鳥葬 -まだ人間じゃない- (ガガガ文庫 え 1-4)

著者 :
  • 小学館
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094514131

作品紹介・あらすじ

少年達は「殺人」という過去に振り回される

幼なじみが死んだ。
ラブホテルで。首を吊って……。
他殺か? 自殺か?

事件の前日、死ぬ間際の八尋から送られた「過去に殺される」というメール。
ある日届いた、「次はお前を殺す」という謎のメッセージ。
八尋がインターネット上で自慢した「殺人」という偽りの記憶。

主人公・陵司は、八尋の葬式で再会した旧友・桜香と共に、事件の真相を探り始める。かつて「殺人」を犯した陵司の過去を、自分の過去のように振り回し続けた八尋を襲ったものの正体は?
八尋の死が、「殺人」以降関わりを絶っていた5人の少年少女を再び結びつける。
……一体、誰が、八尋を?

『ストレンジボイス』『パニッシュメント』『ペイルライダー』の学園三部作にて根強い人気を誇る、鬼才・江波光則が新たに送る、青春群像ミステリ! 乞う! ご期待!

――あのとき、俺たちはまだ、人間ですらなかった。

感想・レビュー・書評

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  • 『パニッシュメント』と同じくいろいろ事件起る青春小説
    お話はとっても良く出来ていて
    では文学の偉いひとたちと何が違うかといったら修辞修飾なのだろうか
    題材の比喩が直接的だから足りないのだろうか
    全時代的なことがにんげんのほんしつに迫るあれなのだろうか
    さっぱりわからないが
    この作品がこの形として充分良く出来ているのは確かに思う

  • 主人公のネットに対する考え方がかなり変わっていて、完結したひねくれさだなと思った。自分が切り貼りされて拡散されるのが嫌っていうのはプライドが高いだけなような気もするけど、やってることがやってることだし仕方ないのかな。終始暗さが一貫してるのが逆によかった。あとあとがきがないラノベは初めて見たかもしれない。

  • このブクログだったりTwitterだったりSNSの類を使ってる人間だったら誰もが一度は考えていそうな承認欲求その他もろもろについて、改めて考えてしまう。
    こうしててきとうな感想をここに書くこと自体にワンステップ必要になる。

    映画館で「自己陶酔百パーセントの無名作品」を、「生活する金という物と交換にしたソーシャルネットみたいな物だ」「内臓を晒して金を貰う」と称し、「金を出してまで啄ばまれるだけの価値を持った内臓なんて、そうそう誰もが持っちゃいない。そこでみんな苦労する」と主人公は考えるが、ここは小説を書いている作者自身への言葉に思える。誰かに買ってもらう以上、自分をとことん切り売りするのが小説家など何かを作る人なのだと思うし。
    ある意味不器用な主人公のSNSへの考察がテーマそのもので、「今」の小説だった。
    初期の頃の西尾とか佐藤友哉あたりを一気に読んだころを思い出す、内省過多の饒舌な一人称。
    大好物です。

    好きな作家=ケルアックな人への考察とか、無名作品を見に来る連中はエンドロールまで付き合う人ばっかとかいうあたりは思わず笑ってしまった(笑)
    エンドロールまで見ちゃう派。

  • クソガキだろうがそうじゃなかろうが子供は”まだ人間じゃない”のだが、社会的な扱いがどうであったとしても罪を犯せば何かしら心に楔が撃ち込まれるものだ。
    傷が残らない程度の小さな罪を繰り返すことで子供は少しずつ学んで普通の人間になっていくが、その過程を飛び越えて取り返しのつかないことをしてしまったとき、環境がその子供を普通ではいられなくしてしまう。

    途絶えることのないSNS上の炎上騒ぎも無知ゆえに行われたものもあるだろうし、炎上するそれ自体を英雄的行為と捉えて行ったものもあるだろう。
    そして炎上している現在に後悔することができなくても、それを拡散し記録する仕組みがある以上、いつか過去の自分と向き合いどうしようもなく嫌悪するときがやってくる。
    また罪は複数で共有することで希釈されるが、未来永劫その関係が続くとは限らない。

    人間であろうとするなら一時の感情に流されて線を踏み越えないことを戒めとしたい。

  • オチが読めていたのはまあいいとして、なんかウジウジとどうでもいいことですっと悩んでいたなあ、というのが読み終えた感想。
    もっと悪意や絶望を掘り下げて描いてもよかったのでは、と思ったが、主人公がすでに成長しきっていて解脱の域に入っているからなあ。

  • これは…ダメでした…!

    この作品に限らず、1人称の作品は主人公に共感や感情移入できるかどうかで評価が大きく変わってくるでしょう。
    その観点から行くと、この作品の主人公である陵司は私にとってまったく親しみのわかないキャラクターでした。
    単に無気力なだけだったり捻くれているだけだったりならまだいいんだけど、なんだろう、彼が何を考えているのか、何を思ってどうしたいのかが結局最後まで分からなかった。
    小説はだからこそ面白い、というとらえ方もあるかもしれないけど、そんな余裕もないほどにただただ気持ち悪かった。

    同じ理由でヒロインである桜香もダメ。
    さばさばしてるクールなタイプなので最初はむしろ好みのキャラだったんだけど、物語が進むにつれどんどんと違和感が生まれ、最終的にはやはり理解できないキャラクターであることが判明した。
    ただこの桜香の場合個人的に一番ネックなのが「なぜそこまでして陵司のことが好きなのだろう」という点であり、そうした引っかかりがわかっているだけまだマシですが。
    陵司は何がわからないのかすらわからなくって、ただただ気持ち悪い。

    だからこそ、瑛二と燈子は好きだったりするんだけど。
    人間的には褒められた二人じゃないけど、この二人は何よりわかりやすい。
    何から何までわからないこの「鳥葬」という作品において、唯一の清涼剤と言ってもいいかもしれない。

    そんなんだからストーリーにも入っていけることができず、ラストの展開もいまいち納得がいかず。
    私には全てにおいて理解ができない作品でした。
    反面、非常に人を選ぶけど、好きな人は好きな作品でしょう。
    興味があれば読んでみてもいいかもしれません。
    お勧めはしませんが。

  •  何だかこの本を読んだ感想をネットに晒すのは作者と作品への背信行為のような気もする。
     幼い頃に石を投げてそれを車に轢かせる遊びをしていたら、主人公の隆司は加減を誤って大きな石を車のフロントガラスにぶつけてドライバーを死なせてしまう。隆司及び一緒に遊んでいた仲間達も共犯扱いされ、いじめられるようになる。隆司は孤立を守ることでそれに耐えた結果、他人と交われない少年となる。事件から十年後、当時の仲間の一人、八尋がラブホテルで死ぬという事件が起きる。「過去に殺される」死の直前に送られてきた八尋からのメール、そして殺害予告。八尋の葬式で再会した同じく当時の仲間、桜香とともに、隆司は八尋の死の真相を探っていく。隆司はその中で過去の罪と向かい合い、その重さを知る。
     ガガガで著者が出した過去の三作に比べてタイトルと内容の関連が分かりやすい。主人公のキャラクターが「ペイルライダー」の主人公の変奏または補完のためのキャラクターのように思えた。目を逸らしていたSNSの危険性やおかしさを突かれ、他人と感想を交換することへの疑問を突き付けられて、色々考えさせられた。
     ジャンルは青春群像ミステリでもなく、暗黒青春譚でもなく、鼠色のライト文学とでも言うのがいちばんしっくり来る。
    「ペイルライダー」の方が好き。

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