さくら (小学館文庫)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094082272

作品紹介・あらすじ

2020年初夏、映画化!

ヒーローだった兄ちゃんは、二十歳四か月で死んだ。超美形の妹・美貴は、内に篭もった。母は肥満化し、酒に溺れた。僕も実家を離れ、東京の大学に入った。あとは、見つけてきたときに尻尾にピンク色の花びらをつけていたことから「サクラ」と名付けられた十二歳の老犬が一匹だけ。そんな一家の灯火が消えてしまいそうな、ある年の暮れのこと。僕は、実家に帰った。「年末、家に帰ります。おとうさん」。僕の手には、スーパーのチラシの裏に薄い鉛筆文字で書かれた家出した父からの手紙が握られていた-。二十六万部突破のロングセラー、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • サクラは幸せの象徴

    人生は受動的なものではなく主体的なものということ。どんなことがあっても日常は日常のまま続いていくということか。

  • 西さんの本は漁村の肉子ちゃんに続いての2作目。肉子ちゃんと同じく家族が主なテーマだったが、この話も肉子ちゃんと同様(それ以上か?)個性満載に世帯員を描いていて面白いなぁと。
    かっこよくて、優しくて皆んなのヒーローのような兄、少し頼りない弟、男勝りだけどどこか儚い妹、そしていつまでも恋人のような父母。
    途中まではまるで絵に描いたようないかにもな幸せ家族が描かれていたが、兄の事故により一変する。
    兄の死によって心も身体も疲弊し、バラバラになった家族はこの後どうなるのだろうとヒヤヒヤしたが、サクラが家族間のつながりを戻してくれて、あぁペットも家族なんだなぁと改めて感じた。
    本の名前が「さくら」であることにも納得。

  • 長谷川家の波乱万丈のお話。
    誰もが憧れるスーパーヒーローだった兄がフェラーリに、、、事故から日常が変わっていく。
    兄の自殺、母の拒食とアルコール、父の失踪、妹の引きこもり、、、それをもう一度繋いだのが愛犬さくら
    賑やかな人生、泣けてきて笑ってしまう
    犬がでる小説は当たり説

  • 家族の再生物語。
    家族だからこそぐちゃぐちゃにぶつかって
    最後はそんなことでとなってしまうが
    それも家族。
    凄く素敵な本。

  • 犬好きの人に読んでほしい。感動すること間違いない。犬を交えたユーモアと感動の物語。犬は家族。犬は家族を救う。

  • ************************************************
    兄の一(はじめ)、薫、妹の美貴、母と父、
    そしてサクラ!五人と一匹の家族の物語。

    兄が「はじめレジェンド」旋風を巻き起こす程に、
    どれだけのヒーロー具合であったか、
    妹が誰もが振り返るような美しい容姿とは裏腹に、どれだけの奔放な問題児であったか、
    その兄妹に挟まれなんとなく器用に生きてきた薫、そして家族の幸せの象徴である犬のサクラ。

    幼い頃、生まれたばかりの妹に誰のものでもない
    花を贈ろうと探し回り公園で出会ったおじいさん、
    危険なフェラーリゲーム、
    母猫のような声で鳴く母と父の愛のあるセックス、兄の恋人の矢嶋さん、湯川さんへの勝手な想い、
    父の同級生のサキコさん、恋人未満のゲンカン、
    美貴の同級生の男の子みたいな女の子の薫さん、
    兄ちゃんの事故そして自死、長谷川家崩壊寸前。
    ************************************************
    溢れんばかりの幸せな家族エピソードに顔が綻び、
    この一家を愛しく思う気持ちでいっぱいになった。
    三兄妹、というか妹の美貴には多々問題はあるが、
    お母さんの器の大きさと、お父さんの頼もしさに、
    深い愛情を感じて微笑ましく見守ることが出来た。

    年相応かつ独特な激しさと繊細さをも孕んでいて、
    強靭と脆弱の絶妙なバランスが西加奈子節炸裂で、
    滑稽さを持ち合わせて表現されていて心地が良い

    だが後半になると一気に雲行きが怪しくなる。
    ずっとヒーローだった兄の、ドロップアウト。
    幸せな家族から一転、耐え難い絶望感が辛い。

    そして直前の妹の告白を私は許せない。
    もちろん美貴も苦しんでいただろうが、
    どうしても許せない。悔しい。悲しい。

    そして更に家族がバラバラになっていく様子は、
    幸せな頃からずっと見てきた(気になっている)
    者としては、胸が締め付けられるようだった。

    そしてそこから家族が再び胸に灯火を宿す出来事。
    振り返れば喜劇、が起こる様はまさしく泣き笑い。
    馬鹿馬鹿しくも懸命、やっぱり込み上げる愛しさ。
    ああ!!サクラ!!多幸感が溢れる家族に涙する。
    ラスト1ページが幸せでたまらない。

    …でも、やっぱり兄ちゃんの
    「ギブアップ」は、辛すぎるので、注意。

  • 永遠に「西加奈子」の文体で殴られる感じがした。正直前半は読むのが結構辛い(一見無駄な展開や描写が続くから)けど、その細かすぎる描写とか、冗長に思える描写があるからこそ、長谷川家の子供たちの成長を1番近くで親とか兄弟のように見守っている感覚になる。そしてそれが後半の美しい絶望へと繋がるという構成が本当にうまい。レビューを見ても、美貴を好きになれない、美貴が気持ち悪いっていう人が多い印象だけど、それはものすごく当たり前のことだと思うし、私も好きにはなれなかった。ただ、美貴の純粋すぎる愛情や涙の描写は怖いくらいに美しいと思った。

  • 私には全くはまりませんでした。
    情景描写や例え話が多くあり、話がどこに繋がっていくのか分からなくて読むのが苦痛でした。
    申し訳ないですが、途中から飛ばし飛ばしに読みました。こんなことをしてしまうなんて、自分でもはびっくりです。

  • さくらはいつも冷静に家族を見ている。
    人間は生きている間にいろいろあって、プラスにもマイナスにも大きく振れていく。

    さくらがいたから、ゼロに戻れたのかなあ。

  • 「サラバ!」に続き西加奈子さん2冊目。

    「サラバ!」が好き過ぎたので、いつものように期待しつつ読み始めたが、もうはじめから最後までたまらなかった。まだ2作目だが西加奈子さん節がとても好きだ。彼女の比喩表現が素敵すぎる。芸術的で情景が浮かびやすく、この世界観に入り込める。

    途中までは笑いあり、のほほんとしていて、あぁ好きだわこの感じ〜素敵な家族 ♪とルンルンしていたら、突然雲行きが怪しくなり一気に台風がやってきた…。

    何せ人物描写がとても豊かなので、どの登場人物にも感情移入できる。お兄ちゃんのあの一言、辛過ぎた…。自分だったら同じ道を辿るのか。
    そして家族みんな一人一人の心情。自分だったら?をすごく考えた。
    サクラを含め、家族全員が主人公のような深さ、濃さ。

    何というか全部を通して「サラバ!」同様、魂が揺さぶられて、まるで自分もこの家族の一員となったようだった。

    (ありきたりだが)今目の前にある幸せを、一日一日大事にしたい、そう思った。明日自分が、大事な家族がどうなるかなんて誰にもわからない。
    「サラバ!」もだったが、今私が述べたようなありきたりな感想でなくて(自分で書いたくせに)、もっと『人生とは』的な大きな何かを伝えてくれている気がする。

    そしてサクラ。愛おしいな。賃貸の我が家では現状お迎えしたくても我慢しているが、この本を読んで益々チャンスが来たらぜひお迎えしたいなと思った。

    とにかく良かった!!(語彙力…)

    西加奈子さん、他の作品を読むのが今から楽しみ!素敵な作家さん。

    出会えて良かった作品です。またサクラとみんなに会いに戻ってきたい。

  • 幸せな家族に不幸が訪れるのが辛い。文章が表現豊かで好みでした。普通に見える家族にもそれぞれ色々な苦労があるのかもしれないなと思いました。

  • 初めて読んだ「西加奈子さん」の作品。切なくて本当に印象深い作品でした。

  • 前半は主人公である薫とお兄ちゃん、ミキ、そして3人の子どもを育てる幸福この上ない父と母の様子に心が温かくなった。こんな家庭の一員だったらいいのにと感じた。
    著者の用いる比喩表現も秀逸だった。
    だが、物語が進むにつれて暗雲が立ち込める。兄の交通事故と重い後遺障害、お兄ちゃんはかっこ良かった頃からかけ離れたまま、現実を受け入れずにギブアップしてしまう。
    そして、お兄ちゃんの幸福に深い傷を与えたミキとその心の闇。
    それでも、犬のサクラを中心に家族がばらばらになることはなく、最後は希望を持って物語を終えることができる。
    もっと若い頃に読みたかったけど、今読めて満足でした。

  • 優勝!読了後、自分がサクラを飼ってるんじゃないかと勘違いしました。サクラかわちい。現在進行形の日記感。変化と気づきと癖(個性)の様が生々しくて、信じられないぐらいどっぷりと共感します。
    8回くらい泣きポイントがあり、しばらく記憶に残り続ける本になるだろうなあ

  • 年末の休みに読みしました。

    愛おしく、切なく、とても優しい家族の物語

    前半の何気ない日常してと書かれてい
    後半で一気に繋がっていく西加奈子さんってやっぱり面白い!
    うん◯までしっかり回収(笑)

    また今年の年末読んでみようかなと思います。

  • 自分もこの家族の一員になっているかのような感覚で、小さい頃から大人になる流れを汲むことができる。
    ただ、普通の家族のようでいて少しずれている。
    兄の悲劇にはうるっときたし、妹のランドセルの中の手紙には衝撃を受けるし。
    家族がバラバラになったところに犬のサクラがまた絆を結ぶ。

  • ギブアップ。打たれへん。
    短い言葉だが重みを感じた。

    ストーリーが全体的に軽快に進んでいる印象があるが、とても感情移入してしまう。

    フェラーリの奇行も、何かと戦っているようで印象的で、前に進み始めたシーンは良かった。

    一レジェンドからの落差。その落差は、一だけでなく周りにも大きな影響を及ぼした。1人の人間の存在の大きさを痛感した。


    ★印象に残ったフレーズ
     辛いことというのは、もっとこう、劇的にやってくるものだ。雷に打たれたみたいなショックが体を襲って、滝のように涙を流して、空を見上げることさえ出来ない。そうゆうものだ。
     僕の場合は、なんてゆうかそうゆう「痛さ」というより「だるさ」、なかなか起きられない月曜日の朝みたいに体が重くて、歯を何日も磨いていないように気持ち悪い、そして何か忘れてるみたいに居心地が悪かった。

  • ⚫︎受け取ったメッセージ
    生きるとは傷を負い続けること。
    だが人生は傷ばかりではない。
    素晴らしいことを人と共有し、
    幸せを膨らませることだって
    生きていればできる。


    ※以下ネタバレ※

    (あらすじ)
    絵に描いたような素晴らしい兄、美しい妹。その2人に挟まれた弟である主人公。三人兄弟妹、それぞれの生きる苦しみ、重さ、美しさ…

    兄には好きな人がいた。妹はずっと兄が好きだった。妹は邪魔をした。自分の心を隠して。兄は事故に遭い、元の兄ではなくなった。兄は自殺した。妹は主人公に全てを告白する。父はそれを聞いていた。

    最後はさくらを助けるため、家族4人全員が必死になり、つながる。

    ⚫︎感想
    タイトルの愛犬の名前「さくら」からは想像できない波瀾万丈の家族の物語。「さくら」で繋がる家族。彼女はいつでも家族に寄り添い、見守っている。苦しみ、悲しみ、一人では背負いきれない記憶、それらを抱きながら、それでも生きていけるのは、一人じゃないからではないかな。人は他人を傷つけなながら、傷つけられて、それでも時間と他人に癒してもらって生きていくしかないし、生きていく。

  • お兄ちゃんが死んでからが辛すぎた
    小さい頃の3兄弟の話が言い回しが面白いし可愛くてよかった
    美貴みたいな子この世に存在するんかな、変わり者すぎるし怖い

  • ひとつひとつの表現の描写が、具体的かつ美しくて魅了されました。
    ほのつらい感じが段々と辛くなってくるけどさくらに救われます。
    僕は次男で真ん中なのに、変にすれてなくて出来の良い兄に対し変な嫉妬や対抗心がなくアイドル的存在の兄を俯瞰で見れてるところが少し現実感がないと思った唯一でした。
    でも、変わり者の美しいミキに対しても美人としても相当な変わり者であることを普通に受け入れているあたり主人公はかなりフラットで物事を俯瞰で見れる人物なのかなとも思いました。
    性についての描写もちょいちょい出てきますが表現がキレイでわかりやすく子どもでも勧めやすい書籍かもしれないと感じました。
    ミキは、産まれてからずっと苦しかったと思うけど、苦しい原因と奇行に見える行動は結びついているのか単なるキャラなのか読み取れませんでした。
    この家族を犬の立場で見届けて語りかけた賢いサクラが愛しいです。

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著者プロフィール

1977年イラン・テヘラン生まれ。2004年『あおい』で、デビュー。07年『通天閣』で「織田作之助賞」、13年『ふくわらい』で「河合隼雄賞」を、15年『サラバ!』で「直木賞」を受賞した。その他著書に、『さくら』『漁港の肉子ちゃん』『舞台』『まく子』『i』などがある。23年に刊行した初のノンフィクション『くもをさがす』が話題となった。

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