を巡る旅に出てみようではありませんか」縁あって美しい木造帆船《ラ・チチャ》号の共同船主になった著者が描く、宝物のような航海日誌。サンレモ、ポルトフィーノ、カプリ、パレルモ、タオルミーナ、ヴェネツィア……イタリア半島を海から巡った初夏から秋にかけての140日間を、旧友らとの親交、食、歴史、自然などのエピソードを交えて豊かに綴る。「舳先が切る波は、金粉を撒き散らすように輝きながら船の両側に跳ねている。そのきらめきのひとつひとつが無数の命の証なのだ」「船は、現在と過去の波間を揺れている。現実に近づきながら、それは実は異次元への旅の始まりでもある」「獲れたてのカジキマグロの稚魚を三枚に下ろし、生のまま塩とオリーブオイル、少々のレモンで和えたウイキョウと小ぶりのトマトのざく切りを合わせて食べた。目の前に広がるのは、海」(本文より)。こんな時代だからこそ海風を浴びる旅に出たくなる一冊。解説は法政大学特任教授の陣内秀信さん。
感想・レビュー・書評
-
内田洋子の本は、けっこう読んだけれども、本書は、他の内田洋子の本とは少し毛色が異なる。私が読んだ、内田洋子の他の本は、フィクションなのかノンフィクションなのか、小説なのかエッセイなのか、その中間の雰囲気を持ったものが多いのであるが、たいていは、主人公・書き手は内田洋子自身である。本書は、シルヴェリオという名前の船長の記録と言う形態をとっており、小説といった方が良い内容の本だ。
私は本書の文庫版を読んでいるが、その巻頭に「文庫化にあたって」と題して、内田洋子が本書の来歴を語っている。
内田洋子の他の本にもその話は出てくるが、内田洋子は、船を買い、一時はその船上で暮らしていた。その船は、「ラ・チチャ」と名付けられ、内田洋子は、「結局、私は足掛け六年にわたり<ラ・チチャ>に乗って、イタリア半島を港から港へと回った。港に係留するには、空き場所と係留料が必要だ。船体は大きく、空きを見つけるのは難しかった。沖合の潮流と海底の様子を見て、錨を投じる。そして、風を待つ。それを繰り返し、イタリアを海から見る毎日が続いた」という経験を、本船を通じて得ている。
本書は、その航海を通じての自らの経験と、海仲間から聞いた話を、上記の「船長シルヴェリオ」の航海日誌の形をとってまとめたものである。
経済的に、ということではなく(経済的にもそうであるが)話の中身が豊かだ。イタリアの海、地中海がどのようにきれいな場所なのか、行ったことがないので分からないが、それはとてもきれいな場所であることが本書を読めば分かる。そのような海を旅しながら、友人に会い、食事とワインを楽しみ、何よりも航海自体を楽しむことは、とんでもなく豊かでうらやましい経験だ。
本書を、内田洋子は「イタリアの旅を楽しむ」ための書として書いている。私自身は、その豊かさを楽しんだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【書評】寮美千子著『なっちゃんの花園』他3冊 | ハルメク暮らし
https://halmek.co.jp/culture/c/entertainment/5407
海をゆくイタリア | 小学館
https://www.shogakukan.co.jp/books/09407053 -
内田さんが好きすぎて、そしてここに描かれる生活が夢のようで、読み切ってしまいたくなく、途中まで読んで置いているところです。それくらい、私にとっては極上の本です。
-
こんな本ハードカバーで持ってないぞ…と思ったら2001年発行だったのか。文庫化してくれてありがとうございます。いつもの内田洋子の雰囲気ともちょっと違って楽しかった。
一体どんな取材をしたら他人視点の船旅をここまで詳細に書けるのか、本当に謎。帆船の旅にあこがれてしまった。ほんの数日なら楽しそうだ… -
いつも小説みたいなエッセイ書く人だけどこれはさすがに普通に小説よね。
-
イタリアを海から眺めた美しい風景の描写が想像をかきたてる。登場する人々の人生模様を聞きながら頭の中で旅することができた。
-
#jwave紹介書籍