万寿子さんの庭〔文庫〕 (小学館文庫 く 6-3)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094084399

作品紹介・あらすじ

「あなたがお隣に引っ越してきてから、わたしの人生はまた乙女時代に戻ったかのような活況を取り戻しました」竹内京子、二十歳。右目の斜視にコンプレックスを抱く彼女が、就職を機に引っ越した先で、変わり者のおばあさん、杉田万寿子に出逢った。万寿子からさまざまないやがらせを受け、怒り心頭の京子。しかし、このおかしなやりとりを通じて、意外にも二人の間に、友情ともいうべき感情が流れ始めるのだった。半世紀の年齢差を超えた友情が、互いの人生に影響を与えていく様を温かな筆致で描く感涙の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 万寿子さんが、偏屈なのにチャーミングだった。
    78歳と20歳の友情。ホントに祖母と孫みたいな歳の差なのに、万寿子さんの手紙で京子を「親友」と書いているのはグッとくるものがある。
    万寿子さんのお庭の様子とかも、文字で追っても情景が浮かぶくらい、丁寧に手入れされた素敵な空間なのがわかる。
    花模様のワンピースが着こなせるとか、ところどころのエピソードで、万寿子さんが魅力的なおばあちゃまであるのもわかる。
    京子ちゃんが斜視を過剰に気にするあまり、他の魅力まで見えなくなるほどネガティブな子だったのもわかる。
    そして奔放な万寿子さんに京子ちゃんの自我を引き出してもらってるのも。
    まぁ、それでも不器用すぎますが(笑)
    でも、現実的ではない関係だなぁ。20歳くらいの若い子が幼稚な嫌がらせしてくる老人が気になって仕方ないなんて、あるとは思えない。それに、自身の親兄弟すら抵抗あるのに他人の介護を、自分がボロボロになるまで無償でなんてこなせないと思う。
    【親友】の部分を守るあまり、自分を保てなくなるほど尽くすなんて、今時では考えられないと思う。
    だからこそ、2人の仲が眩しいのですが。
    今のご時世、近隣にだれが住んでるかもわからないので、アパートの隣の一軒家の主と交流しているというエピソード自体でほのぼのしますし、最後のハッピーエンドもあっさりとしていて返ってよかった。

  • 年齢差のある友情の話
    京子の打算的でない真心が良好な人間関係を築いたのだろう。一歩間違えるとお節介や犯罪になりそうな世知辛い世の中には心温まる話だった。

  • 万寿子さん七十八歳、京子ちゃん二十歳。年齢なんて関係ない対等な乙女と乙女の友情に、素直に羨ましいなぁと感じました。
    認知症、周りはもちろん辛いでしょうが、きっと本人は怖くてたまらないですよね。そんなつもりで友達になったのではないと言っていたけれど、京子ちゃんの存在がどれだけ心強かっただろうと。
    切なくはあるけれど、全体的に心温まる物語でした。

  • 嫌だなと思う人が少しのきっかけで馬が合う、そんなお話でした。
    主人公はまだ20歳。そんな彼女は変わり者と言われるおばあさんと不思議な友情が生まれます。
    年を取る事は若かった頃、子供の頃の自分が無くなるわけではない事を教えてくれます。
    お互いがなくてはならない存在になれる出会いは羨ましいです。
    けどやっぱり最初からおばあさんは彼女の事と話したいと思っていたのではないかと。
    でなければずーっと馬が合わないままだったような気もします。

  • 【あらすじ】
    「あなたがお隣に引っ越してきてから、わたしの人生はまた乙女時代に戻ったかのような活況を取り戻しました」竹内京子、二十歳。右目の斜視にコンプレックスを抱く彼女が、就職を機に引っ越した先で、変わり者のおばあさん、杉田万寿子に出逢った。万寿子からさまざまないやがらせを受け、怒り心頭の京子。しかし、このおかしなやりとりを通じて、意外にも二人の間に、友情ともいうべき感情が流れ始めるのだった。半世紀の年齢差を超えた友情が、互いの人生に影響を与えていく様を温かな筆致で描く感涙の物語。

  • 素敵なお話だった。 20歳と78歳の間で芽生えた友情。 それを大事に育てていく様が可愛い。 生きている者は必ず死で終わるけど、重ねた思い出や一緒に過ごした時間は消えないし、残った者の支えになるだろう。 私もこれからの人生でこんな友情を一緒に育める人に出会えたら良いな。

  • 先の展開が読めず、気になってしまい一気に読んでしまった。
    帯に「感涙」というキーワードがあったので、後半に向かって構えて読んだが、私は涙はなかった。
    私の知る「介護」の壮絶さの共感が感情を上回ってしまい、涙はなかった。
    それよりも、万寿子さんと京子さん。
    二人の「自分という芯の強さ」に感動した。
    京子さんは俗に言う優良物件の男性2人との永久就職も選択肢もありながら、迷いながらも最後はそちらに行かず自分の足で歩いていくことを選択する。
    万寿子さんは、ご主人が亡くなった後、自立した生活をし続け、最期は自分の最期を手紙にしたためた。
    私自身、何かの選択で迷うことがあって、周りに意見は聞いても決めるのは自分と思っている。
    だからこそ、2人の強さはとても眩しい。

  • 20歳の京子と78歳の万寿子さんの歳の離れた友情。万寿子さんと庭の花や木の世話をする事でゆうじょを育む。万寿子さんは京子に亡き妹の面影を見ていた。離れた親族より近所の他人と言うように、万寿子さんが認知症を発症しても放っておけず世話を焼く。
    後半は涙なしでは読めず。読後は爽やかな風が吹いた。

  • 年齢を超えた友情物語。
    二十歳の京子が引っ越しした隣の家に住んでいる老女。
    その万寿子さんは七十八歳。
    普通は祖母と孫のような関係になるんだろうけど、それが友情という関係になっていく。
    その展開がなんとも面白いというか、ほのぼのするというか、とても良い関係なのに驚く。
    すごく良い作品だと思う。

    2022.9.19

  • 想像以上に良かった…。感動で胸がいっぱいになりました。
    優しさと友情がつまった本書。素敵な作品を読み終えた後の余韻が心地いい。

    京子と隣人の独居老人・万寿子さんとの友情の物語。
    繰り広げられる大人げない悪口の応酬。大の大人の子どもみたいなやり取りに笑ってしまう。
    仲が良いんだか悪いんだか…。
    ケンカしながら少しずつ絆を深めていく二人。
    だけど万寿子さんに認知症の症状が出始めて…。

    二人でお酒を飲みながらバカ笑いするシーン。
    意地を張り合う二人。
    当たり前の光景となった二人が万寿子さんの庭いじりをするシーン。
    読んでるうちに全部が愛おしく感じました。
    誰しも向き合う“老い”についても考えさせられる作品でした。

    意地悪婆さんを彷彿とさせる万寿子さんと京子ちゃんの友情に心が温まります。
    切なくも優しい感動のストーリー。

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著者プロフィール

黒野伸一(くろの・しんいち)
一九五九年、神奈川県生まれ。『ア・ハッピーファミリー』(小学館文庫化にあたり『坂本ミキ、14歳。』に改題)で第一回きらら文学賞を受賞し、小説家デビュー。過疎・高齢化した農村の再生を描いた『限界集落株式会社』(小学館文庫)がベストセラーとなり、二○一五年一月にNHKテレビドラマ化。『脱・限界集落株式会社』(小学館)、『となりの革命農家』(廣済堂出版)、『長生き競争! 』(廣済堂文庫)、『国会議員基礎テスト』(小学館)、『AIのある家族計画』(早川書房)、『グリーズランド1 消された記憶』(静山社)、『お会式の夜に』(廣済堂出版)など著書多数。

「2021年 『あした、この国は崩壊する ポストコロナとMMT』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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